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【F1第17戦ベスト5ドライバー】角田裕毅が難局で見せた緻密で知的な走り/絶好のタイミングで結果を出したローソン
2025年9月25日
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第17戦アゼルバイジャンGPの戦いを振り返った。
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■予選と決勝両方を完全に支配したフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位
バクーでマックス・フェルスタッペンは予選と決勝の両方を完全に支配し、主要なライバルたちが次々に罠に陥るなかで、ミスを回避した。予選では、厄介な状況において、シャルル・ルクレールとオスカー・ピアストリはウォールにクラッシュし、ランド・ノリスとルイス・ハミルトンは完全に期待外れの結果に終わった。しかしフェルスタッペンは、Q3の最後に完璧なラップを決め、予想外のポールポジションを獲得した
日曜日には、フェルスタッペンは、スタートからフィニッシュまでレースを支配するとはどういうことかを、完璧に実証。彼は、一度だけ壁に軽く触れたと明かしたが、チーム関係者以外で、その瞬間に気づいた者は誰もいなかったし、実際、タイヤには接触の痕跡が全く残っていなかった。おそらくテックプロバリアに軽く触れた程度だったのだろう。
速さを保ちながら完全に状況をコントロールし、ファーストスティントを非常に長く引き延ばし、その後は、余裕を見せつけるかのようにミディアムタイヤで連続してファステストラップを刻み、グランドスラムを成し遂げた。

■ようやくすべてがかみ合い、ウイリアムズに表彰台をもたらしたサインツ
カルロス・サインツ(ウイリアムズ):予選2番手/決勝3位
「待つ者には良いことが訪れる」というが、カルロス・サインツは今季開幕からずっと幸運が巡ってくるのを待ち続けていた。ウイリアムズに加入して以来、一貫性の面で優れていたとはいえないものの、素晴らしい走りを何度も見せてきたが、戦略ミスや信頼性の問題によってそれが報われなかったのだ。
しかしバクーではそうした不運はなく、サインツは与えられた条件を最大限に生かし、予選で2番手を獲得、ウイリアムズをフロントロウに並べた。フェラーリから放出されたサインツだが、トップチームでチャンスを得るに値するドライバーであることを証明したといえる。
決勝日、サインツは2番手を守るためにメルセデス勢を抑え込むことを目指したが、ジョージ・ラッセルの代替戦略と、W16の明らかに優れたパフォーマンスの前に屈することになった。
それでも、サインツは追い上げてきたアンドレア・キミ・アントネッリをチェッカーフラッグまで抑え切り、ウイリアムズにフルレースでは8年ぶりとなる表彰台をもたらした。レース後に感情を爆発させた姿は、この結果が彼にとってどれほど大きな意味を持つかを物語っていた。

■ニュージーランド人ドライバーとして歴史を作ったローソン
リアム・ローソン(レーシングブルズ):予選3番手/決勝5位
リアム・ローソンはF1キャリアで自己最高の週末を過ごし、予選3位、決勝5位という結果を出した。ニュージーランド人としては、クリス・エイモンが1976年に同順位を獲得して以来の最高成績だった。
しかも今回の快挙は、タイミングにおいて、これ以上ないほど完璧だった。レッドブルは来季に向けて残った3席に誰を据えるかを決めなければならず、ローソン、角田裕毅、アイザック・ハジャー、アービッド・リンドブラッドの4人をどう処遇するかを検討している最中だからだ。
予選では、ピアストリやルクレールがミスを犯すほどの非常に難しいコンディションのなかで、ローソンはほぼ完璧なラップをまとめて3番グリッドを獲得した。彼より上位に立ったのは、フェルスタッペンと、路面がより良い状態だった早い段階にタイムを出したサインツだけだった。
決勝では、ローソンは序盤、2台のメルセデスをピットストップまで抑え込んだが、メルセデスは2台で戦略を分けていたため、1台しかカバーできなかった。さらに、W16のペースアドバンテージは圧倒的であり、ローソンは、結局アントネッリを抑えきれず、ラッセルのオーバーカットにも対応できなかった。
ファーストスティントを長く取った角田裕毅がピットストップを終えてコースに復帰した際に、ローソンのすぐ前に出たものの、ローソンはすばやく角田を追い越した。それが彼にとってキャリア最高の結果をつかむ鍵になった。
ローソンは、後ろにDRSで連なる3台を従えながら、一度もミスを犯すことなく、ポジションを守り切った。大きなプレッシャーを受けながら、このような結果を出したことは素晴らしい。

■体調不良のなか2位をつかんだラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選5番手/決勝2位
ジョージ・ラッセルは今週末における最大のヒーローといえるかもしれない。彼は呼吸器系の感染症により非常に体調が悪かったにもかかわらず、週末を走り切ったのだ。彼は金曜日に、フリープラクティスのためにホテルの部屋から出ることすらできないかもしれないと考え、チームに対し、リザーブドライバーのバルテリ・ボッタスの準備を整えておくよう伝えていたほどだった。しかしラッセルは気力で乗り切り、セッションすべてを走り切った。
予選ではアントネッリに0.3秒及ばず最高のパフォーマンスとは言えなかったが、日曜日にはだいぶ体調が回復、5番グリッドからスタートし、51周のレースの終わりに2位をつかむという、文句なしの結果を出して、自分がメルセデスをリードするドライバーであるとアピールした。
ハードタイヤでのファーストスティントでは、ミディアムタイヤでのアントネッリやローソンを抜くことができなかったが、ピットストップ後に彼らの前に出て、フリーエアで走るようになると、コース上で2番手の速さを見せた。ハードタイヤで3番手を走ったサインツは全くラッセルに太刀打ちできず、ラッセルは2位を守り切ることができた。

■移籍後初めて本来の力を発揮する機会を得た角田裕毅
角田裕毅(レッドブル):予選6番手/決勝6位
角田裕毅は称賛に値するパフォーマンスを見せ、レッドブル加入後では自己最高の週末を過ごした。今回の『ベスト5ドライバー』の候補には、もちろんアントネッリも含まれていたが、アントネッリにはこれまでにも輝かしい瞬間があった。一方、角田が現在のチームにおいてすべてが順調に運び、自分のパフォーマンスを示すことができたのは今回が初めてだった。
チームメイトがRB21で示すパフォーマンスには及ばなかったものの、角田は予選で6位を獲得し、2台のマクラーレンと2台のフェラーリを上回り、5番手ラッセルのタイムにも非常に近かった。
決勝では、リスタート直後にターン1でメルセデス同士の争いを突いて一時ラッセルの前に出たが、その後、ラッセルに抜き返された。しかし、続くルクレール、さらにノリスを一切のミスなく抑え込んだ。
ピットストップ後にローソンの後ろに留まることになったのは、角田にとってまさに諸刃の剣だった。DRSの助けを最後まで受け続けたことで、格段に速いマクラーレンのノリスからの攻撃を防ぐことができた。一方で、リスクを冒してローソンに仕掛けることはできなかった。レッドブルとレーシングブルズの両方にとって、大きな痛手となる可能性があったためだ。
そういう状況のなかで、角田は、緻密で知的な、優れた走りを見せた。この流れを維持すれば、シーズン終盤をこれまでよりもはるかに良い形で過ごすことができるだろう。


(Text : Luis Vasconcelos)
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1位 | オスカー・ピアストリ | 324 |
2位 | ランド・ノリス | 299 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 255 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 212 |
5位 | シャルル・ルクレール | 165 |
6位 | ルイス・ハミルトン | 121 |
7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 78 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 70 |
9位 | アイザック・ハジャー | 39 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 37 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 623 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 290 |
3位 | スクーデリア・フェラーリHP | 286 |
4位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 272 |
5位 | ウイリアムズ・レーシング | 101 |
6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 72 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 62 |
8位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 55 |
9位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 44 |
10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 20 |

第17戦 | アゼルバイジャンGP | 9/21 |
第18戦 | シンガポールGP | 10/5 |
第19戦 | アメリカGP | 10/19 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |

