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【モリゾウ談話】「目の色が変わりますよね」坪井に掛けた言葉とハースF1提携の成果とこれから

2025年8月8日

 ハースF1のTPC(Testing of Previous Cars/旧車テスト)テスト2日目が行われている8月7日の富士スピードウェイに、モリゾウ(豊田章男トヨタ自動車会長)が電撃訪問を果たした。ハースF1とTOYOTA GAZOO Racingが昨年10月に提携を発表して以来のF1現場訪問となったモリゾウにこれまでの成果、そして日本で初めて開催されたTPCテストと坪井のF1初ドライブについて聞いた。

 TPCテスト2日目の午後、セッションが途中に愛知県豊田市の本社からヘリコプターで富士スピードウェイに急きょ来場したモリゾウ。トヨタ自動車の会長としてはこの日、2025年4〜6月期決算発表日で、午前中に取締役会を終えたばかり。その多忙の中で富士に来るほど、ハースF1の小松礼雄代表の存在、そして今回のTPCテストの実施、そして坪井翔の初めてのF1ドライブという要素は大きかったのだろう。


「これは何度も言っていますけど、私はね、トヨタ系ドライバーのF1への道を閉した男だったんですよね(副社長時代に2008年いっぱいでのF1参戦終了を決めた)。それが今、マクラーレンなりハースなり、いろいろなF1チームと提携をしてね、少なくともその道を作りたかった。そうするとすぐ『トヨタ、F1に復活』とか言うけど、去年ハースとの提携にサインをした時に、やっぱりドライバーに対してのチャンスを作ってあげる道筋は期待していました」


「それ以降どうなったかと言うと、今日、坪井が(F1マシンに)乗っているわけでしょ。平川もああやって(ハースのリザーブドライバーとしてレースウイークの金曜日に)乗れている。かつては絶対にあり得なかったことですよ。坪井に関してはここ数回の違うカテゴリーのレースにおいても、絶対、今日のこの瞬間を意識しての運転だったと思いますよ」


 実際、坪井は今回のF1テストドライブが発表されて以降、直後のスーパーフォーミュラ第6戦で優勝を果たし、スーパーGTでも第4戦富士のスプリントレース1で優勝を飾った。


「それで、スーパーGTのレース2ではそこに(坪井が所属しているトムスチームに)勝った福住仁嶺(ENEOS X PRIME GR Supra/ルーキーレーシング)はもっとすごいよって言いたいです。ルーキーレーシングがすごい、それは言っておきます(笑)」


 突然、ルーキーレーシングのオーナーとしてレース屋の矜持を見せるモリゾウ。ハースF1とのこれまでを改めて振り返る。


「ハースとはいい1年がスタートできたんじゃないかと思います。今日、先ほど小松さんに会っていろいろ話をして、 ふたりの共通の言葉を『文化』にしたいと思います。自動車会議所の時にも『自動車を日本の文化に』と言っていましたが、いろいろな自動車の分野を文化にする。文化にするイコール、ロングタームじゃなきゃできませんよ」


「そこでショートタイムの費用体効果とかね、そういうこと以上の価値を見い出さないと、文化という言葉は使えないと思うんですよ。そういう意味ではこの1年でいいことが起きたなと。具体的に言うと、グッドウッドのイベントにハースと一緒に出れたわけですよ。それと今日のこういうF1のテストを開催して、コースをオープンにしてF1マシンが走り出しているでしょ。これ、当たり前のようですけど、当たり前じゃないですからね」


「グッドウッドにしても、F1テストにしても、そこまでずっと準備してきて『今ですよ』『今が出番ですので走って』という時にはクルマが走らないと成り立たない。クルマはいつでも走れるものと思っていたら大間違いでね、ここでテストだってみんなお客さん来て『エンジントラブルで走れません』なんてことだってあり得ることなんですよ。それがやっぱりチームメンバーの自信になったり、このテストも1台が走っているだけなのに『何かレースがあるの?』っていうくらいお客さんが来てますでしょ」


「こういうことがやっぱりね、人って見られている/期待されてる、というところで実力以上のものを発揮すると思うんですよね。そのきっかけがハースとTGRとの連携で、でき始めたということは(小松代表にも)言って頂けましたから。ですので長期的に文化作りをそれぞれの得意分野でやってきましょうという話し合いができたと思ってます」


 この1年としては、期待以上の成果と言えそうだ。


「期待以上にというかね、もともと小松さんと僕が初めて会った時からね、『この方、前からお知り合い?』という感じがありました。それは同じ日本人だからとかそういうケチなことじゃなくて、やっぱりカーガイ(クルマ好き)としてね、同じ体温とかパッションを感じたと思います。今日も去年の発表会の時以降、ひさびさにお会いしましたけど、昨日、居酒屋で一緒に飲んできたような雰囲気ですよ(笑)。私も今朝、取締役会をやってきてね、その足で会ったとは思えない(苦笑)。私も私、彼も彼、お互い様ですね」


 ハースF1との提携や平川のリザーブドライバー就任など次々と新しい展開が実現していくことで、国内ドライバーの目の色もこの1年で変わった。


「目の色は変わりますよね。特にトヨタドライバー。分かりやすく説明しますとね、トヨタは結構、いろいろなカテゴリーで複数人にチャンス与えていますよね。ひとり『ここの人』と決めずに、ひとりのヒーローにさせずにチャンスを与えています。今までは誰にもチャンス与えてなかったかもしれない。私が(2008年にF1への道を)やめたから」


「だけど今はね、多くの人が『ひょっとして自分もチャンスあるかもしれないな』という風に、トヨタドライバーも思い始めたんじゃないかな。逆に大湯(都史樹)とか(福住)仁嶺とかホンダで育った人もトヨタに来て、それでそれなりの実績を上げ始めましたでしょ。そうなるとある面、全日本クラス、オールジャパン的なものができつつあるんじゃないのかなと。メーカー同士の争いはあるところまではやっていいでしょう、でもそこから世界に通じる道を作ってく時には、やっぱりオールジャパンじゃないけど、これからはそういう動きになって行くのではないかなという、かすかな期待があります」


 メーカーの垣根を超えて世界へという道筋ができれば、国内レース界の画期的なステップアップになる。


「うん。(大湯と福住の移籍を発表した2023年12月の)発表会の時に言ったでしょ。ホンダさんは新人を育てるのが上手、で、うちは新人を育てるのは下手くそなんだけど(苦笑)、最後の面倒見はめちゃくちゃいいんですよ。その両方、いいところを取ってやっていかないと」


「そのドライバーの育成プログラムは、でき始めていると思いますよ。それでその全部がステップアップじゃなくて、リアルなカートからでもeスポーツでも、どのルートから来てもトップに行けるよと。それで最後はいちばん速いクルマとか世界選手権レベルというところにつないであげることじゃないかなと。今のトヨタならできる気がします」


 ハースF1との今回のテスト、来場したモリゾウはセッション中、セットアップ変更でクルマを降りている坪井に、パドック裏で言葉を掛けるシーンが見られた。F1初ドライブ中の坪井に、どのような言葉をかけたのか。


「『タイムは気にすんなよ』と。それと『ここ何戦かのレース、絶対この瞬間を意識していただろう? それならこの瞬間を楽しめ』と」


 それで実際、ここに来るまで坪井も結果を出してきた。


「でも、(スーパーGTレース2は)ルーキーレーシングが勝ちましたから。そこは書いておいてくださいね(一同爆笑)。しかもね、この前のスーパーGTは高田剛エンジニア(今季からチームに加入)の初勝利だった。もっと言わせてもらえばね、前の日、(レース1でクラッシュして)朝3時までクルマを直していますから(笑)」


 トヨタ自動車会長、日本自動車会議所の会長として日本の自動車業界とレース界とこの先の文化としての発展を考えつつ、ルーキーレーシングのオーナーとして負けず嫌いのレース屋の顔を見せるモリゾウ。そのビジョンと活動力、モリゾウ節はやっぱり健在だった。

ハースF1のTPCテストに急きょ来場して、ピット内を訪問したモリゾウ
ハースF1のTPCテストに急きょ来場して、ピット内を訪問したモリゾウ
ハースF1の小松礼雄代表と昨年10月以来の対面となたモリゾウ。チーム、会場を訪れたファンにも笑顔で応えた
ハースF1富士TPCテスト2日目
モリゾウこと豊田章男トヨタ自動車会長も急きょ来場し、ハースF1テストチームと最後に記念撮影


(Tomoyuki Mizuno / autosport web)


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