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驚きと充実の初F1ドライブ。坪井翔「F1で走れる実力はあるんだなと認識できた」/ハースF1富士TPCテスト2日目

2025年8月7日

 国内初となるハースF1チームによるTPC(Testing of Previous Cars/旧車テスト)テスト、富士スピードウェイで行われた2日目の8月7日、F1マシンを初ドライブした坪井翔が午後のセッションに参加。59周を走行し、1分17秒470のベストタイムをマークした。セッション後、坪井がメディア会見で感想を述べた。

 午後のセッションは雨が上がり、晴れ間も見える中でのセッションとなった。ミディアムのニュータイヤ2セットでアタックを行った坪井は1分17秒470とタイムを更新。惜しくも2008年F1の1分17秒287(フェリペ・マッサ/フェラーリ)は越えられなかったものの、ニュータイヤを投入するたびに着実にタイムアップしていく姿が印象的だった。午後セッションはその後、燃料重めでハードタイヤで12周程度の走行を繰り返し、予定されたメニューが順調に進んだことから、17時の終了予定が1時間ほど早まるほどだった。


 走行後、坪井は小松礼雄チーム代表、急きょ来場したモリゾウ(豊田章男トヨタ自動車会長)、そしてチームスタッフと笑顔で握手するシーンが見られ、F1ドライブの1日が充実していたことをうかがわせた。


 メディアの会見場に来た坪井は、開口一番「F1っぽいですね」と多くのメディアが集まった状況に驚くとともに、笑顔を見せた。


「初のF1ドライブは素直に楽しかったですね。小さい頃から夢見てきたカテゴリーなので、TPCテストで2年前のクルマを使っているとはいえ、F1に乗れる機会はそうないですし、素直に夢が叶った1日になったので最高の1日でした」


 午後のセッションでは2度のミディアムのニュータイヤでのアタックを行い、富士のコースレコード更新が期待されたが、わずかコンマ2秒届かなかった。
 
「アタックはうまくいったかなと思いますけど、最後、微妙にセットアップをチェンジしてタイムを伸ばそうと思って、セクター2(高速区間)でかなりクルマが良くなったのですけど、その分、セクター3(低速の登り区間)がちょっと辛くなった。『富士あるある』が起きてしまいました。ただ、F1はいろいろいじれるスイッチがあって、そこをもっと見越していれば対処できたところもあったのかなというところで、正直、ちょっと完璧に決まったという1周ではなかった。そこはちょっと残念だったかなと」


「もしかしたら1分17秒2(のコースレコード更新)が見えていたかもしれないので、ちょっと残念ではありますけど、今あるベストをしっかり出せたと思いますし、今までの僕のキャリアの中で1番速いクルマなので、すごく楽しかったです。昨日から今日にかけてコンディションが変わっているので直接比較はできないですけれども、しっかりタイムを出せたというところでは、自分の実力をしっかり示せたのかなと思います」


 初のF1マシン、ブレーキ、ダウンフォース、加速、どこがいちばんF1らしいと感じたのか。


「いやもう、全部がこれまでと違いました。その中でもいちばん驚いたのはやっぱりハイスピードコーナーですね。コカ・コーラコーナーから100R、想像はしていたのである程度、想像どおりだったのですけど、改めて実車に乗るとこれだけGがかかるんだとか、こんなにダウンフォースがかかっているんだ、というのは改めて感じました」


「パワーも本当にとんでもなく大きいのでトラクションのかけ方が結構難しかったり、やっぱりピレリタイヤはあまり使ったことがないので、そこの難しさがありました。すごく温度にセンシティブで、ちょっと(表面)温度を外すと本当に全然グリップしなくなっちゃう。本当に2〜3度の違いとか、ちょっとスライドさせたりするだけでこんなに次のコーナーでグリップがなくなっちゃうのか、みたいなのは今まで経験してきてないので、新しい世界が見れて新しい引き出しが増やせた1日になったと思います」


 前日にドライブした平川選手から今日に向けてのアドバイスはどのようなものがあったのだろう。


「彼はSF(スーパーフォーミュラ)も乗っていますし、F1は何回も乗っているので、そういった目では『ここを気をつけた方がいいよ』という話は平川選手だけでなく、エンジニアやみんなに教えていただけたので、すごく助かりました。昨日走っていただいたおかげで、使うギヤだったり、どこでブレーキを踏むというのは結構、イメージができた上で走れたので走り出しからすんなり乗れたかなと。平川選手は昨日しっかりリファレンス(参考)を作ってくれて、昨日の最初はクルマは乗りづらかったみたいなんですけど、いいところまで持ってきてもらえたので、本当に僕がそのクルマをアジャストしなきければいけない状況ではなくて、ドライビングにフォーカスできる状態でクルマを渡してくれたので、そういったでは平川選手に感謝してます」


 昨日のトークショーでは、緊張していると話していた。


「いや、相当緊張していましたね(苦笑)。そもそも一緒にトークショーをするのも緊張するぐらい昨日までは本当に。自分がちゃんとドライブできるかもそうだし、(英語での)コミュニケーションもそうだし、使うボタンがあまりにも多すぎて『アタックする前はこのモード』『アタックする時はこのモード』『アタック終わったらこのモード』で、どれだけ温度管理してというのがとにかく多かったので、話を聞いていて、これを自分で整理して、しかも速く走るというところまでたどり着けるのかという不安ばっかりでしたね」


「それでいろいろ聞いて準備はしてきたのですけど、準備をすればするほど乗るまで不安がどんどん募ってくみたいな感じ(苦笑)。あれもこれもあって、みたいに頭で考える考えるほど、ちょっと緊張が優ってきたのですけど、1周走ってみれば『もう大丈夫だ』という風になれた。そこからは本当に楽しく走れるようになりました」


 担当エンジニアからのコミュニケーションや無線で、これまでと違って驚いたことはあったのだろうか。


「基本的には(国内と)一緒ですね。ただ、思っている以上にドライビングにフォーカスすることが多いんだなと。他のF1ドライバーも同じなのか分からないですけど、TPCだから実際にそのクルマを開発することができないですし、セットアップしてもあまり意味がないというところも若干あるのかなと思うんですけど、本当にドライビングアドバイザーがいて『ドライビングをもう少しこうした方がいいよ』『ああした方がいいよ』と無線でも教えていただいた。正直、もうスーパーフォーミュラ、スーパーGTの500クラスに乗るようになってから運転に対して『もう少しここが』とか言われたことがないですし、言ってくる人もいないので、ある意味新鮮でしたね」


「(アタック後)クールダウンしてる時に『今のラップ、もうちょっとあそこのコーナー早く曲がれたんじゃない?』とか『もうちょっとスピードを落としてから(コーナーの)出口重視しないとダメだよ』とか、そういう話はありました。それを聞いてクール(ダウン走行)の間に自分の頭でまた整理して、そして次のアタックに行くみたいな無線を入れていただけたので、すごくタメになりましたね」


 今回のF1初ドライブを終えて、自分の中でF1へのイメージにどのような変化があったのか。


「自分がF1で走れるだけの実力はあるんだなというのは認識できた。また違うサーキットに行くとまた話が変わってくると思うのですけど、コース攻略だったりとかができていれば、クルマを十分コントロールできるんだなというのは理解できたので、また乗りたいなという気持ちになりましたね」


「今までは本当に夢の夢というか、本当に『夢はF1ドライバー』と言っていましたけど、なにかすごい遠い存在で、半分叶わない夢だと諦めてた部分が何年か前まであった。そういった意味では本当に今日これが実現してひとつ夢が叶ったのもそうですし、よりF1を身近に感じることができたというか、この舞台でも戦えるんじゃないかいう自信を深められた1日で、今のF1ドライバーに混ざってみたら、どこまで追用すんだろうというのを確認したくなりました」


「今までF1はすごく遠すぎて、本当にテレビで見ていてすごくファンで、ファンと同じ距離感だった気がしますけど、実際乗ってみて、この舞台で戦ったらどうなんだろうという気になったので、より本当に近い存在に感じれるようになった1日でした。すごく楽しかったです」


 メディアの質問に答える坪井の表情は常に柔らかく、何度も「楽しかった」と繰り返すように、充実感が漂っていた。坪井とF1の関係が次にどのような展開を迎えるのか。とにかく、ハース、そしてTGR、さらに来場したファンにとって期待感が高まる内容だったことは間違いなさそうだ。



(Tomoyuki Mizuno / autosport web)


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