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『育成と文化の創造』ハースF1とトヨタGRの提携と富士開催のメリット【小松代表&加地MSディレクター会見】

2025年8月6日

 2025年8月6日(水)、静岡県の富士スピードウェイでマネーグラム・ハースF1チームのTPC(Testing of Previous Cars/旧型車を用いたテスト)の初日が行われた。この日、ハースの小松礼雄代表とTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の加地雅哉グローバルモータースポーツディレクターが会見に出席し、今回のTPCテストの目的やハースとトヨタ/TGRの提携の成果などについて語った。


 TPC開催発表から約3週間を経て開催された今回のテスト。まずはこのテストの目的について問われると、小松代表は「人材の育成」を強調した。

「ハースとTGRが一緒にやっていることなので、(両者の)目的は一緒です。こうして技術提携をさせていただいていますが、会見(編注:2024年10月の提携発表)でも(豊田章男)会長がおっしゃった通り、人を育成したいわけです。 一緒にできたことでテストチームを初めて作ることができました。エンジニアとかメカニックとか、そういう人材の育成も細々ですけどやり始めています。人の育成の一環で、ドライバーの育成もあるわけです。昨年のスーパーフォーミュラのチャンピオンである坪井(翔)選手をどこかで乗せたいという思いがお互いにあって、その機会を探っていて、結局、このむちゃくちゃ暑い(笑)富士になりました」


 ハースのリザーブドライバーを務める平川亮は、このテスト初日に2023年のVF-23をドライブし、7日(水)に初めてF1マシンに乗る坪井に対してレファレンスになるデータを収集した。それを坪井に提供し、坪井がどれくらいF1マシンを乗りこなすことができるのかというのを見るのが目的のひとつだというが、それに付随して“副産物”があると小松代表は語る。


「日本でF1テストなんて、なかなかないじゃないですか。 今のF1の人気も、野球とかに比べるとそこまでないわけですよね。たとえば雑誌を見て、大谷(翔平)がどこで犬の散歩をしたという記事があっても、F1で何があったかが書かれている記事はないわけですよ(苦笑)」


「せっかくこういう協力体制があって日本で走れるのであれば、“ちょっと興味がある”くらいの人でも来てほしいんですよね。触れて、身近に感じてほしい。 テストだったらホテルも満室にならないし、トヨタのグループとして富士というサーキットを持っていて、中学生以下の入場料を無料にもできるわけですし。オートグラフセッションとかもあるのでドライバーを身近に感じてほしいです。(ハースのガレージの)ふたつ隣からピットレーンを見たり、ガレージの様子を見たりするなんて、 そんなことグランプリウィークではできないでしょう。 そういうことで、本当にF1をもっと身近に感じてほしいんです」


 TGRの加地ディレクターは、小松代表の言葉に同意しつつ、その一方で今回のTPCを“チャレンジ”と表現した。


「小松代表が言ったように、同じ目的で、同じ方向に向かって一緒にやっています。スーパーフォーミュラのチャンピオンを獲った坪井がどのくらいの実力で、僕らがどのくらいのサポートをできて、彼はこの先どういうふうに伸びていくのかというところを、きちんと測りたいと思います。ですので、はっきり言ってチャレンジだと思っています」


「坪井選手にとってもそうですし、僕らチームにとってもそうです。今回トヨタのエンジニアも帯同させてもらったり、メカニックも見学に来ているので、そういったその部分での取り組みもチャレンジです。こうしていろいろなチャレンジができるというのは、このパートナーシップがあって、僕らが小松代表とこういう会話をさせてもらえるからですので、そこはすごくありがたいです。今日はたくさんの方が来てくれて、本当にありがたいなと思います」

F1エンジニアから、チーム代表に上り詰めたハースF1の小松礼雄代表

 昨年10月に提携を発表したハースとTGRは人を育成することを目的とし、その一環としてハースがテストチームを用意することができたのは今年が初めてのことで、TPCができること自体が提携による恩恵となった。


「テストチームを作ること自体が以前は不可能で、それはモノも人もそうでした。(今年の)1月にヘレスでテストをしたと話しましたが、うちは今年新しいドライバーがふたり(編注:エステバン・オコンとオリバー・ベアマン)がいるので、本当に重要だったんですけど、それもこの提携なしではできないですから。1月の段階から利益はあるわけです」


「やりたいことは本当にいっぱいあって、シミュレーターの共同作業などもやっています。TGRの方で開発しているテクノロジーでF1に使えるのもいっぱいあるので、いろんなことあるんですけども、とにかく優先順位をつけて、何が一番大事なのかを考えながらやっています。僕はせっかちなので『もっともっと早く』と思うのですが(苦笑)、まあ時間はかかります」


「テストではないですが、この間のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードというのをやりました。今まではやったことがなかったのですが、今年は(チーム創設)10周年だからぜひやりたかったので、それも加地さんと相談して、『だったら一緒にやりましょう』ということで一緒にやらせていただいたんですよね。あのトヨタのあのカモフラージュカラーのクルマにうちのレースドライバーが乗ったり、エステバン(・オコン)をWRCのマシンに乗せてくれたりとかもありました」


「やっぱりモータースポーツは楽しいわけじゃないですか。 ワクワクするわけじゃないですか。 (F1第3戦日本GPの前に)愛知県下山のテクニカルセンターに行った時もそうです。そういうのって、みんな楽しいからやっているわけじゃないですか。そういうのも体験しながら、一緒にチームをよくしていける。この提携がなければできなかったんですよ。 楽しいことを一緒にやってるというのを内にも外にも出せたというのは、すごい大きいです」


 加地ディレクターが提携の成果、そして、TGRのチームの文化を築くことにも繋がっていると言う。


「こうやって一緒にテストができて、チームとしてのコミュニケーションは、すごく活発に進んでいます。シミュレーターの開発やAI技術を使って戦略を練るとか、いろいろなところでやっている技術をどうやって移植しようというところを、ひとつひとつ進めている状況です。 徐々に徐々にステップ・バイ・ステップで進めていて、それは今も前も変わっていません。でもそれはひとつずつ着実にこういう成果に現れてきていると思うので、だんだんみなさんの目に見えてくるのかなと思っています」


「グッドウッドは、見てくれている人があのように感じてくれたということだと思いますし(ハースとTGRの企画は大盛況だった)、そういう文化みたいなものを一緒に作れているというか、役に立っているというのは、すごくいいなと思います。チームを作っていくという面では、そういう文化的なところも含めてワンチームというか、一緒にやれているいうことです。チームとして一緒にやれているのは小松代表という人の力もそうですし、ハースのメンバーたちがすごくポジティブにいろんなことを考えて、一緒にやろうとしてくれているからです。僕らはめちゃくちゃありがたいですし、そういう形で今後も進めていけたらなと思います」


 今回の富士でのテストでは、TGRのエンジニアやメカニックがピット内で一緒に作業している姿が印象的だった。普段は海外のテストに参加しずらいスタッフも日本でのテストだからこそ、来ることができたスタッフも多かったという。加地ディレクターにTGRスタッフへの影響、そしてTPCテストが富士でできたことのメリットについて聞いた。


「F1のテクノロジーやデータがどのように使われていくのか、そしてクルマがどうなっていくのか。別にF1にエンゲージ(貢献/契約)していく、していかないに関係なく、あらゆるモータースポーツに必ず役に立つと思いますし、モータースポーツだけではなくて市販のスポーツカー、普通のクルマ作りにも役立っていく。(F1のピット内のあらゆる)モノを見るのもそうですし、データを細かく分析するのもそうですし、オペレーションの部分でもそうです」


「小さな話で言えば、F1チームが使っている(ピット内での)ハンドサインや合図とかは、スーパーフォーミュラのチームではどこもやっていないんですよ。そういう部分でもエンジニア、メカニックは見て学べる。細かい動作や所作のひとつひとつがF1の現場を見たことのない人にはすごく新鮮なことになります。そこはF1ではすごく効率的に作られて、行われている。それを学ぶのはどのカテゴリーにも活きてきますね。今回、本当に多くのトヨタ社員、ルーキーレーシングのスタッフが来てくれて、この富士でテストをするメリットはものすごく大きかったなと。来てくれている人たちのリアクションを見て、メリットはすごく大きかったなと思います」


 来場したファンだけでなく、参加したTGR側のスタッフにとっても得るものが多いTPCテスト。ハースF1とTGRの絆は、ますます強くなっているようだ。

TGRグローバルMSディレクターとしてハースとの連携やWECなどを担当する加地雅哉氏


(Text : autosport web)


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