キャデラックF1のシートをめぐる争い。候補ドライバー6人とマネージャーの奮闘ぶり/F1コラム
2025年8月1日
ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、2026年からF1に参戦するキャデラックがドライバーとして誰を選ぶのかに注目。有力候補だけでなく、可能性が薄いながらもうわさに名前が挙がった人物も挙げて、それぞれの状況をまとめた。
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新F1チームであるキャデラックの経営陣は、2026年のF1世界選手権において2台のマシンに誰を乗せるのかを決定しつつある。私が聞いたところによると、ひとりのドライバー――あるいは両方のドライバー――との契約が間もなく結ばれるようだが、その契約が正式に発表されるのはサマーブレイク後になる可能性もあるという。
キャデラックのデビューシーズンのマシンが高い競争力を発揮する可能性は低いにもかかわらず、多くのドライバーがチーム代表であるグレアム・ロードンに売り込みをかけている。マイアミGPの週末、彼と話した際には、6人から10人の有力候補者がいるということだった。私の同郷(デンマーク)のフレデリック・ベスティがそのリストに載っていることは確認できたが、ロードンはそれ以外は名前は一切明かさなかった。
ベルギーGPのパドックで多くの情報筋と話をしたところ、その時点でリストには6人の名前が残っているようだった。そのうち3人が明確な有力候補であり、残りの3人は起用される可能性が低そうだ。
以下に、その候補者たちの名前と彼らの状況についてまとめた。
【キャデラックF1ドライバーの最有力候補】
■バルテリ・ボッタス
ベテランドライバーであるボッタスは、キャデラックのふたつのシートをめぐる争いにおいて最大の本命と見られている。現在はメルセデスのリザーブドライバーとして、今年のすべてのレースでパドックに姿を見せている。彼はF1で12シーズンにわたる経験を持ち、それこそが新チームが求めているものだ。さらに彼には、トト・ウォルフとミカ・ハッキネンという優れたサポート/マネジメントチームがついており、自分自身は、効果的なソーシャルメディア戦略によって、自分を“注目の存在”としてアピールし続けている。2026年に彼がキャデラックをドライブしないという結末になることは、ほぼないだろう。

■バルテリ・ボッタス
●年齢:35歳
●F1出場回数:247戦(2013年〜2024年)
●最後のF1レース:2024年アブダビGP
●2025年の活動:メルセデスのリザーブドライバー
●マネージャー:トト・ウォルフ、ミカ・ハッキネン
■セルジオ・ペレス
ペレスは、ボッタスとほぼ同じ条件を満たしている。つまり、F1における豊富な経験と、優れたマネジメントチームを持っているのだ。しかし彼は、前シーズンにレッドブルから解雇されて以来、パドックに姿を現していない。また、2024年シーズンの成績があまりにも残念なものだったため、彼が高いモチベーションを維持できるのかどうか、キャデラックとしては疑問を抱くだろう。2024年において最も優れたマシンのひとつに乗っていたにもかかわらずモチベーションが欠けていたのなら、2026年に最も遅いマシンのひとつに乗るとき、モチベーションはいったいどうなるのか?
とはいえ、ペレスは母国メキシコから強力な資金支援を受けている。キャデラックはペイドライバーを求めているわけではないとはいえ、チームの予算に対する貢献は、当然歓迎されるものである。

■セルジオ・ペレス
●年齢:35歳
●F1出場回数:285戦(2011年〜2024年)
●最後のF1レース:2024年アブダビGP
●2025年の活動:休暇中
●マネージャー:ジュリアン・ジャコビー、カリル・ベシール
■フェリペ・ドルゴヴィッチ
2022年のFIA F2チャンピオンであるドルゴヴィッチは、今シーズンほぼすべてのレースでアストンマーティンのリザーブドライバーとしてパドックに滞在しており、彼のマネージャーであり、元F1ドライバーのフェリペ・ナッサの叔父でもあるアミール・ナッサも必ず同行している。
ドルゴヴィッチにはF1でのレース経験が欠けているが、複数のテストやFP1セッションに参加してきた。また、ナッサはブラジルからの強力なスポンサー支援を取り付けたと伝えられている。25歳のドルゴヴィッチは、ボッタスやペレスとは異なり、キャデラックにとって長期的な解決策となり得る存在だ。グレアム・ロードンは、この3人の中から2人のドライバーを選ぶ可能性が高い。

■フェリペ・ドルゴヴィッチ
●年齢:25歳
●F1出場回数:なし(2022年からアストンマーティンのリザーブドライバー)
●最後のF1レース:該当なし
●2025年の活動:IMSA/WEC(キャデラック)
●マネージャー:アミール・ナッサ
【キャデラックF1のドライバー候補(可能性低)】
■周冠宇
ルノーの“アカデミー”での長い経歴とザウバーでの3シーズンにもかかわらず、周はF1において強い印象を残すことができなかった。今年フェラーリのリザーブドライバーを務め、ほぼすべてのレースでパドックに姿を見せているが、チームの開発に積極的な役割を果たしているようには見えない。
キャデラックの代表グレアム・ロードンは、数年にわたり周のマネージャーを務めてきた。その関係から、周がキャデラックのリストに載っていると思われるが、それだけでは周がF1にカムバックすることを保証するには不十分だ。さらに、純然たるアメリカンチームが中国人ドライバーと共にF1にデビューするというアイデアは、現実味に欠けるものである。

■周冠宇
●年齢:26歳
●F1出場回数:68戦(2022年〜2024年)
●最後のF1レース:2024年アブダビGP
●2025年の活動:フェラーリのリザーブドライバー
●マネージャー:グレアム・ロードン
■ミック・シューマッハー
サビーネ・ケームがマネージャーとして、若きシューマッハーのために戦っている姿勢には、ただただ敬意を表すしかない。彼女はパドックで精力的に活動し、自分の広い人脈を通じてミック・シューマッハーの名前への注目を維持し続けているのだ。
2022年末でハースから放出された後、ミックがメルセデス、マクラーレン、そしてアルピーヌでテストを行ったのは、主にケームの働きかけによるものだ。彼は今年アルピーヌのWECチームで好成績を残しているが、それがキャデラックでのF1シートに結びつく可能性は低い。2022年にケビン・マグヌッセンと組んで臨んだシーズンを見る限り、彼が再びF1でチャンスを得るに値するとは言い難い。

■ミック・シューマッハー
●年齢:26歳
●F1出場回数:44戦(2021年〜2022年)
●最後のF1レース:2022年アブダビGP
●2025年の活動:WEC(アルピーヌ)
●マネージャー:サビーネ・ケーム
■フレデリック・ベスティ
現在、パドックの中でベスティをキャデラックF1ドライバーの真剣な候補者と見なしている者はほとんどいない。2023年のFIA F2でのランキング2位獲得は、彼に才能があることを示しているが、彼がF1シートを確保できないままほぼ2年が経過する間に、他の数人のF2ドライバーがF1への昇格を果たした。
ガブリエル・ボルトレート、アイザック・ハジャー、アンドレア・キミ・アントネッリ、オリバー・ベアマンはいずれも、F2でベスティより優れた成績を挙げたわけでも、より強力なスポンサー支援を持っているわけでもないため、ベスティが見過ごされている理由は他にあるに違いない。キャデラックのシートを追い求める他のドライバーたちのバックグラウンドと比較すると、ベスティのマネジメントには人的ネットワークに欠けているように見える。

■フレデリック・ベスティ
●年齢:23歳
●F1出場回数:なし(メルセデスのリザーブドライバー)
●最後のF1レース:該当なし
●2025年の活動:IMSA/WEC(キャデラック)
●マネージャー:ドーテ・リース
【キャデラックF1との契約がうわさされたドライバーたち】
キャデラックの経営陣はアメリカ人ドライバーを乗せることを夢見ており、コルトン・ハータが最も明白な選択肢だった。しかし、失望的なインディカーシーズンを経て、彼は現在その候補リストから外れている。
今年FIA F2で走るジャック・クロフォードは、アストンマーティンのジュニアプログラムにおいてF1の経験を持っている。最近アンドレッティチームからフォーミュラEルーキーテストに参加した際には、ベスティよりコンマ数秒速いタイムを記録した。
ダニエル・リカルドは、キャデラックが求めている経験を持っているが、彼は、グリッド後方のチームでF1に復帰することには関心はないだろう。
ケビン・マグヌッセンは、最近パドックに突然姿を見せ、グレアム・ロードンと面会した。その際に両者はキャデラックのF1プロジェクトに関して話をしたという。マグヌッセンは豊富なF1経験とデンマークのスポンサーからの支援の両方を持っているが、今のところは、再度F1にカムバックを果たす可能性は低そうだ。
(Text : Peter Nygaard)
関連ニュース

1位 | オスカー・ピアストリ | 266 |
2位 | ランド・ノリス | 250 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 185 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 157 |
5位 | シャルル・ルクレール | 139 |
6位 | ルイス・ハミルトン | 109 |
7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 63 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 54 |
9位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 37 |
10位 | エステバン・オコン | 27 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 516 |
2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 248 |
3位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 220 |
4位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 192 |
5位 | ウイリアムズ・レーシング | 70 |
6位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 43 |
7位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 41 |
8位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 36 |
9位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 35 |
10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 20 |

