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ハミルトンを失う懸念も。フェラーリ代表更迭報道の裏に潜む政争と、予想される危機

2025年6月25日

 F1カナダGPの前夜、フェラーリF1チームを激しく揺るがす出来事が起きた。同じ日に、イタリアの大手日刊紙二紙『Corriere della Sera』と『Gazzello dello Sport』が、ほぼ同一内容の記事を掲載したのだ。メディア企業RCSエディトーリが所有する両紙の記事では、チーム代表フレデリック・バスールの契約が今年末に更新されず、彼の後任に、イタリア人マネージャー(名前は明かされていない)が就任する予定だと報じられた。

 バスールは、ル・マンとモントリオールの間の空路にいたため、この報道に即座に対応したり、マラネロで全体会議を招集したりすることができなかった。彼はカナダに到着してからようやくこの報道に反応することができた。


 彼は自己弁護するよりも、むしろうわさに対して攻撃的な姿勢を取り、こう述べた。


「誰かが我々のチームに来ると書けば、その人物に代わられることになる者は、当然ながら神経質になり、動揺することになる。それは過去2年間で何度も起きていることであり、我々のスタッフに対する敬意の欠如を示している」


 時間が経過しても、興味深いことにフェラーリの上層部からこのうわさを否定するような動きは一切なかったため、バスールとそのスタッフ、さらにはイタリアのメディアは、その報道を詳細に分析し、それを誰が、どのような目的で流したのかを探ろうとした。

■情報源はひとつ。フェラーリ会長か、代表の座を狙う社内の人物か

 バスールがマラネロを離れるという同様の記事が、同一の編集グループに属する新聞から同日に出たという事実は、情報源がひとつであることを示している。ふたつの大手新聞が、協力もせず、また別々に情報を得ることもなく、同じ大きなニュースを同時に報じるのは極めて稀であり、ほぼ例がない。


 最近の報道とは異なり、エルカン/アニェッリ家は現在RCSエディトーリの株主ではなく、すでにその全株式を売却している。しかし、そのメディア企業の他の株主には、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の株主も含まれており、彼らはフェラーリと、この報道を出した新聞の双方に利害関係を持っている。


 もちろん、ステランティス会長、フェラーリ会長でありFCAの主要株主であるジョン・エルカンは、このような話を広めるのに必要なあらゆる人脈を持っている。そして、もし本当に彼が情報源であるならば、バスールの職は危うくなる可能性が高い。特に、エルカンはル・マンを訪れた際に噂を否定する機会があったにもかかわらず、F1については一言も触れなかったのだ。

ジョン・エルカン(フェラーリ会長)と言葉をかわすフレデリック・バスール(フェラーリ チーム代表)
2025年F1プレシーズンテスト ジョン・エルカン(フェラーリ会長)と言葉をかわすフレデリック・バスール(フェラーリ チーム代表)

 しかし、もしこの話がトリノやマラネロ、すなわちフィアットとフェラーリの拠点から出たものであるならば、これはバスールの職を狙う者によるクーデターの一端であると見るべきである。


 例によって、フェラーリには「自分こそがチームを率いるべきだ」と信じている中間管理職が絶えない。そして、外国人にその職を与えるべきではないと考える者もいる。しかし、フェラーリが最後にタイトルを獲得してからの16年間に、ステファノ・ドメニカリ、マルコ・マティアッチ、マウリツィオ・アリバベーネ、マッティア・ビノットという4人のイタリア人がスクーデリアを率いたが、その誰もがフェラーリにタイトルをもたらすことはできなかった。したがって、国籍がリーダー選びの最良の基準であるとは言い難い。


 レッドブルは7年間タイトルから遠ざかっていたが、クリスチャン・ホーナーもエイドリアン・ニューウェイも解任されなかった。メルセデスも3年間タイトルを獲得できていないが、トト・ウォルフは辞任しておらず、ジェームズ・アリソンも解雇されていない。レッドブルもメルセデスも、自らのハードウェアと技術を改善するために努力し、若手や実績ある人材を採用して挽回を目指した。それにより2021年にはレッドブルが流れを変えたし、メルセデスが同じことを達成するのも時間の問題だろう。

■バスール離脱の場合に考えられるシナリオ

 バスールの将来についての報道で、欠けていた大きな要素がひとつある。それは、その決定が即座にもたらす結果についての記述である。


 明らかなのは、バスールが解任されれば、ルイス・ハミルトンはフェラーリを去り、今年末でF1を引退する可能性が高いということだ。F3とGP2で大きな成功へと導いてくれた恩師をフェラーリが切り捨てるなら、ハミルトンのスクーデリアへの信頼は完全に失われるだろう。モントリオールで彼は、「フレッドこそが、僕がフェラーリに来た理由だ」と断言した。


 そして、シャルル・ルクレールもまた、バスールがいなくなれば、契約解除が可能になり次第、新たなチームを探し始めるだろう。彼の獲得を望むチームが列をなすことは間違いない。


 ルクレールは、昨年の初めにこう語っていた。「フレッドで勝てないのなら、僕たちは永遠に勝てない」。この発言は、バスールに対する彼の深い信頼を示している。

ルイス・ハミルトン、フレデリック・バスール代表、シャルル・ルクレール
(左から)ルイス・ハミルトン、フレデリック・バスール代表、シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 ドライバーたちは、誰よりも「誰が良い仕事をしているか」「誰がしていないか」を理解している。したがって、ハミルトンとルクレールが全幅の支持を示しているという事実は、バスールに時間とリソースを与えることが、フェラーリにとって正しい選択であることを裏付けている。彼を解任すれば、タイトル獲得までの時間がさらに何年か延びてしまうだろう。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2025年F1第10戦カナダGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)



(Text : GrandPrix.com)


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6位マネーグラム・ハースF1チーム28
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