ザウバーからアウディへの移行が難航しているとの報道。現状はチームの“舵取り”が不在、雇用や拠点問題に直面
2025年3月10日
ザウバーの改革を通じて2026年に実現する予定のアウディのF1参戦の壮大なビジョンは、波乱に満ちた現実に直面していると報じられている。
スイスを拠点とするザウバーは、アウディのワークスチームに変貌する前の最後の年を重い足取りで歩いている。『Sky Sports F1』の解説者デイビッド・クロフトは、表面下では移行がうまくいっていないと語り、チームが単なる新しいアイデンティティ以上のことに取り組んでいると述べた。
元ハースのドライバーであるニコ・ヒュルケンベルグとの契約は、ザウバーをアウディの将来へと導く熟練ドライバーを獲得するという意志を示すためのものだった。しかし、稀な希望の光であるこの動きさえも、不安定性によって影を潜めてしまった。
クロフトは、ザウバー・グループCEOを務めていたアンドレアス・ザイドルの退任と元フェラーリF1チーム代表のマッティア・ビノットの着任について、「彼(ヒュルケンベルグ)が契約したあと、CEOが変わっている。アンドレアス・ザイドルが彼をチームに招き入れたのだ」とコメント。また「4月まで彼らにはチーム代表がいない」と述べ、これはチームの指揮が切実に必要とされている時期に、チームの舵取りが不在であることを痛感させた。時計は2026年に向けて刻々と進んでいるが、その先の道は霧に包まれている。
■激動の移行
昨年、ザウバーはグリッドの最後尾で低迷し、彼らのマシンは果たされなかった約束の遺物となった。ドライバーの周冠宇とバルテリ・ボッタスがその矢面に立たされ、彼らのシートを犠牲にして、チームは2025年に明るい夜明けに向けてリセットした。
現在、ヒュルケンベルグと、スポンサー獲得に期待がかかる有望な新人ブラジル人ドライバーのガブリエル・ボルトレートの加入により、ガレージには再生の兆しが見え始めている。しかし、クロフトは楽観的な見方を抑えている。
「聞くところによると、アウディへの移行に関しては、特に順調に進んでいるわけではないようだ」
「ザウバーにとって、F1最後のシーズンがよりよい年になることを願っている」
これは疑念を帯びた希望だ。問題の核心はドライバーやマシンではなく、もっと根深い、もっと陰湿な欠陥にあるとクロフトは主張する。
「アウディのプロジェクトが抱える問題のひとつは立地だ」
「ヒンウィルはスイスという素晴らしい場所にあるが、スタッフを集めるのに最適な場所ではない。スイスは物価が高いし、人々を移住させなければならない」
■人材の雇用問題
アウディの対応が遅れたことは、不安をさらに深めるだけだ。
「彼らは今、人材をより有効に活用するためにイギリスに拠点が必要だと発表している」
「2年前にそうならなかったことに驚いている。検討事項にもなっていなかったことに驚いた。人々に、スイスに家族と移住するよう説得するのは、容易なことではない」
「戦いのうちの半分は、適切な人材を獲得することだ」
適切な頭脳と適切な人材がなければ、アウディは砂の上に夢を築くことになる危険がある。懸念は単なるプライド以上のものだ。
「彼らのエンジンがどれだけ優れているのかはわからない。しかし、アウディにはグリッドの最後尾に留まることがないようにとのプレッシャーがかかっている」
アウディのような大企業にとって、控えめなチームとしてF1に参戦する余裕はない。ヒュルケンベルグの経験と、彼がマシンから潜在能力を引き出す才能は、命綱となる。
「ヒュルケンベルグの経験とマシンを開発する能力が、チームにとって大きな財産になることを期待している」
「ガブリエル・ボルトレートは、彼と並んでよい選択だ。彼はブラジルからスポンサーを引き付ける素晴らしいドライバーだ」
ザウバーにとって、このシーズンは自社名義での最後のシーズンとなるはずで、ドイツの巨人が指揮権を握る前に、威厳をもって退場するチャンスとするべきだ。だがこれは、不確実性、地理との戦い、リーダーシップの不在といった状況、そして刻々と迫る時間のなかでの長く辛い仕事となりそうだ。
ヒュルケンベルグとボルトレートの加入は、好転のきっかけとなるだろうか? アウディはグリッドの最後尾から抜け出すために必要な才能を結集できるだろうか? 今のところ、ザウバーの最後の年は疑念のもやのなかで展開されているが、答えは煙のように漂っており、つかみどころがなく、手の届かないところにある。
(autosport web/Translation : AKARAG)
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