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F1コラム:レッドブルの優位喪失でのしかかる重圧。セナ的スタイルで失敗するフェルスタッペンと窮地に立つペレス

2024年7月14日

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、レッドブルが過去2年の圧倒的な優位を失ったことで、ドライバーふたりにのしかかるプレッシャーとその影響に焦点を当てた。


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 レッドブルは、2022年と2023年のF1ワールドチャンピオンシップを楽に制したが、今年はプレッシャーにさらされている。内部の権力闘争も影響しているが、それよりも、ライバルのマクラーレン、メルセデス、フェラーリが大きく進歩したことが大きな理由だろう。


 今までほど楽な戦いができなくなっているなかで、ふたりのドライバーも大きなプレッシャーを背負わなければならなくなった。それによって、マックス・フェルスタッペンは、最近、数少ない弱点のひとつをさらけ出した。そしてセルジオ・ペレスは遠くない将来にシートを失うかもしれない。

■2021年以来の接戦を強いられているフェルスタッペン

 フェルスタッペンは2021年にはルイス・ハミルトンとドライバーズタイトルをめぐり、死闘を繰り広げた。ふたりは何度かコース上で衝突し、モンツァとインテルラゴスのインシデントの責任はフェルスタッペンにあると判断された。

2021年F1第14戦イタリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が接触
2021年F1第14戦イタリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が接触

2021年F1第19戦ブラジルGP 首位争いのなかでコース外に出てしまったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第19戦ブラジルGP 首位争いのなかでコース外に出てしまったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)


 2022年から2年にわたり、フェルスタッペンは、楽に勝利を収めてきた。レッドブルのマシンが、ライバルたちよりはるかに高いパフォーマンスを有していたからだ。


 だが、今年は違う。今のフェルスタッペンは接戦を強いられており、それは必ずしもいつも美しい戦いになってはいない。オーストリアではマクラーレンのランド・ノリスとの間で接触が起き、ふたりのレースは台無しになった。この責任はフェルスタッペンにあるとされた。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)
2024年F1第11戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)が接触


 フェルスタッペンは接近戦での勘を失っていまったのだろうか。2シーズンにわたり、ライバルとホイール・トゥ・ホイールで戦う必要がほとんどないほど優れたマシンに乗っていたことを考えると、そうであっても不思議はない。また、彼は簡単に勝つことに慣れてしまい、そのためやや“傲慢な”ドライビングスタイルを身に着けてしまったのかもしれない。


 あるいは、フェルスタッペンは、これまで何度も厳しい罰を免れてきたため、何をしてもほとんどの場合は許されるという結論に達したということも考えられる。2021年のモンツァとサンパウロ、2024年のレッドブルリンクでの出来事を見ると、フェルスタッペンはアイルトン・セナが押し通した『道を譲れ、さもないと衝突するぞ』というスタイルを真似しようとしているように見える。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2024年F1第11戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)


 セナにとっては、そのスタイルはうまくいった。おそらくそれは彼が考案したスタイルであり、さらに当時は衝突のリスクが今よりもはるかに高かったからだろう。今のF1では、マシンとトラックがセナの時代よりもはるかに安全になっているため、フェルスタッペンのライバルたちは、セナのライバルたちほど怖気づく必要がない。


 今後もフェルスタッペンが、ノリスやハミルトンらとバトルをして勝利をつかまなければならないレースは出てくるだろう。その時にフェルスタッペンがどういう動きを見せるのか、非常に興味深い。

■キャリアの危機に直面しているペレス

 ペレスも今、大きなプレッシャーにさらされている。2022年と2023年にレッドブルのマシンが圧倒的に強かった時には、予選でペレスがフェルスタッペンより1周あたりコンマ数秒遅くても特に問題にはならなかった。それでもペレスのラップタイムは、最上位に近い位置を確保できたからだ。そしてレッドブルのレースペースはさらに強力だったため、ペレスはチームメイトのすぐ後ろの2位でフィニッシュすることができた。

2023年F1第5戦マイアミGP 優勝したマックス・フェルスタッペンと2位セルジオ・ペレス(レッドブル)
2023年F1第5戦マイアミGP 優勝したマックス・フェルスタッペンと2位セルジオ・ペレス(レッドブル)


 しかし2024年は全車が非常に僅差で並んでいる。ペレスがチームメイトに対してコンマ数秒遅いと、グリッドはかなり後ろになってしまう。そうなると、獲得できるポイント数も限られる。


 今シーズンは中盤になるにしたがって調子を落としてきたペレスだが、6月にレッドブルとの契約を2026年末まで延長することに成功した。チームが彼の残留を決めたのは、おそらく彼の成績よりもメキシコから持ち込まれるスポンサーを重視したからだろう。

セルジオ・ペレス(レッドブル)
2024年F1第10戦スペインGP セルジオ・ペレス(レッドブル)


 しかし、今年のコンストラクターズ選手権では、2台で大量のポイントを稼いでいかないと、ライバルから危険なほど差を縮められてしまうかもしれない。それを考慮して、レッドブルの経営陣は、真剣に計算する必要がある。レッドブルがコンストラクターズランキングで2位あるいは3位に終わるような事態になったとき、数百万ドルを失うことになる。その額より、メキシコのスポンサーからの収入の方が大きいのかどうか。そして、ペレスではなく他のドライバー(たとえば、リアム・ローソン、角田裕毅、ダニエル・リカルド)がレッドブルで走った場合、ペレスより多くのポイントを獲得できるのかどうかも予測する必要がある。


 ペレスへのプレッシャーは週ごとに増している。イギリスGP後、クリスチャン・ホーナー代表は、ペレスは今の低調さを続けていてはならないと述べた。

クラッシュ後のセルジオ・ペレス(レッドブル)のマシン
2024年F1第8戦F1モナコGP クラッシュ後のセルジオ・ペレス(レッドブル)のマシン


 このままでは、数週間前に結んだ契約が破棄されるかもしれない。ペレスの契約には、パフォーマンス条項が含まれているはずであり、そのひとつは、「サマーブレイクが始まる時(ベルギーGPの後に)、チームメイトから100ポイント以内のところにいなければならない」というものだといわれる。イギリスGP後の時点で、すでにペレスとフェルスタッペンの差は137ポイントに広がっている。


 これは、ホーナーが言うように「継続してはならない」状況だ。サマーブレイク後にフェルスタッペンが新しいチームメイトを迎えることになったとしても、もう誰も驚かないだろう。

セルジオ・ペレス(レッドブル)
2024年F1第4戦日本GP セルジオ・ペレス(レッドブル)



(Peter Nygaard)


レース

12/6(金) フリー走行1回目 結果 / レポート
フリー走行2回目 結果 / レポート
12/7(土) フリー走行3回目 結果 / レポート
予選 結果 / レポート
12/8(日) 決勝 結果 / レポート


ドライバーズランキング

※アブダビGP終了時点
1位マックス・フェルスタッペン437
2位ランド・ノリス374
3位シャルル・ルクレール356
4位オスカー・ピアストリ292
5位カルロス・サインツ290
6位ジョージ・ラッセル245
7位ルイス・ハミルトン223
8位セルジオ・ペレス152
9位フェルナンド・アロンソ70
10位ピエール・ガスリー42

チームランキング

※アブダビGP終了時点
1位マクラーレン・フォーミュラ1チーム666
2位スクーデリア・フェラーリ652
3位オラクル・レッドブル・レーシング589
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム468
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム94
6位BWTアルピーヌF1チーム65
7位マネーグラム・ハースF1チーム58
8位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム46
9位ウイリアムズ・レーシング17
10位ステークF1チーム・キック・ザウバー4

レースカレンダー

2024年F1カレンダー
第19戦アメリカGP 10/20
第20戦メキシコシティGP 10/27
第21戦サンパウロGP 11/3
第22戦ラスベガスGP 11/23
第23戦カタールGP 12/1
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