F1オーストリアGP分析(1)確実だった勝利を落としたレッドブルの敗因。チームのミスとフェルスタッペンの過剰反応
2024年7月4日
2024年F1第11戦オーストリアGPで、レッドブルは速さを取り戻し、決勝終盤までは優位を示していた。ところが、マクラーレンのランド・ノリスとのインシデントによりマックス・フェルスタッペンは後退、勝利を逃がしてしまった。レッドブルの勝利は確実だったと考えられる理由と、今回復活した理由を、F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが解説し、マシン細部の画像も紹介する(全2回)。
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レッドブル追撃に勢いづくマクラーレンは、オーストリアに新型フロントウイングを投入した。だが予選でのレッドブルは、大方の予想をはるかに超える速さを発揮し、マックス・フェルスタッペンがポールポジションを獲得した。
ところが決勝レースでは、ランド・ノリスが互角の速さを披露。そして両者は激烈なバトルの末に、あっけない幕切れを迎えた。2021年以来の白熱のチャンピオン争いが、今後も繰り広げられるのだろうか。
本来このコラムは技術解説に特化して、各マシンの空力アップデートや、その意味するところを論じている。しかし今回は少し方向を変えて、前半ではフェルスタッペンのドライビングに焦点を当てる。
ノリスはフェルスタッペンの、数少ない友人のひとりである。しかしたとえ相手が親しいノリスであっても、オーバーテイクされることはとても耐えられない。フェルスタッペンがそう考えていることが、今回改めて確認された。
52周目、レース開始時ほどの優位を明らかに失っていたフェルスタッペンは、2021年シーズンにしばしば見られた悪童ぶりを遺憾なく発揮した。ちなみに当時のスチュワードは奇妙なことに、そんなフェルスタッペンにペナルティを与えることは極めて稀だった。しかし今回は、事故の責任はフェルスタッペンにあるとして、10秒ペナルティを科した。
マクラーレンのアンドレア・ステラ代表が正しく指摘したように、2021年のルイス・ハミルトンに対する何回かの残忍な行動(特にブラジルGPは酷かった)にもかかわらず、FIAは不可解なほどにフェルスタッペンに寛大だった。当時のフェルスタッペンは控えめに言っても、過度に攻撃的で非スポーツ的だったにもかかわらず、である。
今回のフェルスタッペンは、そこまで好戦的になる必要はなかった。なぜならたとえノリスが彼を追い抜いたとしても、RB20のDRS効果はライバルたちをはるかに凌ぐ絶大な威力を持つため、間違いなくノリスを難なく抜き返していただろうからだ。
2026年の新規約からは消滅する運命にあるこの装置こそが、ここ数戦の苦戦を経て、レッドブルが新たに見出した優位性を説明するものである。
一方でノリスがレース終盤にフェルスタッペンに追いつくことができたのは、今まではほとんどミスを犯さずに来た、精密機械のようなレッドブルのチーム運営に綻びが出たからだった。2回目のピットストップでのタイヤ交換作業で4秒以上のタイムロスを喫し、第1スティントを引っ張る戦略も最適とは言えなかった(周回遅れを抜くために、少なくとも1.5秒ロスした)。さらに高い路面温度によるハードタイヤの劣化が、予想以上に大きかった。
レッドブルには極めて珍しいこれらのミスがなければ、さらにノリスの激しい追撃に過剰反応して、ブレーキング中に急ハンドルを切って左リヤタイヤのパンクを引き起こさなければ、フェルスタッペンはこのレースで難なく勝利していただろう。
(第2回に続く)
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)
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1位 | オスカー・ピアストリ | 131 |
2位 | ランド・ノリス | 115 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 99 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 93 |
5位 | シャルル・ルクレール | 53 |
6位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 48 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 41 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 30 |
9位 | エステバン・オコン | 14 |
10位 | ランス・ストロール | 14 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 246 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 141 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 105 |
4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 94 |
5位 | ウイリアムズ・レーシング | 37 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 20 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 14 |
8位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 8 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 7 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 6 |

