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F1技術解説:メルセデスがカナダで速かった理由(1)有利に働いたサーキット特性と精力的なアップデート

2024年6月17日

 F1第9戦カナダGPでメルセデスはポールポジションと表彰台を獲得、今季ここまでで最高のパフォーマンスを見せた。その飛躍の理由を、F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが分析、マシン細部の画像も紹介する(全2回)。


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 第9戦カナダGP以前のメルセデスの最後の表彰台は、去年最終戦のアブダビまで遡らなければならない。カナダでジョージ・ラッセルが3位表彰台を獲得できたのは、どんな理由からだったのか。一つは「地の利」、そしてもう一つは「W15の継続的なアップデートによる戦闘力強化」、この二つの要因から説明できそうだ。

メルセデスF1 W15
メルセデスF1 W15比較写真


 今年のカナダGPでのメルセデスは、初日から好調だった。ウエット路面を走ったルイス・ハミルトンは「トップチームに近づきつつある」と手応えを語り、予選ではラッセルが自身二度目となるポールポジションを獲得した。そして決勝レースではラッセル3位表彰台、ハミルトンも4位完走を果たした。予想外ともいうべきこの健闘の理由を、まずは「地の利」の観点から説明しよう。


 ジル・ビルヌーブ・サーキットは、長いストレートを低速コーナーやシケイン、ヘアピンで繋いだ典型的なストップ&ゴーレイアウトだ。そしてほとんどのコーナーの通過速度が、ほぼ同じである。この特異な性格が、メルセデスに有利に働いたことは間違いない。というのもW15の大きな弱点の一つが、低速コーナーと高速コーナーの両方で遅いことなのだ。


 今季のマシンはヘアピンなどの低速コーナーでアンダーステアが出やすい。それを軽減しようとすると、今度は高速コーナーでオーバーステアを引き起こしてしまう。ブラックリーのエンジニアたちはその傾向に早い段階から気づいていたものの、効果的な対処ができずにきた。しかしほぼ全てのコーナーでのコーナリングスピードがほとんど同じジル・ビルヌーブ・サーキットなら、この弱点がかなり目立たなくなる。さらにメルセデスのギヤ比は立ち上がりの加速重視でかなり短く設定されており、これもまたカナダのサーキットに完璧に適合した。

メルセデスF1 W15
メルセデスF1 W15比較写真


 もう一つが、メルセデスがここ数戦で精力的に行っているアップデートである。今回のモントリオールでも、フロントサスアームのフェアリングが見直された。それらの改良の積み重ねが、着実に実を結び始めたことは間違いない。


 そんな数々のアップデートの中でも最も重要な変化は、カナダの2週間前にモナコで導入された新しいフロントウイングだ。モナコでは部品の完成が遅れてラッセル車にのみ搭載されたものの、幅広い速度域での空力バランスを高める狙いは、かなりの程度達成されていたようだ。


「グラウンドエフェクトカーである今のF1は、非常に低い車高で走ってこそ真価を発揮する」と、テクニカルディレクターのジェームス・アリソンは説明する。


「なかでもフロントウイングは地面すれすれに配置されているため、グラウンドエフェクトを最大限に活用できる。ウイングのサイズがかなり大きいことから、非常に大きいダウンフォースがフロントで発生する。多くの場合、ダウンフォース量は大きすぎる。その結果、特に高速走行時に車の挙動がいっそうナーバスになってしまうんだ」


「地上高を下げれば下げるほど、この現象はより顕著になる。実際、グラウンドエフェクト元年の2022年には、マシンの車高はまだそこまで低くなく、この問題は発生していなかった」


「ライバルたちに比べて、我々が去年からずっと車高を下げることができなかったのは、まさにこの問題の解決に手こずっていたからだ。その意味でモナコで導入されたフロントウイングは、技術的なブレークスルーが期待できるものだ」


(第2回に続く)



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)


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