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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第7/8戦】いまやミッドフィールドの王者。より良い将来の選択肢はいくつもある

2024年6月4日

 F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は、第7戦エミリア・ロマーニャGP、第8戦モナコGPに焦点を当てた。


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 120フィートのヨットに乗り、光り輝く太陽と美しい地中海を眺めながら、素敵な女性がサーブする最高級のシャンパンを飲む……。ああ、人生ってなんと素晴らしいのだ!


──おっと、もう横槍を入れてくるのかい? 自慢話に見えるかもしれないが、これからの話のお膳立てをしているのだから、黙って聞いていなさい。

F1モナコGP
2024年F1第8戦F1モナコGP


 ええと、どこまで話したっけ。友人のプライベートジェットでニース空港に戻ってきたばかりで疲れているんだ。ヨット、太陽、海、シャンパン、美しい女性で構成される世界に身を置きながら、世界最高のドライバーたちが世界最速のマシンを走らせるシーンを眺めていたという話だったね。モンテカルロの5日間は素晴らしかった。F1、ショービジネス、金融界の有名人たちと親密な時間を過ごし、グランプリレーシングの世界の重要人物たちと話をした。もちろん、それが大事な仕事としての役割を果たしていたことは言うまでもない。


 グランプリの現場で、若き角田裕毅についての評判を聞いた。長い年月を経て、大勢の人々が、私が昔から主張してきたことに同意し始めた。彼は非常に速く、優れたライバルたちと同等と言っていいほど成長した。あのチーム(ミナルディ、トロロッソ、アルファタウリ、レーシングブル、RB、VCARB……なんと呼んでもいいが)で走りながらだ。


 まずは、モナコの前のエミリア・ロマーニャについて話そう。イモラに行ったかって? 行くわけがない。あそこはいまだに80年代で時が止まっている。21世紀の男が行く場所ではないからな(何を笑っているのか。ここは笑うところではない)。裕毅はイモラの予選でメルセデスの2台に割って入った。そうして7番手に入ったというのに、Q3最後のラップに彼は満足していなかった。完璧であればフェラーリと5番手争いできたかも知れないと考えられるほど、今の裕毅のレベルは高いのだ。


 レースでは6位を争えるスピードがあったが、スタートが悪く、ニコ・ヒュルケンベルグの後ろに落ち、アンダーカットのために早めのピットインをせざるを得ず、最後の10周はタイヤに苦しんだ。それで10位にとどまったわけだが、彼はチームの選択を支持し、2台がひどいスタートを切ったことを過度に強調するようなことはなかった。

角田裕毅(RB)の10位入賞を祝うチーム
2024年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP 角田裕毅(RB)の10位入賞を祝うチーム


 モナコで裕毅は、モンテカルロでの優勝経験を持つダニエル・リカルドを凌駕し、予選でベスト・オブ・ザ・レストの位置をつかみ、決勝では見事に8位でフィニッシュした。チームが近年さほど良い結果を残してこなかったサーキットでだ。


 ドライバーズチャンピオンシップを見ると、トップ10には、レッドブル、フェラーリ、マクラーレン、メルセデスがふたりずつ、その下にアストンマーティンひとりがきて、その次が角田だ。彼はランス・ストロールには8ポイント、ヒュルケンベルグには13ポイントの差をつけている。彼がミッドフィールドの王者なのは疑いようがない。

角田裕毅(RB)
2024年F1第8戦F1モナコGP 角田裕毅(RB)


 今まで何度も言ってきたことを繰り返すが、角田がマリオ宮川氏をマネージャーとして雇ったのは最高に近い選択だった(もちろん、最高の選択は、私を雇うことだった)。それは彼のリザルトが証明している。マリオが素晴らしい仕事をしていることに、疑いがない。


 レッドブルでホーナーとマルコが権力争いをしているために、角田はペレスの後任に選ばれることはないかもしれないが、それでも今より良い将来を迎えるチャンスはあると思う。たとえば、アストンマーティンには、新しい血が必要だ。最近のアロンソは精彩を欠いているし、ストロールにこれ以上時間を費やすのもいかがなものかと思う。ホンダがパートナーになることを考慮しなくても、アストンが角田を選ぶべき理由はある。


 アルピーヌに入れば、ピエール・ガスリーとともにチームに素晴らしい貢献ができるだろう。ウイリアムズに行くのもいいかもしれない。


 だが、自分がレッドブル社のミンツラフ氏だったら、とやはり考えてしまう。そしたらホーナーに電話をかけて、角田を来年乗せろと言うのだが……。

角田裕毅(RB)の8位を祝うチーム
2024年F1第8戦F1モナコGP 角田裕毅(RB)の8位を祝うチーム


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筆者エディ・エディントンについて


 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


レース

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