F速

  • 会員登録
  • ログイン

海外ライターF1コラム:24戦の理不尽なカレンダーが招く問題。人材不足が深刻化、“根無し草感”で疲弊するドライバー

2024年4月18日

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、史上最多24戦のカレンダーがもたらす問題点に焦点を当てた。


────────────────


 F1カレンダーは急激に拡大しつつある。20年前にはカレンダーは16戦で構成されていたが、今年は24戦が予定されている。そして、開催数の多さが、F1にたくさんの問題を引き起こしている。


 F1の仕事はかつては夢の職業だったが、今では適格な従業員を見つけることが難しくなりつつある。メカニック、エンジニア、タイヤ技術者やその他、F1の現場で働く人々にとって、一年に24週間も自宅を離れなければならない環境を考えると、もはやF1は魅力的な職場ではない。

2024年F1第4戦日本GP 決勝スタートの様子
2024年F1第4戦日本GP 決勝スタートの様子


 雇用主は、仕事量の増加を補うために従業員の給与を引き上げたくても、予算上限規定の関係でままならない。バジェットキャップはチーム間の競争力の差を縮めるために導入された規則で、その目的はある程度達成しているものの、従業員の昇給を妨げるなど、残念な副作用もある。


 そうしたなかで、若いメカニックやエンジニアたちのなかには、F1以外のチャンピオンシップに目を向ける者もいる。WEC世界耐久選手権には、より高いサラリーを支払うことができるファクトリーチームがいくつもあるし、年間開催数もわずか8戦だ。

■ローテーション制を採用できないハースの厳しい状況

 F1のビッグチームは、多くの従業員をローテーションし始めている。ひとつの仕事の担当者としてふたりのスタッフを任命し、彼らが交代で休めるようにするわけだ。役職によっては全戦に参加しなければならないが、チーム代表であっても、時折休むために代役を立てようとしている。


 もちろん、ドライバーはすべてのレースに出席しなければならない。


「絶対に休むことができないメンバーもいて、僕もそのひとりだ」とハースのレースドライバー、ケビン・マグヌッセンは言う。

ケビン・マグヌッセン(ハース)
2024年F1第4戦日本GP ケビン・マグヌッセン(ハース)


「ドライバーにとって長いカレンダーは負担だが、それでもメカニックが耐えている負担ほど厳しくはない。もちろんF1ドライバーの仕事は簡単ではないけどね」


「長時間労働だけが問題なのではない。これは僕自身のことで、他の人はどうか分からないけれど、人を疲れさせるのは、根無し草のような感覚だ。F1ドライバーという仕事をしていると、生活に安定感がなくなる。レース数が増えれば増えるほど、根無し草の感覚が増していく。それが人を疲れさせるんだ」


 マグヌッセンは、ルイーズ夫人と幼い娘たち、ローラとアグネスを、できるだけ多くのレースに同行させることで、根無し草感覚と戦おうとしている。


 ハースは、従業員の交代制を採ることができないため、スタッフに大きな負担がのしかかっているという。


「ハースはそれなりの規模があるが、従業員のローテーションをすることはできない。そういうチームにとっては、24戦のカレンダーは特に厳しい」とマグヌッセンは言う。


「24戦すべてに行かなければならないスタッフがあまりに多いんだ」

■フェルスタッペンやアロンソも24戦開催に否定的

 現チャンピオンのマックス・フェルスタッペンは、シーズンスタート前から、24戦は多すぎると主張していた。開幕戦を前にした記者会見でフェルスタッペンは、今のカレンダーについて「限界をはるかに超えている」と断言した。


 現役ドライバー最年長42歳のフェルナンド・アロンソは、「僕がF1活動を始めた時には16戦だった」と振り返る。


「それが18戦になり、その後、リミットを20戦にするという話が出てきた。そして今は24戦に増えている。これはいつまでも耐えられるレベルではない」

2024年F1第3戦オーストラリアGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
2024年F1第3戦オーストラリアGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)


 日本GPの週末、鈴鹿のパドックにいた人々の大多数が、24戦は多すぎるという意見を示していた。今シーズン序盤のスケジュールはハードなもので、日本を訪れたF1関係者は、その前の4週のなかでバーレーン、サウジアラビア、オーストラリアの3戦を消化していた。日本の後は中国、そしてその後はアメリカのマイアミでのグランプリが控えている。こういったカレンダーは、F1関係者にとって合理的ではなく、CO2排出量としても持続可能な移動プログラムとはいえない。


 それではなぜこういうカレンダーが形成されたのか。その理由は明らかだとマグヌッセンは言う。


「カレンダーが24戦にまで膨れ上がった理由は簡単に理解できる。もちろん、お金だよ」


 F1は世界で最も金がかかるスポーツだ。利益を追求し続け、今のF1は大きな成功を収めているが、一方で、F1界の人々は、理不尽なカレンダーに耐えなければならない状況に陥っている。



(Peter Nygaard)


レース

10/18(土) フリー走行 2:30〜3:30
スプリント予選 6:30〜7:14
10/19(日) スプリント 2:00〜2:30
予選 6:00〜
10/20(月) 決勝 4:00〜


ドライバーズランキング

※シンガポールGP終了時点
1位オスカー・ピアストリ336
2位ランド・ノリス314
3位マックス・フェルスタッペン273
4位ジョージ・ラッセル237
5位シャルル・ルクレール173
6位ルイス・ハミルトン125
7位アンドレア・キミ・アントネッリ88
8位アレクサンダー・アルボン70
9位アイザック・ハジャー39
10位ニコ・ヒュルケンベルグ37

チームランキング

※シンガポールGP終了時点
1位マクラーレン・フォーミュラ1チーム650
2位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム325
3位スクーデリア・フェラーリHP298
4位オラクル・レッドブル・レーシング290
5位ウイリアムズ・レーシング102
6位ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム72
7位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム68
8位ステークF1チーム・キック・ザウバー55
9位マネーグラム・ハースF1チーム46
10位BWTアルピーヌF1チーム20

レースカレンダー

2025年F1カレンダー
第19戦アメリカGP 10/19
第20戦メキシコシティGP 10/26
第21戦サンパウロGP 11/9
第22戦ラスベガスGP 11/22
第23戦カタールGP 11/30
  • 最新刊
  • F速

    F速 2025年10月号 Vol.4 後半戦展望号