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ハミルトンがフェラーリF1を選んだ理由を考察。信頼低下、魅力的なオファー、20年前のある出来事

2024年2月5日

 ルイス・ハミルトンとメルセデスが2025年末までの新契約を発表したとき、ハミルトンはドイツのチームでレースの日々を終えるのだろうと広く考えられていた。結局、その年の終わりにハミルトンは41歳間近になるわけだが、彼は他の場所で成功を追求しようとするモチベーションを隠したことがない。


 同時に、ハミルトンとダイムラー・グループとのつながりは、単なるドライバーとチームの関係を超えた深いものだ。ハミルトンは「まだカートにいた13歳からメルセデスのドライバーだった」とつねに指摘しているし、メルセデスは彼の『ミッション44』に積極的に関与しているパートナーだ。その上、トミーヒルフィガーのスポンサーシップをメルセデスに持ち込んだのはハミルトンだ。他にも多くの小さな分野において、ドライバーとドイツの企業は長年にわたって実りあるますます重要な関係を享受してきた。


 では、なぜ40歳でフェラーリに加入するという決断に至ったのだろうか? ハミルトンの決断には3つの大きな要因があったのは確かだ。そのうちメルセデスが及ぼした影響はひとつだけで、他のふたつはドイツチームとトト・ウォルフのコントロールが完全に及ばないことだった。


 ハミルトンのような実力と経歴を持つドライバーにとって、2年連続で未勝利というのは初めての経験であり、彼は人生でこれほど実りのない時期を経験したことはなかった。もちろん、どのチームも出来の悪いマシンを設計し製造することはある。ハミルトンは2022年に『W13』の欠点に耐え、思い切ったことを試みた。マシンの欠点を克服する特効薬を見つけることを期待して急進的なセットアップに取り組んだ。物事がひどく裏目に出て、何度かポイント圏外で終わったこともある。


 一方、若手のラッセルは安全策をとってポイントを稼いでいた。しかしW13に改善の兆しが見られ始めると、ハミルトンが優位に立ち、その傾向は2023年も続いた。メルセデスのふたりのドライバーのうち彼のほうに力があることは明らかだった。


 しかし、前モデルと同じ欠点が踏襲されシーズン序盤が無駄になり、レースに臨みながら『W14』に新たなコンセプトが展開されたことで、ハミルトンはチームへの信頼を失ったようだ。ジェームズ・アリソンがみんなに活力を与えたとしても、7度の世界チャンピオンであるハミルトンは、2024年のチャンスについてチームの他のメンバーほど楽観的ではなかった。


 一方でフェラーリはフレデリック・バスールのリーダーシップの下、コース内外で大きな進歩を遂げていたため、比較したところでメルセデスのケースの役には立たなかった。

2022年、23年と2年連続で未勝利に終わったルイス・ハミルトン(メルセデス/右)
2022年、23年と2年連続で未勝利に終わったルイス・ハミルトン(メルセデス/右)

■バスールがハミルトンのF3キャリアを救う

 そしてもちろん、フェラーリでドライビングすることの魅力もある。ジャッキー・スチュワートを除けば、そしてそのことはF1の古い歴史の一部となっているが、スクーデリアからの真剣なオファーを断ったトップドライバーはいない。


 ハミルトンは以前にフェラーリと話し合い、何年も前にジョン・エルカーン会長と親しくなっていた。アニェッリ帝国の後継者であるエルカーンはハミルトンに対し、有名なイタリアのチームでドライブしない限り、彼のレガシーは普遍のものにはならないと少しずつ説得を行っていった。(フェルナンド・)アロンソや(セバスチャン・)ベッテルのように、ハミルトンはスクーデリアをトップに返り咲かせる自信を持ってマラネロに向かうだろう。また彼のためにも、他のふたりの偉大なチャンピオンたちができなかったことで彼が成功できるよう願うばかりだ。


 しかし、3番目の要素が決定的なものだったかもしれない。バスールとふたたび仕事をすることの魅力が、ハミルトンがメルセデスを離れることを決意した転換点だったのかもしれない。バスールとハミルトンは古い付き合いであり、ハミルトンは広く知られている以上にバスールから恩恵を受けていることを認識している。

GP2時代のフレデリック・バスール(ARTグランプリ/左)とルイス・ハミルトン(同/右) 2006年GP2第5戦モナコ
GP2時代のフレデリック・バスール(ARTグランプリ/左)とルイス・ハミルトン(同/右) 2006年GP2第5戦モナコ


 F3ユーロシリーズでの初シーズンで、ハミルトンはジェイミー・グリーン、アレクサンダー・プレマ、ニコラ・ラピエール、ニコ・ロズベルグに敗れて5位に終わったため、ロン・デニスはフラストレーションを溜めていた。費用を負担していたのはマクラーレンだったからだ。


 デニスとアンソニー・ハミルトンの関係が明らかに悪化していたため、デニスはこの若者を手放す準備ができていたが、そのシーズンにグリーンとプレマを擁し、大きな成功を収めたバスールは、ウォーキングに赴き、ハミルトンにもう一度チャンスを与えるようデニスを説得した。拒否するにはあまりにもよい条件のオファーを出し、ハミルトンが実力を証明するための時間をもう1年与えるようデニスを納得させるのに手を貸したのだ。


 そして、ハミルトンは実力を証明してみせた。彼は2005年に20戦中15勝を挙げユーロF3のシリーズチャンピオンを獲得。翌年にはバスールが立ち上げたARTグランプリからGP2に参戦し、2年連続でタイトルを獲得した。F1にデビューした2007年以降のことは知ってのとおりだ。


 ふたりは親しい関係のまま定期的に連絡を取り合っており、互いに長年の競争に耐えてきたことについて、ともに感謝の気持ちを持っている。20年ほど前にハミルトンを深く信頼し、彼が2年連続でタイトルを獲得するのを助け、マラネロでの比較的短い時間でフェラーリを改善できることを示したバスールとの仕事にふたたび戻ることの魅力は、結局のところあらがうには大きすぎるものであり、他のふたつの要因も相まって、ハミルトンはメルセデスとの途方もない成功の歴史に終止符を打ってチームを去るという、予期せぬ決断をすることになった。



(GrandPrix.com
Translation: AKARAG)


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