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【中野信治のF1分析/第5戦】明暗分けたスタートのタイヤ選択。アロンソの人を動かす無線
2023年5月13日
2023年シーズン中アメリカでは3戦が開催されるF1。その初戦となった第5戦マイアミGPでは、予選赤旗終了により9番グリッドからのスタートを余儀なくされたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、ハードタイヤスタートからミディアムタイヤでスタートした上位勢を次々とオーバーテイクし今季3勝目を飾りました。今回のレースの鍵となったタイヤ選択を中心に、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点でレースを振り返ります。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マイアミGPの決勝はスタートでのタイヤ選択が戦況を大きく変えました。ソフトタイヤを履いた後方のマクラーレン2台を除き、スタートタイヤはミディアムとハードに二分されるかたちとなりましたが、結果的にはハードでのスタートが正解だったと思います。決勝日は思いのほか気温と路面温度も低め(スタート直前の計測で気温27度、路面温度34度)で、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が少ない状況でしたが、そんな低気温のなかでもハードタイヤがきちんと機能していました。それがこのレースのポイントだったと思います。
当然、気温が低めだとハードタイヤよりもミディアムタイヤの方が路面に合うはずです。ですが、それ以上にハードタイヤがうまく機能する何らかの条件が整っていたと思います。詳細な理由まではわかりませんが、今年のレースに向けて行われたマイアミ・インターナショナル・オートドロームの路面の再舗装も影響しているのかもしれません。
上位7台がミディアムタイヤスタートとなるなか、レースは9番手からハードタイヤでスタートを切ったフェルスタッペンが制したので、結果的にはハードタイヤでのスタートが正解だったと言えます。ただこれも、フェルスタッペンの走りが素晴らしすぎたというのも理由のひとつです。
ハードタイヤのデグラデーションのコントロール、後半に向けたタイヤマネジメント。そしてレース後半でのラップタイムを刻み方を見ていると、決勝日のフェルスタッペンはまさにゾーンに入っていたと感じましたね。
決勝の前、土曜日の予選後の夜に雨が降りましたが、決勝での各車のタイヤを見ていると、その雨の影響はあまりなかったと思います。雨で路面が悪くなると思いきや、そこまで悪くはならなかった。だからハードタイヤでもいけたのだと思います。僕は雨の影響で路面が悪くなるのでミディアムタイヤスタートの方がいいのかなとスタート前は思っていました。ただ、ハードタイヤも走り出しから悪くはなかった。それも再舗装された路面の影響もあると思います。
雨には埃などが含まれるので、雨が上がり路面が乾くと、コース上には雨に含まれていた埃や砂のようなものが浮いてきます。その埃や砂が捌けてくるまでは路面は滑りやすくなりますが、今回のマイアミGPではサポートレースもポルシェカップしかなかったにも関わらず、雨の後の路面の回復が異常に早かったという印象です。
もちろん、ハードタイヤを選ぶという戦略は賭けの部分もあったとは思いますが、結果的にその賭けは的中するかたちとなりました。ハードタイヤでのスタートを選んだ(角田)裕毅もすごく上手くタイヤマネジメントしていましたね。後半、どんどん路面状況が良くなるにつれて、ミディアム勢のペースが落ちてくる。でもハード勢はどんどんと良くなってくる。路面コンディションの上がり方が特にマイアミのようなサーキットは急激で、それにつれてハードタイヤの良さがどんどん活かされてきて、ペースを落とさずに走ることができたと思います。
一方のミディアム勢は特に左フロントにグレイニングが出ていました。グレイニングは、ステアリングを切ったっただけではクルマが曲がってくれず、ステアリングを切った舵角とクルマの向きが合っていない状態となり、タイヤの接地面がささくれ状態となる状況です(編注:フロントタイヤの場合)。進行方向に対して、斜めの力がかかるなかで、どんどんとタイヤが削れていく。正しい方向にグリップして削るんじゃなく、滑りながらタイヤが削れていくので、接地面が波を打ったような状況(ささくれ)になります。
また路面が悪いと、アクセル踏んだ際に進行方向を向かずに横に向いてしまうので、リヤタイヤも(ささくれで)厳しくなります。ドライバーはフロントタイヤを庇おうと、少しアクセルを早めに踏んで向きを変えようとしたりするのですけど、逆にそれでフロントだけではなくて、今度はリヤタイヤも痛めてしまうし、そうなると全体のペースが上がらなくなります。
ハードタイヤよりもミディアムタイヤの方が柔らかいので、グレイニングも出やすいのですが、今回はミディアムタイヤがマッチしにくい状況かつ、ハードタイヤが意外にマッチしてした一戦だったのではと考えています。ただ、今回のようなケースはなかなかなく、ドライバーもエンジニアも予想しにくい領域だったとも思います。
■26万人が訪れたマイアミGPとアロンソの人を動かす無線
今年のマイアミGPは3日間で26万人が訪れました。これもアメリカのリバティメディアがF1を買収し、Netflixなどの新しいプラットフォームも活用しつつ、F1というものをよりさまざまな層の人たちに伝わるように戦略を立て実行してきた結果だと思います。レースの見せ方においても無線を聞かせるとか、番組作りでも人にクローズアップして、F1は人間の戦いだという点をアピールすることで、本当にたくさんの人たちの興味を得ることができましたよね。
そうすることで、F1に対するイメージというのがおそらく、ガラッと変わったと思います。それまでのF1はやはりファンとドライバーの距離が遠かったのですよね。そこを、アメリカ的発想のエンターテイメント性を高める取り組みをトライしてきて、それがかたちとなってきたのが今年なのかなと感じます。
これは戦略なので、結果の如何は開催地がアメリカだからとも限らないと僕は思います。でもアメリカは特にエンターテイメントが好きな国であるとも思います。レースがかっこいい、速いからから見に行くのではなく、エンターテイメントの場としてF1を楽しみにサーキットに行くという。そういったアメリカ人のイベントの楽しみ方にうまくF1がマッチしてきたのではないかなというふうに思います。
そんなマイアミで今季5戦で4度目の3位表彰台を獲得したフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、決勝中に自分のコックピットから見える場所にいないはずのランス・ストロール(アストンマーティン)のオーバーテイクを誉める無線を飛ばすという、一味違った見せ場を作りましたね。
あれは(観客用の)巨大スクリーンに写っていたストロールのオーバーテイクシーンを、偶然目にしたのだと思いますが、私はあの無線を聴いて、アロンソは走りだけではなく、無線を使っていかに自分の凄さを周囲に感じさせるか、自分を魅力的に見せるかをよく考えているなと感じましたね。
やはり、F1は人を動かす、チームを動かすスポーツです。アロンソの場合、動かすべきチームとは、ランスの父ローレンス・ストロール(アストンマーティンF1チームのオーナー)なので、アゼルバイジャンGPの際もそうでしたが、「僕はチームを考えている」、「ランスのことも考えている」と、ローレンスが気持ちよくなる言葉を無線に入れてきます。このような言葉のひとつひとつもアロンソの計算の内というか、感覚的にやっている行動でしょうから、さすがです。
コース上で走ることもレースです、そして人を動かすこともレースです。自分がチーム内で何をすれば一番有利になれるのかを考えると、これらの行動も当たり前ですよね。もちろん、これもクルマが悪かったり、遅かったりするとこういったことも考える余裕はなくなります。そういう意味では、アロンソは今最高の状況にあるとも言えます。スピードのあるクルマを持ち、レース中にも人を動かすということに頭を使える、考えられる余裕があることは事実ですからね。でも、ああいう無線を発するという発想はなかなかないですね(笑)。
でも、そういう発想ができるから、人が思いつかない雨のレースでのライン取り、考えつかない場所でのオーバーテイクなど、先んじてやっていくことができる。それがアロンソという人の凄さだと思いますし、エンターテイナーだなと思います。
また、あの無線の件を知ったドライバーたちは、頭の使い方や発想について、アロンソから学んでいる最中だと思います。なぜアロンソがあの場であの無線を飛ばしたのかなど、必ず理由がありますからね。ただ、みんながそれを真似するのも正しいとは思いません(笑)。あれは、アロンソの42歳という年齢と2度の王者というキャリアがあるからこそ許されている部分もあると思いますし、アロンソが自分の年齢とキャリアを踏まえて最適だと考えた末の行動でしょうからね。
<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿の副校長として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24
(Shinji Nakano まとめ:autosport web)
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| 1位 | ジョージ・ラッセル | 25 |
| 2位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 18 |
| 3位 | シャルル・ルクレール | 15 |
| 4位 | ルイス・ハミルトン | 12 |
| 5位 | ランド・ノリス | 10 |
| 6位 | マックス・フェルスタッペン | 8 |
| 7位 | オリバー・ベアマン | 6 |
| 8位 | アービッド・リンドブラッド | 4 |
| 9位 | ガブリエル・ボルトレート | 2 |
| 10位 | ピエール・ガスリー | 1 |
| 1位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 43 |
| 2位 | スクーデリア・フェラーリHP | 27 |
| 3位 | マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム | 10 |
| 4位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 8 |
| 5位 | TGRハースF1チーム | 6 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 4 |
| 7位 | アウディ・レボリュートF1チーム | 2 |
| 8位 | BWTアルピーヌF1チーム | 1 |
| 9位 | アトラシアン・ウイリアムズF1チーム | 0 |
| 10位 | キャデラックF1チーム | 0 |


