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厳しい1年を過ごし、悲願のタイトル獲得「後ろにいるみんなを信じてやってきた」/HRC本橋TDインタビュー

2022年10月27日

 2022年F1第19戦アメリカGPで、オラクル・レッドブル・レーシングがコンストラクターズタイトルを獲得した。レッドブルのタイトル獲得は2013年以来だ。そのレッドブルのパートナーとして、パワーユニットの開発や製造、運用をサポートするHRCの本橋正充テクニカルディレクターは、今回のタイトル獲得を「素直にうれしいです」と喜んだ。しかしその一方で、前任者の田辺豊治氏からテクニカルディレクターを引き継いだこの1年を振り返り、「実際にやってみると厳しかった」と明かした。


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──ホンダはパワーユニットマニュファクチャラーとしてはF1参戦を終了していますが、レッドブルのパートナーとしてパワーユニットの開発・製造・運用をサポートしています。レッドブルとともに、コンストラクターズ選手権を制覇したいまの気持ちは?


本橋正充テクニカルディレクター(以下、本橋TD):昨年獲れなかっただけに、素直にうれしいです。ここまで一緒に戦ってくれているレッドブル、ドライバー4人、そしてHRCのみんながいて、やっと獲れました。言葉にならないです。本当にみんなにありがとうを伝えたいし、やったぜ!という気持ちです。

オラクル・レッドブル・レーシング
2022年F1第19戦アメリカGP オラクル・レッドブル・レーシングがコンストラクターズタイトルを獲得


──本橋さんは今年、テクニカルディレクターとして田辺豊治さんの後を継ぐことになりました。さまざまなプレッシャーがあったと思います。今年1年間、ここまでどうでしたか?


本橋TD:キツいです(笑)。これまで田辺さんを見てきて、いろいろと教わってきたつもりでしたが、実際にやってみると厳しいです。


──たとえばどういうところですか? 最終決定を自分が下すことなのか、全体を見渡さなければならないことなのか、あるいはHRCとのやりとりですか?


本橋TD:最終決定を下すことに関しては、もちろん責任を常に感じています。ですが、みんなが後ろにいるので、私はそれを信じてやってきました。今年はレッドブル・パワートレインズ(RBPT)という新しい組織と組むことになりましたが、チャンピオンを獲るためには今までのオペレーションのクオリティを落としたくなかった。そのあたりが一番大変でした。


──RBPTのスタッフの多くは、昨年までホンダが現地採用していたホンダのスタッフでした。いままで部下だった人たちが、違う組織のスタッフになっているので、命令系統が微妙に違いますよね。


本橋TD:もちろん異なる会社間の関係というのは守らなければいけません。でも現場に来ると、みんな勝ちたいと思っているし、少しでも前でフィニッシュしたいという気持ちは同じです。


──つまり、レッドブルもそのことは理解していて、昨年と同等かそれ以上にコミュニケーションをスムーズにしていたという感じですか?


本橋TD:はい。それが僕に課せられた今年の仕事のひとつかなと思っていましたし、それがメインだと思っていました。テクニカル面はさくらのHRCのスタッフがいますし、いままで一緒にやってきた仲間なので信頼していました。あとは現場で自分が最終的な判断をするだけでした。でも、現場でのコミュニケーションや協力関係は、これまでと同じメンバーとはいえ、難しいところはありました。ですのでそこをクリアにして、昨年以上のクオリティを目指してきました。

F1インタビュー
レッドブルでセルジオ・ペレス担当のPUエンジニアを務める湊谷圭祐エンジニア(中央)と菅原裕システムエンジニア(左端)と、レッドブルのコンストラクターズ選手権獲得を喜ぶ本橋TD


──シーズン開幕前に浅木泰昭(HRC四輪レース開発部部長)さんから言われたことは?


本橋TD:いえ、浅木さんもみんなを信用してくれて、それぞれのやり方に任せてくれていました。もちろん、『頑張れよ』と激励してくれていましたよ(笑)。


──細かい指示は特になかった?


本橋TD:はい。若手に任せるというところがホンダらしいと言えばホンダらしいです。浅木さんの存在は大きいですが、その周りを僕らが埋めていけるように取り組んでいました。


──田辺さんからはシーズン開幕前や、日本GPのときに何かアドバイスはありましたか?


本橋TD:アドバイスはちょこちょこありました。でもこれまでも言葉よりも行動で教えてくれていた人だったので、『頑張れよ』程度だけでしたね。


──言葉では特に何もなかった?


本橋TD:節目節目にはアドバイスをもらっていました。ですが基本的には、『俺の背中見てきただろ?』と。僕は田辺さんとは長いので(笑)。(注:本橋エンジニアは第3期時代からジェンソン・バトンの担当として田辺さんと組んで仕事をしていた)


──メールや電話でのアドバイスは?


本橋TD:たまにありました。ただ田辺さんも僕らのことを信用してくれているので、引いた位置から見守ってくれているような感じでした。逆にそういったことで僕たちを信用し、期待してくれていることを実感しました。もちろん、それがプレッシャーにもなりましたが、励みにもなっていたので、ありがたく思っています。これからも引き続き頑張っていかなければいけないな、と思います。

F1インタビュー
表彰式直後、本橋TDはレッドブルでチーフメカニックを務める吉野誠(HRE-UKマネージャー)とガッチリ握手


──2006年のバトン優勝時は本橋さんは現場にいなくて、田辺さんから電話で優勝の報告を受けたと聞いています。今回は逆の立場になりましたが、田辺さんにどんなメッセージを伝えたいですか?


本橋TD:おめでとう、ではなく、やりましたね!ですね。まだ仲間だと思っていますし、田辺さんの息吹を感じながらやっていますからね。ただそれは田辺さんだけではなく、さくらのHRCのみんなに対しても同じです。やったよね俺たち、という感じですね。みんなにおめでとうですし、みんなにありがとうです。またここから次のステップを目指してやっていこうという感じです。


──田辺さんは1991年にコンストラクターズチャンピオン獲得の経験がありますが、本橋さんをはじめ、ここにいるホンダのメンバーにとってコンストラクターズチャンピオンは初めての経験です。初めて獲ってみて、どんな気持ちですか?


本橋TD:うれしいですが、まだ実感が湧いていないのが事実です。さまざまなことが一瞬にして思い浮かぶというのは、こういうことかと感じています。


──おめでとうございました。



(Masahiro Owari)


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