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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:日本GP】入賞につながらなくても大きな成長が見えた。新チームメイトに負けるな!

2022年10月19日

 2022年、アルファタウリの角田裕毅は、F1での2シーズン目を戦っている。昨年に続き、エディ・エディントン氏が、グランプリウイークエンドを通して角田の動きをくまなくチェックし、豊富な経験をもとに、彼の成長ぶり、あるいはどこに課題があるのかを忌憚なく指摘する。今回は2022年F1第17戦シンガポールGP、第18戦日本GPについて語ってもらった。


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「ラッキーなことが起こるなら、アレックス・アルボンの方に起こればよかったのに」と、今はウイリアムズに関わっている旧友が言った。F1日本GPの数時間後の会話だ。まあ、彼の気持ちも分かる。せっかくアルボンが得意としているレースコンディションになり、大量得点を期待していたのに、アルボンはアクシデントが原因で1周目にリタイアしてしまったのだ。


 可哀想なニコラス・ラティフィにちょっとひどすぎやしないだろうか。リタイアのアルボンに対して、ラティフィはしっかり走り切ってポイントを稼いだというのに、そんな風に言われてしまうとは。だが、もはや信頼していないドライバーを契約上の義務だけで走らせるという経験は私もあったから、友人の気持ちも分からないではない。


 目の前のレースリザルトを見ただけでは分からないことはたくさんある。何を言いたいかというと、シンガポールと日本で角田裕毅はノーポイントだったが、彼は実は非常に良い仕事をしていたということだ(ほら、このコラムのテーマにつながった)。


 彼は予選で一貫して速さを示していた。難コースのマリーナベイ・サーキットに初めて挑み、ピエール・ガスリーに迫るペースを見せた。Q1では勝ち、Q2では0.3秒遅れたが、しっかり10番グリッドを確保した。この非常にトリッキーなサーキットで初めて走ったドライバーとしてはベストリザルトだ。

角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第17戦シンガポールGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 レースではトップ10圏内を走り続けた後、21周目に小さなミスを犯してポジションを失った。それでもポイント獲得のチャンスはまだあった。ところがチームがギャンブルをして、33周目にガスリーと角田のふたりを呼び寄せ、スリックタイヤに交換した。その時、路面は非常に難しいコンディションで、インターミディエイトを履いたルイス・ハミルトンですらコースオフしたほどだった。アルファタウリがどれだけ勇敢でリスキーな判断をしたかが分かるだろう。裕毅はこのストリートサーキットでウエットからドライへと変化するコンディションに慣れていないのだからなおさらだ。


 そうして私の嫌な予感が当たった。裕毅はウォールにヒットし、リタイアしてしまったのだ。ほらみろ。実質的なルーキーを、まだ湿っていて低温のコースに、冷えたスリックタイヤで送り出すとは、あいつら何を考えているのだ。そもそもあのチームはルーキーを育てるためだけに存在しているのに、ベテランドライバー向けのような指示を出すんだから、まったく。


 だがいつまでもぼやいている時間はない。翌週は日本GPだったからだ。そう、私は鈴鹿を新しいF1マシンが走るところをどうしても見たくて、日本行きを決めていたのだ。家族からは隔離期間がどうとか不満が出ていたが、これは絶対に譲れない。水曜午後には名古屋に到着し、サーキットに直行した。


 鈴鹿での角田を見てまず感じたのは、彼が非常にうまくプレッシャーに対処しているということだった。その成熟ぶりに驚いたのは私だけでなく、周囲の人々も、彼が冷静でまるで大人のように振る舞っていることにびっくりしたと口々に言っていた。


 一週間前のシンガポールでは、彼はまだ、ヘルムート・マルコが言うところの“問題児”に見えた。だがホームグランプリで、何万人ものファンからの応援を受けて、裕毅は自信を得たようで、落ち着いて週末に取り組んでいた。

2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)

 チームメイトのガスリーの方は、離脱が近いドライバーによくあることだが、今シーズン末で出ていくことが決まった後、チームに対して怒ったり文句を言ったりすることが増えている。日本GP予選でガスリーはQ1で落ちてしまったが、角田はQ2にしっかり進み、自分にできる最大限の仕事をした。


 レース序盤にはポイント圏内を走行。しかし早々にスリックに交換したセバスチャン・ベッテルとラティフィの後ろにポジションを落としてしまった。


 角田は20周目に再度ピットストップしたことで、さらに不利になった。トップ10から24秒遠ざかったのに8周しか残っていなかったのだ。13番手まで挽回したところで時間切れとなった。あと2周早くピットストップしていたら、ポイント圏内まで戻れたことだろう。


 残念ながらホームグランプリで入賞することはできなかったが、レース中の角田は冷静沈着で、非常にプロフェショナルだった。今のこの成熟ぶりを維持し、今シーズンのうちにさらに進歩して、来年、新しいチームメイトに先制パンチを浴びせてほしいものだ。


 来年入って来るニック・デ・フリースは、私が見たところ、非常に頭が良く、政治力に長けていて、抜け目のない人物だ。アルファタウリを自分のチームにするつもりでやって来るに違いない。なかなか手強そうだぞ、裕毅。

2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)


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筆者エディ・エディントンについて


 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


レース

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