ジョーダンのシートを失い、F1残留への道が閉ざされてしまったヨス・フェルスタッペンだが、彼のスポンサーであるトラスト社とジョーダン・チームはここにきて非難の鉾先をフェルスタッペンのマネージャーに向けている。
まずジョーダンF1チームが、次にオランダのPC周辺機器メーカーのトラストが、フェルスタッペンがシートを得られなかったのは、元F1ドライバーで現マネージャーのヒューブ・ロッテンガッターのせいだと非難する声明を出した。ジョーダンがウェブサイトに掲載した声明は以下のとおり。
『ジョーダン・グランプリは、ヨス・フェルスタッペンとの交渉についてありのままの記録をここに書いてみたい。
チームは、トラストのマイケル・ペリドンとムエルマンスグループのハリー・ムエルマンスとの交渉を円滑に進めていた。しかし、この重要スポンサー2社への我々の努力も、ヨス・フェルスタッペンのマネージャーであるヒューブ・ロッテンガッターの非妥協的態度により台無しになった。彼はいつでも、チームにスポンサーを紹介すると法外な手数料ととんでもない報酬を要求してくる人物だ。また同時に、シート合わせや体力測定などチームからフェルスタッペンへの要請事項がことごとく拒否された。
フェルスタッペンをF1に残すための機会を提供しようというトラストとムエルマンス両社の信任が、彼の代理人のために流れてしまうとは、嘆かわしいとしか言いようがない』
エディー・ジョーダンはこう語る。「とても残念な結果になってしまった。常に前向きに接してくれたスポンサーたちと十分信頼しあい、合意できていたのだが。F1にとって価値ある人々が代理人のためにこんな目に遭うとは、F1にとってもいいことではない」
またトラストも自社のウェブサイトに、“トラストとヨス・フェルスタッペンとの交渉は法外な要求により決裂”として、次のような報道資料を掲載した。
『トラストと、ヨス・フェルスタッペン代理人、エディー・ジョーダン、そしてチームのコマーシャルディレクターであるイアン・フィリップスの間で時間をかけ徹底した交渉を重ねてきたが、ドライバー契約の中で法外な要求が出されたため話し合いは中止される結果になった。これによりジョーダン・グランプリ・チームはイタリア人のジョルジォ・パンターノをセカンドドライバーに起用することになった』
トラストはしかし、ドライバーとしてのヨスを今後も支援していきたいと話す。「支援は続けたいが、今のマネージメントではだめだ。もし今シーズン中にシートを得られるいかなる可能性でも生じれば、トラストはそのチャンスを100パーセント全力で活かし、ヨス・フェルスタッペンの代理人の法外な要求のせいで機を逃すようなまねはしない」と、トラストCEOのペリドン氏。
トラストはしかし、モータースポーツのスポンサーとなることを望んでおり今もさまざまな可能性を調査中だ。「そう時間をかけずに成長しF1に行ける優れた人材がオランダ国内にある。しかるべきスポンサーとマネージメントが必要だ」とトラスト。
いちドライバーとの交渉決裂の事情をこれほど詳細に両者側が公表するのは異例なことだが、恐らく、フェルスタッペンの根強いファンが長期にわたって応援を続けているだけに、ジョーダンもトラストも、今年フェルスタッペンが走れない理由を釈明する必要を感じたものと思われる。
さて問題のヒューブだが、フェルスタッペンの個人サイトでこう語っている。「トラストの声明とジョーダンのウェブサイトを見て、私はまったく唖然としてしまった。これに関しては私は何も語りたくない」
手にしかけていたシートを失うことはフェルスタッペンはこれが初めてではなく、2001年シーズンの開幕直前にも、トム・ウォーキンショーのオレンジアロウズで、ハインツ−ハラルド・フレンツェンに取って代わられたことがあった。
フェルスタッペン当人はまだ望みを捨てていないという。「とてもがっかりしたが、まだ可能性は探れる」と個人ウェブサイトで語る彼。「全ドライバーのシートが落ち着くまで待ちたい。毎シーズン、何チームかで移動があるからね。僕としては、集中し、身体を作り、すぐにも乗れ、速く走れるように備えておかないといけない。僕のスポンサーたちは復帰を望んでくれている。F1の世界をもっと知りたいし、さよならしたわけではない。才能と経験があり資金的にも魅力あるドライバーがまだ残っていることを、全てのチームオーナーたちに知ってもらいたい。シーズンはまだ始まっていないし、もちろんまだ終わってもいないからね!」