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アルファタウリ&HRC密着:「初日からタイヤにダメージがあった」状況に応じた細かな変更を施すも、鈴鹿での入賞は叶わず

2022年10月11日

 タイトル連覇を決めたレッドブル陣営が歓喜に沸く一方で、アルファタウリのスタッフたちはガレージで淡々と撤収作業を行っていた。期待されたF1第18戦日本GPだったが、角田裕毅13位、ピエール・ガスリー18位完走と、いずれも満足のいく結果を出すことはできなかった。


 同じようにウエット路面だった初日フリー走行でも、時おり速さは見せたものの最終的に角田14番手、ガスリーは19番手に終わっていた。さらに好天に恵まれた2日目は、今度は原因不明のブレーキトラブルに見舞われた。それでも角田はなんとかQ2に進めたが、ガスリーは17番手が精一杯だった。


「初日からタイヤのダメージは見られていましたね」


 そう語るのは、今季からレース現場でのホンダスタッフ全体を統括する本橋正充エンジニアだ。昨年までの田辺豊治テクニカルディレクターの役割を継いだ形だが、今まで同様アルファタウリ側のチーフエンジニアでもある。2018年以来、このイタリアチームといっしょにやって来ただけに、苦しい現状がいっそう気になるようだ。


「今回に限らずですが、一発の速さはそこそこではあるものの、ロングランで弱さが出ている印象です」

角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)


 やはり今季のAT03は全体的なダウンフォース、特にフロントのそれが十分に出ていないということか。ところが本橋エンジニアは、「状況によって、変わったりする。そこが難しいところです」という。


「一概に、こういうマシン特性だと言いにくい。同じ週末、同じサーキットでも、マシンバランスが日によって変わったりする。新しくなったクルマと新しい18インチタイヤとを、依然としてうまくマッチングできていない。そんな印象です」


 一方で他チームに比べて、大きなアップデートが入っていない影響も否定できないとも言う。今季最初の空力アップデート導入は、7月下旬のフランスGPのタイミングだった。しかし思ったほど戦闘力は上がらなかった。前戦シンガポールからは、フロントの食いつきを少しでもよくしようと、新たな仕様のフロントノーズも投入された。しかしあくまで小規模なアップデートだ。


「結局は、クルマとタイヤへの理解が進んでいないことが、一番の問題なんだと思います。そんなふうに車体側が苦しんでいるときは、たとえばドライバビリティとかで救えないかという努力は常にやってます。クルマに寄り添うというか、状況に合わせたセッティング変更は昨年までよりは細かくやってますね」


 決勝レースでのガスリーは戦闘力不足に苦しんだだけでなく、1周目にクラッシュしたカルロス・サインツ(フェラーリ)が跳ね飛ばした看板パネルがもろに飛んできて、マシン前部を破損。さらにセーフティカー(SC)中には、コース脇に出ていた重機とあわや接触という目にもあった。

2022年F1第18戦日本GP カルロス・サインツ(フェラーリ)のクラッシュで落ちた広告パネルを引きずるピエール・ガスリー(アルファタウリ)


 母国の先輩として尊敬し、その背中を追ってきたジュール・ビアンキが2014年に同じ鈴鹿、同じ悪天候下の状況で致命傷を負っただけに、ガスリーの激昂は十分理解できる。


 一方で海外メディアのなかには、このニアミスに関して鈴鹿サーキット側の責任を問う声も出た。しかしビアンキの事故以来、鈴鹿サーキットではマシンが1台でも走行している間は、重機をいっさいコース側に出さない措置を徹底してきた。


 今回、SC中に重機が出て行ったのは、レースディレクターの指示によるものであり、マーシャルたちが葛藤を感じながら作業していたであろうことは想像に難くない。


 F1スポーティング規約上は、確かにFIAの下したこの措置は間違っていなかった。しかしターン12周辺はエスケープゾーンが極めて狭く、あの時点での視界はほぼゼロだった。はたしてコースレイアウトやコースコンディションを見極めた上での、適切な判断だっただろうか。根本的な規約変更の必要性も含め、FIAの柔軟な対応が求められるところだ。



(取材・文 柴田久仁夫)


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