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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】最悪のタイミングでSC導入。不運が続くも9位入賞、勢力図変化も実感
2022年4月6日
2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。今年で2回目となるサウジアラビアGPでは、ミック・シューマッハーが予選で大きなクラッシュを喫した。幸いシューマッハー自身に大きな怪我はなかったが、マシンは大破。決勝レースを欠場することになった。一方ケビン・マグヌッセンは2戦続けてのポイントを獲得したが、もっと高い順位での入賞が見えていただけに悔しい結果となった。そんなサウジアラビアGPの現場の事情を小松エンジニアがお届けします。
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2022年F1第2戦サウジアラビアGP
#47 ミック・シューマッハー 予選14番手/決勝出走せず
#20 ケビン・マグヌッセン 予選10番手/決勝9位
昨年の初開催から約4カ月ぶりのサウジアラビアGPでした。金曜日にはサーキット近郊の石油関連施設でテロがあり、グランプリを続行するかどうかについての話し合いがありました。結局FP2は開始が15分遅れ、金曜の夜には4時間もドライバーやチーム代表などの間で話し合いがもたれましたが、サウジアラビア政府が安全を確保したということでそのまま続行となりました。
さて、予選ではミックが大きなクラッシュをしました。クルマがぶつかったのはコンクリートウォールで、33Gもの衝撃がありました。よくミックは気を失わなかったなと思います。このような大きなクラッシュが起きた時には、ドライバーの安全が確認されるまではクラッシュのリプレイや大破したクルマの様子は国際映像には映りません。それは僕たちチームに対しても同じです。ですからチーム側はメディカルセンターと直接やり取りをしてミックの様子を確認しながら、チームスタッフに伝えていました。
予選後にガレージに戻ってきたミックのクルマを見てまず受けた印象は、サイドインパクトストラクチャーがホントによく機能したなということです。あのようにサイドインパクトストラクチャーが潰れているのを見るのは、シーズン前のクラッシュテスト、実験の時ぐらいです。ですから実際の事故で、それが設計どおり機能してシャシー、ひいてはドライバーをちゃんと守ったというのを目の当たりにして改めて安全規格の水準の高さを確認できました。シャシータブ自体はこれからイタリアの工場で検査しますが、大きな問題はなく修復してまた問題なく使えるレベルだと認識しています。エンジンの方も大丈夫なようなので、次戦オーストラリアのフリー走行でまた使う予定です。
実はサウジアラビアから貨物を送り出すというのが結構大変で、ミックのシャシーをサウジアラビアから直接イタリアのファクトリーに送ることができませんでした。ですからこのままオーストラリアに持って行き、その後イタリアに送ることになります。なんとも非効率な話ですが、これも様々な規制があるなかで全世界を周るF1では珍しくない問題です。オーストラリアではミックは違うシャシーを使うことになりますが、第4戦エミリア・ロマーニャGPまでにはサウジで使ったシャシーの修復を終える予定です。
ミック自身ですが、彼は大丈夫です。土曜日のうちにメディカルチェックをすべてパスしてホテルに戻り、日曜日にはサーキットに来て元気な姿をチームに見せてくれました。それよりも心配なのは精神面ですね。今年は初めて競争力のあるクルマがあって、初めて速いチームメイトがいて、自分のなかでもプレッシャーは大きいはず。前にも書きましたが、彼はいろんなことを考えすぎてしまうところがあります。もっとシンプルにできるところから一歩一歩進んで行けばいいのになと感じることもあります。まずは本人のやりたいようにやらせてあげながら、少しずつ適当な場面でアドバイスしながらやっていこうと思っています。
■もしSCがなければ、もし2回目のVSCがSCだったら……6位入賞も見えた決勝レース
開幕戦のバーレーンに続き、ケビンはまた素晴らしい仕事をしてくれました。金曜日はクルマの問題があり、FP1は0周、FP2でも実際には4周しかアタックできませんでした。ケビンはサウジは初めてですし、シミュレーターでも走っていません。決して簡単なサーキットではないとは思いますが、そんな極度の走行不足のなかでも2戦続けて、予選Q3まで進んでくれました。
しかし、さすがに高速コーナーの続くこのストリートコースで、1年間のブランクは隠せず、Q3に入る頃には完全に首が限界にきていました。ですからQ3でも本当はちょっと違った走り方をしたかったのですが、走行距離を抑えるために最後は1周のみのアタックにしました。それでも首は持たず、Q2で中古タイヤで出したタイムを上回ることはできませんでした。その結果、予選は10番手。本人もクルマの性能からすればもっと上に行けたと確信していたので、残念な結果となりました。それでもミックのクラッシュによる赤旗中断後に、中古タイヤでQ3進出をしてくれたことは評価に値すると思います。
決勝の戦略については、1ストップとなるのは明らかでした。しかし、ハードタイヤかミディアムタイヤのどちらでスタートするかは日曜日まで悩みました。
もしケビンがミディアムでスタートし、後方にハードでスタートするドライバーが多かった場合は、彼が17周目くらいでピットストップするとそのハード勢の後ろでコースに戻り詰まることになります。それに第1スティントではどうしても前のクルマに詰まってしまいます。そうなるとグリップが減って、ミディアムの持ちがより一層悪くなる心配がありました。
逆にもしハードでスタートした場合は、スタート直後の1コーナーの飛び込みが心配です。ここさえ切り抜ければ前のミディアムタイヤ勢がピットインした後にフリーエアーで本来のペースで走れる状況を作ることが可能です。ケビンにも相談すると、彼は自信満々で「1コーナーのことは心配するな」と。そして「ぜひフリーエアーで走れる可能性を作ってほしい」とのことだったので、ハードでのスタートに決めました。このような会話からも、以前とは見違える程のケビンの成長がうかがえます。
実際、有言実行でターン1、2は上手く切り抜けてくれましたし、さらにはピエール・ガスリー(アルファタウリ)を抜いて1周目は9番手で戻ってきました。そして第1スティントのペースもよく、危なげなく予定通りのレースを進めていました。そうしているうちにガスリーやエステバン・オコン(アルピーヌ)のタイヤの性能が徐々に落ちてきたので、ミディアム勢がピットインして前が空くのを待つのみでした。
しかし、ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)が15周目に最終コーナー立ち上がりでクラッシュし、16周目にはセーフティカー(SC)が出動。ミディアムスタート勢にとっては完璧なタイミング、逆に僕らにとっては最悪のタイミングでした。これはどうしようもできないので、とにかくSC後にはなんとかハードタイヤで攻めて少しでも後続との差をつけることしかできることがありません。
その後、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)とダニエル・リカルド(マクラーレン)が36周目にストップしましたが、この際は逆にSC導入になりませんでした。リカルドが止まった場所を考えるとピットエントリーが閉ざされる可能性も高かった(実際にそうなりました)ので、悩みましたがVSCを待たずにケビンをピットインさせました。
ただケビンがピットストップの再に通常の位置よりも行きすぎて止まったので、タイヤ交換に4.7秒かかり、ランス・ストロール(アストンマーティン)とアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)の後ろでコースに戻ることになりました。これは痛かったです。リスタート後にで抜いたもののタイムロスになりました。最後はあれだけガスリーに追いついたので、ピットストップでミスがなければ、ガスリーを抜いて8位でフィニッシュできていたと思います。
もしSCがなければ、もし2回目のVSCがSCだったら6位だったのに……と考えるとすごく悔しいですが、16周目にSCが出る可能性なんてわからないですからね。すごくアンラッキーだったけれど、9位で残念だと思えるのはある意味いいことです。この2戦は性格の異なるふたつのサーキットで5位と9位という成績なので、このレベルの速さがあるというのは嬉しいです。たとえばケビンとルイス・ハミルトン(メルセデス)とのタイムを比べても、ハードの時はさすがにハミルトンの方が速くて、SC後には抜かれてついていけなかったですが、ミディアムを履いたVSC後は同じくらいかケビンの方がコンマ2秒ほど速かった。メルセデスとレースをしていることが信じられないくらいです。
やはり今年のレギュレーション変更でF1の勢力図は大きく変わりましたね。昨年を棒に振って今年にかけていたので、今年は少なくとも2、3チームと戦えるようにしなければと考えていて、その2、3チームがウイリアムズ、アルファロメオ、アストンマーティンあたりかと予想していました。ところが予想以上にアストンマーティンとウイリアムズが遅くて、アルファロメオは思っていたより速いです。特に安定して速いのがバルテリ・ボッタスですね。現時点ではウチに一番近い速さを持っているようです。
またマクラーレンがここまで苦労するのも想定してませんでした。アルピーヌも速いですし、彼らはいいドライバーをふたり抱えているので手強い存在です。これからは開発合戦になり、またいつ大きく勢力図が変わるか分かりません。ファンの方々にとってはとてもおもしろいでしょうし、F1全体にとっても非常にいいことだと思います。
開幕2連戦を終えましたが、まだまだ信頼性の問題はすべて解決できたわけではありません。僕が心配しているのは、ひとつ問題を解決したら次に何が壊れるのかが見えないことです。プレシーズンテストではトップチームが4000km走っているのにハースは2000kmしか走っていないので、もう2000km走って出し切るはずだった問題を見つけられておらず、この2戦でそれをやっています。とにかく走らないといけないのですが、サウジの金曜にケビンのクルマに問題が起きたように、まだまだトラブルが起きる可能性があるというのが現状です。これを1日でも早く解決して、もっともっと性能にこだわっていかないと今年は一気に抜かれる可能性が高いので、ここ数戦が正念場になります。まず次戦、3年ぶりのオーストラリア、ダブル入賞を狙います。
(Ayao Komatsu)
関連ニュース
11/29(金) | フリー走行 | 22:30〜23:30 |
スプリント予選 | 26:30〜27:14 | |
11/30(日) | スプリント | 23:00〜24:00 |
予選 | 27:00〜 | |
12/1(日) | 決勝 | 25:00〜 |
1位 | マックス・フェルスタッペン | 403 |
2位 | ランド・ノリス | 340 |
3位 | シャルル・ルクレール | 319 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 268 |
5位 | カルロス・サインツ | 259 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 217 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 208 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 63 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 35 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 608 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 584 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 555 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 425 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 50 |
7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 49 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |