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【全ドライバー独自採点/F1第1戦】完璧な戦いをしたルクレールと未熟さが残るフェルスタッペン
2022年3月25日
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。
2022年F1第1戦バーレーンGPでは、シャルル・ルクレール優勝、カルロス・サインツ2位と、フェラーリが1-2フィニッシュを達成。レッドブルのマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスが衝撃的なリタイアを喫し、ハースのケビン・マグヌッセンが大躍進を遂げるなど、驚きの要素が多数あった週末だった。バーレーンでのそれぞれのドライバーたちの戦いぶりを、バスコンセロス氏が振り返る。
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■メルセデス
ルイス・ハミルトン:評価 9/10
予選5番手/決勝3位
唯一、良くなかったのは、なんとしても表彰台を狙いたいという思いからファーストスティントでプッシュしすぎて、1回目のピットストップをかなり早い段階で行わなければならなかったことだ。それを除けば、最上級の走りであり、予選でも決勝でも余裕でチームメイトのジョージ・ラッセルを打ち負かした。
決勝では決して諦めることなく戦い続け、セーフティカーによってセルジオ・ペレスに追いつくと激しくプッシュした。結局ペレスがトラブルでリタイアしたため、ハミルトンはオーバーテイクすることなく3位を手に入れた。
ジョージ・ラッセル(メルセデス):評価 6/10
予選9番手/決勝4位
レッドブルのダブルリタイアにより4位に繰り上がったが、それまではトップ5を脅かす存在ではなかった。
予選ではハミルトンに勝とうとチャレンジしたものの9番手に終わった。決勝スタートですぐさま順位を上げたが、レース終盤、セーフティカーが出動し2台ともピットストップを終えた段階で、ラッセルはハミルトンより約15秒後方だった。その後は順位をキープしてフィニッシュ。この週末の流れは、彼にとってショックなものだったに違いない。
■レッドブル
マックス・フェルスタッペン:評価 8/10
予選2番手/決勝19位(リタイア)
いつもどおり、驚異的なスピードを発揮し、勝利への強い執念を感じさせる走りだった。しかしF1初タイトルを獲得した後も、彼のアプローチは変わっていないようだ。レースの最初から全力で攻めていき、タイヤとブレーキをあっという間に消耗させた。バトルでも、今回に関しては、シャルル・ルクレールの方が一枚上手だった。
もちろん、リタイアは不運だったが、全体的に見て、ワールドチャンピオンに期待される成熟さは見られず、早急にプッシュしすぎる傾向にあった。
セルジオ・ペレス(レッドブル):評価 6/10
予選4番手/決勝18位(リタイア)
フェラーリ2台との戦いにおいてフェルスタッペンが必要とするサポートを提供できなかった。オープニングラップで順位を落とし、4番手に戻ってきた後も、カルロス・サインツについていくのが精一杯で、表彰台争いに加わることはなかった。
予選がスムーズにいかなかったことで、決勝に新品タイヤが残っていなかったことも痛かった。結局はフェルスタッペン同様、レース終盤、マシントラブルによりリタイアという結果に終わった。
■フェラーリ
シャルル・ルクレール(フェラーリ):評価 10/10
予選1番手/決勝1位
プラクティスでは2度、限界を超えてターン11で飛び出すシーンもあったが、今回のルクレールはまさに完璧そのものだったと言っていいだろう。
スタートをうまく決め、フェルスタッペンとのバトルでは、3度抜かれながらもその都度、冷静に対処、すぐさま抜き返した。ライバルが限界を超えてプッシュしてきたとしても、接触を恐れず戦うという姿勢を見せた。
バトルのなかで一時的にフェルスタッペンが前に出た瞬間もあったが、基本的にはルクレールはレースをしっかりコントロールし、深刻な脅威にさらされることはなかった。
カルロス・サインツ:評価 8/10
予選3番手/決勝2位
最後までベストなマシンバランスを見つけることができなかったが、そんななかで2位を獲得、最終的に素晴らしい形で週末を締めくくった。
快適に感じていないマシンで、予選ではQ3の途中までトップに立っていたことが、彼の速さを証明している。しかし決勝では、レッドブル1台にフェラーリ2台で立ち向かうため、サインツは遅い方の戦略で走ることになり、それも彼のレースに影響した。
後方のペレスを寄せ付けず、2番手を走るフェルスタッペンがトラブルに見舞われたため、サインツは2位を手にすることとなった。
■マクラーレン
ランド・ノリス:評価 5/10
予選13番手/決勝15位
他チームと逆の戦略を採って、ミディアムタイヤでスタートしてみたが、結局はマシンにポイントを争う力がないことが分かり、ノリスは気落ちしたのではないだろうか。
予選では素晴らしい仕事をしたが、決勝ではミディアムタイヤでスタートしたために1周目に順位を落とし、入賞争いから遠ざかった。その後のタイヤ戦略も首を傾げるようなもので、ファーストスティントを非常に長く取った後に、ピットストップ後、ダニエル・リカルドより後ろの最後尾に落ちてしまった。
ダニエル・リカルド:評価 5/10
予選18番手/決勝14位
Covid-19に罹患した後、まだ体調が完全には回復していない状態で出場したので、やはりエネルギーが不足している様子で、多少精彩を欠いていた。
リカルドは、体調が完璧でない上に、バーレーンテストでは一度も走ることができなかった。しかしそれを考慮しても、予選Q1でノリスから0.7秒遅れというのはあまりに差が大きい。
それでも決勝では 持ち前のレースのうまさによって、ミディアムタイヤスタートによる不利を乗り越えて、後方から抜け出していった。ノリスよりピットストップのタイミングが良かったことで、最終的にはひとつ上でフィニッシュした。
■アルピーヌ
フェルナンド・アロンソ:評価 6/10
予選8番手/決勝9位
ほとんどのセッションでエステバン・オコンより速く、予選Q3にも進出した。しかし決勝では早い段階でタイヤを使いすぎたことで、チームからオコンを前に出すよう指示された。その後も上位に浮上するチャンスをつかめず、タイムペナルティを受けたオコンよりも後ろでフィニッシュした。
アロンソの計画、いわゆる“EL PLAN”は、今シーズン、あまり良いスタートを切ることができなかったが、2ポイント獲得できたのは悪くないだろう。
エステバン・オコン:評価 7/10
予選11番手/決勝7位
FP1で新パッケージのマシンが破損したため、旧仕様のサイドポッドで走らなければならなかった。その影響もあってか、予選ではQ3進出をわずか0.065秒差で逃した。
しかしレースではアロンソよりも速く、ファーストスティントではチームオーダーによりアロンソの前に出たが、サードスティントでは楽にアロンソを追い抜いた。1周目にミック・シューマッハーをスピンさせたことでタイムペナルティを受けたが、しっかり挽回。アルピーヌにとってあまり良い流れでなかった週末に、ポイントを持ち帰った。
■アルファタウリ
ピエール・ガスリー:評価 7/10
予選10番手/決勝リタイア
FP1でトップに立ってみせたのは驚きだったが、その後のプラクティスではトップ10圏外に沈み、厳しい状況であることが分かってきた。予選ではQ3に何とか進出したものの10番手。決勝スタートでふたつ順位を上げ、ポイント圏内を走っていたが、トラブルでリタイアしなければならなかった。
ケビン・マグヌッセンより早くピットインしたことで、ほんの短い間だけ彼の前を走ったものの、アルファタウリのマシンには残念ながらハースやアルファロメオと戦える力はなかった。
角田裕毅:評価 7/10
予選16番手/決勝8位
トラブルでFP3で全く走れなかったことが響いて、予選は0.024秒差でQ2進出を逃した。
決勝オープニングラップに4つポジションを上げ、バルテリ・ボッタスを長時間抑え続けた。アルファロメオより明らかに遅いマシンだったことを考えると、この防御のドライビングは素晴らしかった。
また、フェルナンド・アロンソを見事にオーバーテイク、1年前のデビュー戦を思い起こさせるシーンもあった。セーフティカー後にポイント圏外に落ちたが、ミック・シューマッハーを抜き、レッドブル勢のリタイアにより、8位でフィニッシュした。
■アストンマーティン
ランス・ストロール:評価 4/10
予選19番手/決勝12位
17カ月以上もコクピットから離れており、2022年型マシンに乗るのはこれが初めてだったニコ・ヒュルケンベルグに予選で敗れるという屈辱を味わったストロール。しかし、レースでは順位を上げて12位で完走し、多少プライドを取り戻すことができた。
ストロールは、ヒュルケンベルグが9周目にミスをした際に前に出ることができ、アレクサンダー・アルボンやマクラーレン勢よりも優れた戦略を選んだことでいくつか順位を上げたが、ポイントを狙える位置には届かなかった。
ニコ・ヒュルケンベルグ:評価 6/10
予選17位/決勝17位
予選17番手から最下位フィニッシュというのは特筆すべき結果ではないが、2020年10月以来レースに出ておらず、AMR22の知識も全くないという状況を考えると、素晴らしい仕事をしたといえるだろう。予選ではストロールより上位を獲得、決勝序盤のターン1で小さなミスをするまで、ストロールの前を走っていた。
レースを戦い抜けるだけの体力が備わっておらず、タイヤ戦略の失敗により、ひどく苦労し、実質的に最後尾フィニッシュとなった。チームは、タイヤがだめになってからも3周から4周ヒュルケンベルグをステイアウトさせるという判断ミスをした。
ヒュルケンベルグは今回もまた、F1レギュラードライバーにふさわしい能力の持ち主であることを証明してみせた。
■ウイリアムズ
アレクサンダー・アルボン:評価 8/10
予選14番手/決勝13位
ウイリアムズは昨年でラッセルを手放すことになったものの、アルボンを獲得したことで、うまくその穴を埋めることができたようだ。
予選では僅差ながらQ2進出を果たし、14番グリッドを獲得した。レースの1周目も素晴らしく、すぐさま3つポジションを上げた。だが、マシンにポイントを争うほどの速さがなかったために、非常に良いドライビングをしていたにもかかわらず、ポジションを落としていった。
最後のピットストップのタイミングが悪く、ストロールをとらえられなかったが、新しいチームメイトには圧勝してみせた。
ニコラス・ラティフィ:評価 4/10
予選20番手/決勝16位
アルボンの初戦のパフォーマンスから考えると、ラッセルがいなくなった後も、ラティフィは対チームメイトの戦いでは苦労しそうだ。
予選は最後尾という悲惨な結果に終わり、レースでは他のドライバーがトラブルに見舞われたり、タイヤ戦略を間違えたりしたことで、多少順位を上げたものの、今回急きょマシンに乗り込んだヒュルケンベルグのひとつ上でフィニッシュするにとどまった。アルボンとは全く勝負にならず、あっという間にチームリーダーの座を奪われた感がある。
■アルファロメオ
バルテリ・ボッタス:評価 8/10
予選6番手/決勝6位
FP1で走れないという不利な状況のなか、予選ではセンセーショナルな走りで6番手を獲得した。決勝はクラッチの問題によりスタートで出遅れ、14番手まで後退。そのままポイント争いから脱落してもおかしくはなかったが、一貫したラップタイムで走り、タイヤをいい状態に保ち、慎重なオーバーテイクを繰り返した結果、レッドブルのダブルリタイアにより6位に繰り上がった。8点に値するレースだった。
周冠宇:評価 7/10
予選15番手/決勝10位
F1デビュー戦での入賞を成し遂げ、1ポイントをつかんだ。クラッチの問題でスタートを失敗し、いったん最後尾まで落ちた後、最終コーナーでリカルドを抜いた。1周目がうまくいっていれば、決勝結果はさらに良いものになっていただろう。
後方から順位を上げていき、ボッタスのすぐ後ろに追いついた。周はボッタスとほぼ同じラップタイムで周回、しかしタイヤをボッタスよりも早く使い切ってしまった。この点は、ルーキーにとっては仕方のないことだ。
セーフティカーがなければもっと上位でフィニッシュできたかもしれない。バーレーンGPで彼は、F1ドライバーにふさわしい力を持ったドライバーであることを証明してみせた。
■ハース
ケビン・マグヌッセン:評価 9/10
予選7番手/決勝5位
おとぎ話のようなF1復帰を果たしたマグヌッセンは、予選では“ベスト・オブ・ザ・レスト”の座をかけた戦いでボッタスに敗れたものの、決勝ではそのポジションをつかんでみせた。
スタートですぐに5番手に浮上したが、その後の数周のなかでターン1に向けて小さなミスをしてペレスに抜かれ、ラッセルにもかわされた。しかしその後は堅実に7番手を走行、レッドブル勢のリタイアでふたつポジションを上げた。
今回のマグヌッセンを見ていて、F1デビュー当時の彼を思い出した。何年も競争力のないマシンに乗り続けながら、彼のレーステクニックと強い精神力は衰えなかったようだ。
ミック・シューマッハー:評価 4/10
予選12番手/決勝11位
2022年最初の週末のシューマッハーには少しショックを受けた。土曜プラクティスと予選では、マグヌッセンより約0.5秒遅かった。予選12番手は自己ベストとはいっても、チームメイトは7番手をつかんだことを考えれば、喜ぶわけにはいかない。
決勝オープニングラップでオコンに接触されてスピンした影響で、ポイント圏内に入ることができなかった。セーフティカー出動の際にステイアウトし、10番手に上がり、ポイント獲得を目指したが、ユーズドタイヤで走り切るというギャンブルはうまくいかず、リスタート後に角田をはじめとする数台に抜かれてしまった。
(Luis Vasconcelos)
関連ニュース
11/22(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
11/23(日) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
予選 | 結果 / レポート | |
11/24(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
1位 | マックス・フェルスタッペン | 403 |
2位 | ランド・ノリス | 340 |
3位 | シャルル・ルクレール | 319 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 268 |
5位 | カルロス・サインツ | 259 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 217 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 208 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 63 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 35 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 608 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 584 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 555 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 425 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 50 |
7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 49 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |