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戦略的中で強さを発揮したガスリー。角田は「マシンバランスが崩れてもしっかり完走した」/ホンダ本橋CEインタビュー
2021年11月17日
過去2回のスプリント予選フォーマットでのアルファタウリ・ホンダは、シルバーストンの角田裕毅の10位入賞が最高位、モンツァでは2台ともにリタイアに終わっている。今季最後の第19戦ブラジルGPでのスプリント予選フォーマットの週末も、角田が決勝レース序盤の接触事故で大きく後退した。しかしピエール・ガスリーはレース終盤にアルピーヌの2台を次々に抜いて7位入賞を果たし、コンストラクターズ選手権でも5位アルピーヌとの同ポイントをキープした。
そんなブラジルGPをホンダの本橋正充チーフエンジニアは、「戦略も的中し、強さが発揮できたレースだった」と総括。一方で15位完走に終わった角田については、「あのペナルティはちょっとひどい」「ソフトタイヤの強みを活かした走りができていただけに残念」としつつも、空力バランスが崩れた状態でもしっかり走り切ったことは「角田くんの進化を実感した」と評価していた。
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──スプリント予選では少し苦戦を強いられましたが、それ以外は順調な週末だったのでは?
本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):そうですね。初日フリー走行から比較的いいパフォーマンスレベルで始められて、予選もいい位置につけられた。レースでも今までのような速さを発揮できました。角田選手の事故については、「ん?」と思いましたが、まあ週末を通してよかったと思います。
──ここ数レースはメルセデス、レッドブル・ホンダに次ぐ3番手が定位置になっている印象です。
本橋CE:はい。ただマクラーレンやフェラーリ、アルピーヌも、最近こそ僅差の位置につけられていますが、レースが終わってみるとあそこが弱かった、ここが改善できたという点は少なくない。そこをしっかり潰していければ、もっと楽にというか、戦っていけるかなと思います。
──スプリント予選のスタートでピエール・ガスリーが出遅れたのは、ホイールスピンさせすぎたことが原因ですか?
本橋CE:そうです。スタートが重要なサーキットなのですが、ホイールスピンで順位を落としてしまいました。その後もシャルル・ルクレール(フェラーリ)を抜きあぐねたのは、トラフィックのなかでは無理に攻めることもなかなかできず、乱流のなかでタイヤが予想以上にタレていった。マネージメントが厳しかったですね。やはりフェラーリは、そう簡単には抜かせてくれませんね。
──一転してレースでは、ほぼ完璧な展開だったのでは?
本橋CE:前日に比べて良くなった部分、悪くなった部分それぞれありましたが、相対的には戦略も的中して、しっかりプッシュもできました。強さが発揮できたレースだったと思います。
──路面温度はかなり高かったですが、そこも問題なかった?
本橋CE:それを見越して、初日、2日目のデータをもとに戦略組んでいましたし、攻めたいところではしっかり攻められましたね。
──フォーメーションラップではドライバーふたりともアンダー傾向が強いと報告していましたが、それもレース中のバランス変化を見越したものだったと。
本橋CE:そこも考慮に入れつつ、しっかりとレース展開を見据えた戦略をいく通りか用意したなかで、戦略通りにいけましたね。
──パワーユニット的にも、3日間問題なかったですか。
本橋CE:まったく問題なかったですね。ファクトリー側も含めて準備できて、現場の最終調整もうまくいきました。パフォーマンスも信頼性も、不安なく週末を過ごせました。
──資材の到着がメキシコから遅れたことの影響を受けたのでは?
本橋CE:そこはかなり大変でしたが、チーム側とも協力して危機的な状況を回避できた。リカバリーはできました。
──睡眠時間は、かなり削られましたか?
本橋CE:そこはそうでしたが、そもそも3連戦ですからね(苦笑)。疲れはけっこう溜まっています。あと1戦、身を引き締めてやっていきます。きついですが、そこは全チーム同じ条件ですから。
──メルセデス、特にハミルトンのストレートでの異常な速さは、新品ICE(エンジン本体)によるものなのでしょうか。
本橋CE:そこは使い方もわからないし、これから解析していこうと思いますが、何があれだけの速さを生み出したのか、現時点ではちょっとわからないです。
──一方でマクラーレンのダニエル・リカルドがパワーロスでリタイアを喫している。信頼性の問題を抱えている印象です。
本橋CE:そうですね。過去には我々も、そういう時期がありました。今は信頼性、パフォーマンスの両面で戦える位置には来れるようになりましたけどね。
──角田選手のペナルティ、冒頭でも疑問を呈していましたが、ちょっと納得がいかないということですか?
本橋CE:そうですね。誰が悪いというのはレースなのでなんともいえないと思うのですが、あの瞬間の角田くんは自分が入っていくなかで当たらないようにという走行ラインを取っていた。他のドライバーたちの事故に至らないにしても類似した状況を見ても、あのペナルティはちょっとひどいというのが個人的な意見です。
──20台中唯一ソフトタイヤでスタートするというアグレッシブな戦略でしたが、しっかり順位を上げて、あの時点まではかなりうまく機能してました。
本橋CE:スプリント予選もそうでしたが、他のみんながミディアムタイヤを使うだろうと予想して、重要なスタートポジションを取りにいこうと。それが機能して、その結果あそこまで(ランス・ストロールを)追い込めた。ソフトの強みを活かした走りができていたと思います。それだけあの接触、そしてペナルティは残念でした。
──たらればですが、あそこでぶつかってなければポイント圏内まで行けていた?
本橋CE:そう思いますね。マシンパフォーマンスを見る限り、そこまで期待できたと思います。仕方なかったですね。
──ノーズを交換しましたが、空力的ダメージを抱えながら走っていたのですか?
本橋CE:はい。フロントウイング以外にも車体脇の空力パーツが壊れて、マシンバランスが崩れたまま走っていました。言い換えれば、そういう状態でもあそこまでしっかり走り切った。そこは頑張ってくれたと思うと同時に、角田くんの進化も実感しました。
(取材・まとめ 柴田久仁夫)
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