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F1技術解説アメリカGP(2)サーキットによっては大きな武器に。他を凌駕するメルセデスのサスペンションシステム
2021年11月3日
2021年F1第17戦アメリカGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点について解説する。今回も、「その1」に続き、メルセデスに速さをもたらすサスペンションシステムを取り上げる。
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F1マシンは通常、フロントとリヤに1基ずつのピッチングダンパーを備える(下図の黄色部分)。加減速やコーナリング時、あるいはダウンフォースの大小で起きる車体の沈み込みを調整し、走破性を上げるのが目的だ。
走行スピードが上がると、それに比例してダウンフォースとドラッグ(前面抵抗)も上がる。するとサスペンションにかかる負荷が高くなり、通常なら車高が下がることになる。しかし車高は高すぎても低すぎても、フロア下の気流はきれいに流れず、期待したようなダウンフォースは発生してくれない。そこで車高を一定にするために重要な役割を果たすのが、ピッチングダンパーというわけだ。
ただしストレートを全開走行しているときは、できるだけリヤの車高を下げてドラッグを減らしたい。レッドブルに代表されるハイレーキコンセプトを取らないメルセデスはリヤの車高が比較的低く、レッドブルほどはストレートでのドラッグは大きくない。それでも車高が下がることのメリットは大きい。
ならばストレート走行中だけ、車高を一定に保つピッチングダンパーの機能を一時的に凍結してしまえばいい。事前に想定した速度に達した時に、ダンパー内に封入されたガスが放出されることで通常以上にダンピングされ、リヤの車高が下がるという仕組みと思われる。
だが理論上は簡単に思えるものの、レース現場での実用化は非常に複雑と言われる。ストレートでリヤの車高を無理やり下げた直後のコーナーで、再び通常の高さまで上げて本来のダウンフォースを発生させる。それを何十周も連続して、正確に行う必要がある。足回りの電子制御が禁じられた現在のF1で、この調整を完璧に行うのはかなり難易度が高いからだ。
とはいえ直線でダウンフォースとドラッグを減らすメリットは、とてつもなく大きい。コーナリング重視のセッティングでもストレートでの最高速の伸びが期待でき、その両面で速さが発揮できるからだ。もちろんライバルたちも、同様の工夫をしている。しかしメルセデスのそれは、洗練のレベルの点で凌駕しているということだ。
ただしこのデバイスが、どんな性格のサーキットでも有効というわけではない。トルコで速かったメルセデスが、オースティンではそれほどでもなかった。確かにストレート主体のセクター2では、ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスはレッドブルの二人より速かった。しかしその差はわずかコンマ1秒ほどであり、マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスは代わりにセクター1、3でメルセデスを凌駕していた。どんなサーキットでもオールマイティに速い、というわけではないのである。
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)
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1位 | オスカー・ピアストリ | 131 |
2位 | ランド・ノリス | 115 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 99 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 93 |
5位 | シャルル・ルクレール | 53 |
6位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 48 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 41 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 30 |
9位 | エステバン・オコン | 14 |
10位 | ランス・ストロール | 14 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 246 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 141 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 105 |
4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 94 |
5位 | ウイリアムズ・レーシング | 37 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 20 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 14 |
8位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 8 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 7 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 6 |

