ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1の2021年シーズン前半戦の戦いを振り返っていく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ホンダにとって最後の年となる今シーズンをファンの皆様から『すごかったね』と言ってもらえるような記憶に残るシーズンにしたい」とシーズン開幕前に語っていた山本雅史(マネージングディレクター)。2021年のF1は前半11戦を終えているが、ここまでのF1は山本MDが語っていたように、多くのF1ファンの心にホンダが強烈なインパクトを与えるシーズンとなっているに違いない。
そのひとつは、あのメルセデスと真っ向勝負のタイトル争いを繰り広げていることだ。
序盤メルセデスに先行を許したレッドブル・ホンダが、反撃を開始したのは第5戦モナコGP。マックス・フェルスタッペンが初優勝し、ライバルのルイス・ハミルトン(メルセデス)が表彰台を逃したことで、ポイント争いで一気に逆転。ドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権の2つのタイトル争いでトップに立った。これはレッドブルにとって2014年に始まったターボ・ハイブリッド時代で初めてのことであると同時に、ホンダにとっては1991年以来の選手権リーダーでもあった。
さらにこのモナコGPをはじめ、さまざまな記録を刻み続けていることだ。
第5戦モナコGPで今シーズン2勝目を挙げたホンダはその後、第9戦オーストリアGPまで勝ち続け、5連勝を達成した。これはホンダにとって1991年の4連勝を上回り、1988年の11連勝に次ぐ、ホンダ史上2位の大記録でもあった。今シーズンのホンダは、私たちの記憶に残る戦いを披露しているだけでなく、1980年代のホンダの黄金時代に匹敵するような記録も次々を達成しており、後半戦にどんな記録が生まれるのかも楽しみだ。
そんなホンダも残念ながら、第10戦イギリスGPと第11戦ハンガリーGPでフェルスタッペンが立て続けに不運な事故に見舞われてしまったため、夏休み前最後の一戦となったハンガリーGPでハミルトンに逆転を許してしまった。ただし、今シーズンここまでの戦いを振り返ると、マシンの競争力はレッドブル・ホンダのほうが安定しているように思える。
今シーズン、フェルスタッペンが表彰台を逃したのは3回(第6戦アゼルバイジャンGP、イギリスGP、ハンガリーGP)あるが、いずれもアクシデントに巻き込まれたことが要因だった。これに対して、ハミルトンも表彰台は3回逃しているが、こちらはいずれもパフォーマンス不足(モナコGP)と自らのミス(アゼルバイジャンGP、第9戦オーストリアGP)。つまり、実力的にはフェルスタッペンのほうがハミルトンを上回っているといっていいだろう。
したがって、タイトル争いで2番手に下がったレッドブル・ホンダだが、パフォーマンス的には十分メルセデスと戦える力はある。後半戦の緒戦となる第12戦ベルギーGPや第13戦オランダGPはサーキット特性的にレッドブル・ホンダに有利なだけに、レッドブル・ホンダが後半戦の開幕早々に首位の座を奪還する可能性は十分考えられる。レッドブル・ホンダのマシンがメルセデスよりもサーキットを選ばないことを考えると、一度逆転すれば、その後はタイトル争いを有利に進めることだろう。
あとは、イギリスGPのクラッシュでダメージを負ったフェルスタッペンのパワーユニットに対して、レッドブル・ホンダがどのような戦略を敷くかだ。クラックが入ったICEをどのように補修するのか。事実上、ICEを1基失ったレッドブル・ホンダがどこで4基目を投入するのか。
ラストシーズンとなる2021年にホンダは悲願のタイトルを獲得できるのか。いずれにしても、ホンダが記憶に残る戦いを披露することは間違いない。
(Masahiro Owari)