ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第2戦エミリア・ロマーニャGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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ホンダがF1第2戦エミリア・ロマーニャGPで2021年シーズン初優勝を果たした。開幕2戦目での勝利は2019年の9戦目(オーストリアGP)、2020年の5戦目(70周年記念GP)に比べて早く、2015年にF1に復帰して以降、最速のシーズン初優勝だった。
F1がハイブリッド・ターボ時代になった2014年以降、タイトルを獲得するチームは2戦目までに優勝している。例外は2018年のメルセデスで、シーズン初勝利は4戦目のアゼルバイジャンGPだった。この年、開幕2連勝したのがフェラーリ(セバスチャン・ベッテル)で、雨のドイツGPで逆転負けするまでドライバーズ選手権でトップに立っていた。
「ここでも勝てなかったら、開幕2連敗だった。その意味で2戦目の優勝は大きかった。昨年に比べ、相対的な戦闘力、特にメルセデスに対する競争力が増していることが結果として現れた」と田辺豊治F1テクニカルディレクターが言うように、2戦目でシーズン初優勝は、レッドブル・ホンダにタイトルを狙えるポテンシャルがあることが証明されただけでなく、少なくともメルセデスとともにタイトル争いすることは間違いないということができるだろう。
またイモラでの優勝はホンダにとって、1991年のアイルトン・セナ、ゲルハルト・ベルガーの1-2フィニッシュ以来30年ぶりとなった。イモラは1994年の大事故の後、コースが改修されたものの、全開率は高く、パワーユニットの性能がラップタイムに占める割合が大きいサーキット。そのイモラで優勝できたことは、レッドブルの車体だけでなく、ホンダのパワーユニットの性能もメルセデスと比肩している証左でもある。
イモラでは、ホンダにとって、もうひとつポジティブな結果が見られた。それは、ウエットコンディション下でのスタートだ。ウエットスタートは昨年の第14戦トルコGP以来で、そのときレッドブル・ホンダはスタートで失速し、大きく出遅れた。しかし、今年のイモラでは逆にメルセデスを上回る出足を見せ、3番手からスタートしたマックス・フェルスタッペンがポールポジションからスタートしたルイス・ハミルトンをスタート直後の最初のブレーキングポイントとなる2コーナーでオーバーテイクした。
これに関しては、フェルスタッペンが「今回の優勝の鍵となったのは素晴らしいスタートだった。昨年、僕たちはウエットコンディションでいつも苦労していた。でも、それから今年にかけていろいろと確実に改善してきた。正直、僕も驚くほど最高のスタートだったよ」というほどの好ダッシュだった。
田辺TDは「昨年のトルコGP後、何が悪かったのかを解析し、チームとスタート設定を検討してきました。PU側のトルクの出し方だけでなく、車体側のクラッチコントロールなど、非常に複雑な領域で双方を最適な形で合わせ込むのは簡単ではないのですが、チームと協調してやってきた成果が今回、出せました。難しい作業でしたが、やってきた甲斐がありました」と、目に見えない努力を続けてきたことを明かした。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「ホンダがこの冬に非常にいい仕事をしてくれた。彼らのサポートなしではここまで改善していなかっただろう」とホンダを称えた。
これは今年投入された新骨格のパワーユニットの性能だけでなく、そのパワーユニットをコースで走らせる現場スタッフもまた、メルセデスに肩を並べるレベルにあるといっていいだろう。
第2戦エミリア・ロマーニャGPの勝利は、ホンダが1991年以来、30年ぶりにタイトル争いを行う力がついてきたことを証明したレースとなった。
(Masahiro Owari)