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【中野信治のF1開幕戦展望】角田裕毅への高まる期待「上位を走行できない理由が見当たらない」
2021年3月24日
いよいよ始まる2021年F1シーズン。ホンダF1の最終年、そして日本の至宝、角田裕毅のF1デビューシーズン、メルセデス&ルイス・ハミルトンの連覇を止めるのはどのチームなのか……とにかく話題と期待の高い今シーズンのF1を、元F1ドライバーでホンダの若手ドライバー育成を担当する中野信治氏が解説。ドライバー、そしてチーム監督、そしてレース解説者としのファン視点と、さまざまな角度からF1の魅力をお届けします。その中野氏がズバリ、開幕戦のウイナー予想と角田裕毅選手の第1戦に向けてお伝えします。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今年のF1、開幕前にバーレーンで行われたプレシーズンテストを見ましたが、まだまだ見えない部分が結構あると感じています。今回のテスト結果がそのまま開幕戦の結果になるかは正直わからないですね。ただ同時に、ホンダ製パワーユニット(PU/エンジン)を使用したレッドブル、アルファタウリの2チームが結構よい位置にいることは感じられました。
当然、チームごとにテストメニューが違うにしても、テストで走行している時のオンボード映像を見るかぎり、特にアルファタウリのマシンのバランスは悪くないように見えましたし、期待していい部分も垣間見えました。その部分は我々日本人にとって嬉しいというか、ポジティブなテスト結果でしたね。
アルファタウリは角田(裕毅)選手が3日目の最終日に2番手タイムをマークしましたが、タイムだけではなくクルマの動きもすごく良かったです。角田選手はオンボード映像を見てもすごく攻めているわけでもなく、クルマのポテンシャルを上手く引き出して、クルマなりに走らせている感じでした。そのときのクルマの動きが良かったので、クルマの仕上がりは悪くなさそうだなという印象です。
レッドブルは昨年までマシンがピーキーという課題がありましたが、今年は昨年よりは若干マシ、くらいなのかなと思います。マックス(フェルスタッペン)がタイムを出しにいくときの走りを見ていると、結構頑張って走行している感じが出ていました。ただ、頑張って走行している分、きちんとタイムにもつながっています。
一方、メルセデスは頑張って走行してもタイムが出ていませんでしたし、クルマもすごくピーキーな動きをしていましたね。メルセデスがどのくらいパワーユニットの性能を引き出して走っているかはわからないので、なんとも言えないですが、クルマの動きだけを見ると、メルセデスはすごく難しい動きをしていました。対して、レッドブルは昨年より少し良くなった、そして今回のテストだけで言えば、アルファタウリはリヤがしっかりとしていて、とてもよい動きしていました。
アルファタウリはリヤの安定感が高い分、コーナー進入でもドライバーがステアリングを最初から切り込んでいけてましたね。アンダーステア傾向なマシンかと思っていましたが、意外とアンダーステアは出ていなかったので、悪くないように見えました。
その他のチームのマシンに関しては、個人的にはアストンマーティンに期待したいと思っています。テストではマイナートラブルに苦しんでいましたが、もともとパフォーマンスの高かった昨年のレーシングポイントからの流れで、今年のマシンでそこまで冒険をしていなければ悪くなさそうです。
そしてフェラーリは正確な数字が見れたわけではないのですが、直線スピードが明らかに速くなっていますよね。コーナリングに関してはまだクルマが決まっていない印象を受けますが、直線スピードが速ければ、まだなんとかなるという感じです。
昨年はコーナリングも悪くて直線スピードも遅いという、どうしようもない状態でしたからね。今回のテストでもタイム的にはまだ厳しいですが、シーズンを通して良くなってくる可能性はあります。同じフェラーリ製パワーユニットを使用するアルファロメオも直線スピードは悪くなかったので、やはりフェラーリ製パワーユニットに関してはかなり改善しているはずです。
マクラーレンも今年からパワーユニットがメルセデスに変わったので、かなり期待できると思います。昨年もコーナリングは悪くなかったですからね。もしかしたら、アストンマーティンを超えてくるかもしれませんし、サーキットによってはトップ争いにも絡んでくるのではと僕は思っています。ダニエル・リカルドが加入したことも面白いところです。
そう考えると、今季のF1はメルセデスののピーキーな動きがすごく気になるところで、勢力図はギュッとトップから詰まった状況で開幕を迎えることになるのではないでしょうか。もちろん、メルセデスは昨年の開幕前テストでも目立ったタイムを残さずに不調と言われましたが、開幕戦では2番手以降を突き放してしまったので、今年もその可能性はあります。
ただ、今回のテストだけに関して言えば、実際メルセデスのクルマの動きは悪かったですし、そこまで演技をするかなあ、という印象です。昨年も良くはないと言われていましたが、ここまでは悪くなかったですからね。
今年のテストではハミルトンもアタックでガンガン攻めていました。メルセデスのストレートスピードはわからないですが、パワーユニットを控えめにして走っていたか、それとも燃料を薄くして走っていたならもうすこしタイムが遅くなるはずなので、常識的な燃料搭載量かつ軟らかいタイヤを履いての(3日目最終日)5番手タイムだとすると、それほどいい感じはしませんね。
メルセデスは今年からレーキ角(マシンの前傾姿勢)をつけたセットアップをしていて、そう考えるとたしかにテストの始めはレーキをつけて走っているように感じましたが、最終的にはレーキを減らしていたのでセットアップの方向性で迷っているのかなとも思います。
タイムが遅くても、まだクルマの動きが良ければ『開幕戦ではメルセデスは来るな』という風に思いますが、あまりにも今回はクルマが決まっていませんでした。今回のテスト結果を踏まえて、開幕戦では昨年のセットアップに寄せてくる可能性もありますし、今回はいろいろなことを実験していただけかもしれません。そういった意味では、チームとしての引き出しはたくさん持っていると思います。
今年は昨年からクルマのレギュレーションが大きく変わっていない状況ですが、変わっていない分、少し奇をてらったことやチャレンジをしないと昨年のパフォーマンスを上回れません。昨年の最終戦ではレッドブル・ホンダが速さを見せていたので、メルセデスも、もうひとつ上を目指すためにレーキをつける方向を選んだのだと思います。ですので、昨年から徐々にレッドブル・ホンダがメルセデスに掛けていたプレッシャーというのが、ここにきてメルセデスに少しずつ効いてきているのかなと思います。
メルセデスファンのみなさんには申し訳ないですが、前半戦だけでも苦しんでくれるとチャンピオンシップ争いは面白くなる(苦笑)。レース展開もどのチームが勝つかわからないという幅が広がるので、そういった意味ではいろんなことを期待してしまう開幕前テストでしたね。
●次ページ:ズバリ予想する開幕戦ウイナー。角田裕毅に期待したい開幕戦のパフォーマンス
今の段階で開幕戦のウイナーの名前を挙げるのなら、やはり期待も込めてフェルスタッペンですかね。開幕戦のバーレーンはコース的に特徴が掴みづらくて、どのクルマが速くてどのクルマが遅いというのが本当にわかりずらいサーキットです。高速コーナーもなく、暑いのでうまくタイヤを保たせたいですし、砂漠なのでコース上には砂が出ます。そういったいろいろな状況変化に順応・対応できるクルマを作れているか、そしてドライバーのタイヤの使い方がキーポイントになります。
それらを考えて、フェルスタッペンにはチャンスがあると思っています。その後ろをマクラーレンが追いかけてきて、さらにアルファタウリ・ホンダが続けば、かなり盛り上がる展開になると思います。本当に今回のテストの結果で期待値が上がりすぎました。ここまで期待が高まるのは、なんだかひさびさな感じですね。
レッドブルとアルファタウリの2チームとも速さを見せたということで、今年のホンダ製パワーユニットもかなり期待していいと思います。テストでもトラブルは出ていないですし、馬力もあるように見えました。開発がいい方向に向かっていると思います。テストですので当然、馬力もまだフルで出しているわけではなく信頼性重視で進めていたと思うので、レースに向けてどれくらい引き出しを持っているかというのもひとつのキーポイントですね。
いずれにしても、各チームの本当の勢力図が見えるのは開幕戦の予選Q3になると僕は思っています。昨年を見ていてもそこまでは本当にわからない。『いったい、どこで本気を出すの?』という感じでした。ですので、それまではクルマの動きでしか判断ができません。今年のテストではアルファタウリ・ホンダもクルマの動きが良かったですし、マクラーレンも悪くありませんでした。アストンマーティンもそんなに悪くないように見えましたが、トラブルが出て走り込めていないのが気になります。
アルファロメオも速くてフェラーリ製パワーユニットが進化しているのも見てとれたので、今シーズンのどこかで本家フェラーリが活躍してくれるんじゃないかなという期待もできます。今年のF1は昨年以上に勢力図が凝縮されていて、見ている側には面白いシーズンになりそうですね。ホンダも今年がラストイヤーということで開幕は幸先よく飾ってほしいし、角田のデビューに向けてもかなりの追い風になっていると思います。
最後、角田選手について。開幕前テストが昨年までの6日間から今年は3日間だけとなって日数不足を心配する声があるようですが、クルマが良ければ日数はあまり関係ないと思います。これは角田選手だけに限らず、ある程度の能力を持っているドライバーなら、良いクルマに乗ってしまえば、普通に走り初めでいいタイムは出せてしまいますからね。やはり難しくなるのは、クルマがコースや自分に合っていないなど何か問題を抱えてしまったときですね。そこで経験値や引き出しの多さ、そして仕事の仕方などの差が出てしまいます。
テスト最終日に2番手のタイムを記録しましたが、角田選手の評価に関してはこれからです。今のところはFIA-F3、FIA-F2を含めてずっと良い流れで来ています。もちろん本人はいろいろな努力をしているなかで、ここまであまり大きく迷うこともなく、本当に自然体でどのカテゴリーでも上位を争えるところにいたということは、ドライバー的には最強のメンタルになります。
角田選手はチームに溶け込んだり、海外に住むということも非常に上手くやっています。その環境に加え、ドライビングでもすごくナチュラルに自分のやり方で対応できているので、運転することに関してはあまり苦労を感じているように見えません。
あとは開幕に向けて、本当に余計なことを考えずに自然体でコンディションを整えるだけです。今回デビューするアルファタウリというチームも、僕も前身のミナルディの時に経験していますが、若いドライバーにすごくウエルカムでチームも若いドライバーとの仕事の仕方に慣れています。そしてパワーユニットも日本メーカーのホンダを搭載していますし、角田選手をサポートするには、これ以上ないくらい完璧な体制です。これもある意味、自然体でいられる要因です。変なプレッシャーを感じすぎずに自然体でいることだけに集中していればいい。
角田は自分のストロングポイントをよく分かっているドライバーなので、それが強みでもあります。細かく言うとブレーキングが上手いとか、オーバーテイクやタイヤマネジメントに優れているなどありますが、それらをすべてひっくるめて自分のストロングポイントを理解しています。自分自身を信じ切っているのもまた強みですよね。だから自然体でいられますね。
開幕戦では、まずは予選でQ3に行ってほしいです。テストの感じを見ていると全然不可能ではないですし、仮に蓋を開けてみてアルファタウリのクルマのポテンシャルが足りないということになってしまっても、ピエール・ガスリーという非常にわかりやすいチームメイトがいます。
ガスリーとはテストでも全然対等に走れていますね。スピードという部分では何の遜色もないと思います。角田選手はレースの戦い方も上手いので、ガスリーの前にどうやって出るか。シーズン中ではなく開幕戦だからこそのインパクトがあると思うので、そこで角田選手は何かできればなと思います。
すでに来年に向けて戦いが始まっています。レッドブルにステップアップするためにも、開幕戦から大きなインパクトを見せることができれば、本当にいろいろな流れができてくると思います。もっと言えばシーズン中に何かアクションがあるかもしれない。今から悠長なことを言っていてはダメだと思うし、角田選手本人も『最初はF1に慣れて〜』なんて思っていないはずです。今からもう戦いは始まっています。ただ、気負ってしまってもダメですけれどね。
早くF1の進め方に適応することができれば、本当に普通に上位を走っている姿が想像できてしまいます。むしろ上位を走行できない理由が見当たらないです。本当に『何かやってくれるだろう』という期待をすごくしています。守るものも何もないと思うので、自然体で目一杯いってほしいです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24
(Shinji Nakano まとめ:autosport web)
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3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 555 |
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6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 50 |
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8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
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第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
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