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正解は1年後──2021年、ハミルトンの8冠を脅かすレッドブル・ホンダの影【F1ジャーナリスト対談/後編】
2021年1月14日
2020年は世界中に大きな打撃をもたらした新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響を受けつつも、無事に17戦をやり遂げたF1。2021年シーズンのF1開幕予定まで約2ヵ月と迫ってきているが、果たして今シーズンは無事に開幕できるのか、そしてどんな戦いが繰り広げられるのか。
前編ではF1を長年取材してきた3名のジャーナリストたちに2021年のスケジュール問題やルーキーたちについて独自の見解を語ってもらったが、後編ではキミ・ライコネンやルイス・ハミルトンの去就から2021年のチャンピオンまでを予想してもらった。
■ハミルトン、ライコネンの引退時期はいつ?
尾張:2020年のF1は若い世代の活躍が目立ちましたが、一方でベテランたちの存在感も際立ちました。そのうちのひとりが、ドイツのニュルブルクリンクで開催されたアイフェルGPで、史上最多出走の新記録(323戦レースに出走)を樹立したアルファロメオのキミ・ ライコネンです。現在41歳のライコネンは2022年も現役を続けると思いますか?
クルタ:まずフィンランド人の私から回答させてもらうよ(笑)。個人的には、2018年限りでフェラーリを去ることになったとき、キミがもう1年やると決断したことは私にとって20年前に彼がザウバーと契約してF1にデビューすることが決定したときと同じくらい大きな驚きだった。でも、それはまだまだキミのことが分かっていなかったわけだ(笑)。
クルタ:キミは今年F1参戦19年目を迎える。すでにバリチェロの出場最多記録を塗り替えているが(現在329レースに出走)、今年はその記録をさらに伸ばして350戦に到達するだろう。アルファロメオは昨年よりも良くなるだろうけど、たとえそうならなくてもまだしばらくはキミはレースをするだろうと思っている。
バスコンセロス:私もキミはおそらく少なくとももう1年契約を更新して、2022年からスタートする新車をドライブすると思っている。ただし、問題はアルファロメオが2022年の新車のシートをキミに与えるかどうかだ。2022年に向けては、バルテリ・ボッタス、エステバン・オコン、セルジオ・ペレス、ニコ・ヒュルケンベルグなどの実力のあるドライバーたちが市場にあふれるだろう。
バスコンセロス:そうなるとアルファロメオがキミ以外のドライバーと契約することは十分に考えられる。さらに2021年にF1へステップアップできなかったロバート・シュワルツマン、カラム・アイロット、クリスチャン・ルンガーなどもいる。そうなると、2022年のシート争いはかなりエキサイティングなものになるんじゃないかな。
ブルナー:この答えは大きくふたつのことに依存すると思う。まず今年のアルファロメオのマシンがどれくらい競争力があって、キミがレースを楽しむことができるかどうか。そしてもうひとつは、アルファロメオの将来がどうなるかだ。もしアルファロメオが2021年限りで撤退し、同時にキミにとって2021年が良いシーズンとならなかった場合、私は彼が2021年限りで引退するかもしれないと思っている。
尾張:続いて、昨年7冠を達成したルイス・ハミルトンです。彼もまた2021年の1月7日に36歳になりました。ハミルトンはいつまで現役を続けると思いますか?
ブルナー:ルイスはあと3年は現役を続けると思うよ。彼は新世代のF1マシンに挑戦することに熱心で、それは2022年からスタートするからね。そして、その新世代のF1マシンを1年だけ乗っておしまいにするとは考えにくく、少なくとももう1年、つまり2023年までは走るだろうと考えている。
バスコンセロス:私も同感だ。ハミルトンはすべての記録を明確に更新するまで、つまり2022年の終わりまでは確実に現役を続けるだろうと思う。ハミルトンは常々『記録なんて気にしない』と言っているけれど、彼は勝ったレースの数、得点したポールポジションなどを正確に知っているよ。
バスコンセロス:2021年にタイトルを獲れば、単独で史上最多の8冠王者となるけれど、ハミルトンは(マックス)フェルスタッペンがあと15年はF1にいて、自分が引退すればフェルスタッペンがF1を席巻することを察知しているので、自分の記録を抜かれないよう、少しでも多くの優勝とタイトルを加えておきたいんだよ。
クルタ:ハミルトンがメルセデスとどのような交渉を行っているのか分からないから、この質問はそれ次第というところもあるけれど、私はシューマッハーが持つ7回を抜いて、タイトル獲得回数で単独トップに立ったときが、ハミルトンにとって現役引退を決断する、ひとつのタイミングになるだろうと思っている。
クルタ:たとえ、このシーズンオフ中に更新される契約内容が複数年になったとしても、ハミルトンほどのドライバーであれば、引退のタイミングはシーズンごとに自分の判断で自由に決めることができるはず。 つまり8回目のタイトルが、2021年になるか2022年になるかによって、決まるんじゃないかと思っている。
■Bチームのトップはリカルドが加入するマクラーレン?
尾張:2020年は近年稀に見る激しい戦いが中団グループで見られました。2021年の中団争いでトップに立つのはどこのチームになると思いますか?
バスコンセロス:今年もマクラーレン、アストンマーティン、ルノー、フェラーリによる戦いになることは間違いない。そして、この4チームが第2集団のトップに立つためには、それぞれ新しい課題を克服する必要がある。
バスコンセロス:まずマクラーレンは新しいドライバーと新しいパワーユニットにどのように適応するか。ルノー、アストンマーティン、フェラーリは新しく加入するドライバーとの新しい仕事が待っている。そのなかで最も強力なラインアップとなっているのがフェラーリだ。 もしお金を賭けるなら、私はフェラーリがシーズンの終わりにコンストラクターズ選手権で3位に復帰することに投資するね。
ブルナー:予測するのは非常に難しいね。 だって2021年の中団チームには未知の要素が多いから。マクラーレンはメルセデスのパワーユニットを搭載し、ダニエル・リカルドが加入する。ルノーはフェルナンド・アロンソが加入し、アルピーヌという新しい体制でスタートする。フェラーリだって新しいパワーユニットがどんなものか分からない。断定することはできないけれど自分の直感を信じるならばマクラーレンかな。
クルタ:どこからどこまでを第2集団にするかで答えが変わってくるが、もし2020年のパフォーマンスで第2集団を決めるとすれば、個人的にはフェラーリにリードしてもらいたい。ただ冷静に考えればリカルドと(ランド)ノリスががいるマクラーレンが頭ひとつ、抜き出てると思う。
■フェラーリはトップ3に返り咲く?
尾張:2020年はフェラーリにとって大不振のシーズンとなりました。2021年の復活はあるでしょうか?
バスコンセロス:私はフェラーリがコンストラクターズ選手権で3位になることに賭けている。 ルクレールは非常に高いレベルにある。もちろん、技術的にはまだまだ完成したドライバーではない。 しかし、今年サインツが加入したことで、チームとしては技術的に前進するはずだ。それは、サインツが加入した過去2年間でマクラーレンが大きく進化したことが証明している。
バスコンセロス:ルクレールはサインツからセットアップ面で何が機能し、何が機能しないかを学ぶだろうと思う。そのため予選ではルクレールのほうが優位に立つだろうが、サインツはレースで確実にポジションを上げてくるだろうから、彼らはお互いにプッシュし合うだろう。2020年に苦しんだパワーユニットの性能も2021年は大きく改善し、時にはレッドブルを苦しめることさえあると思っている。
クルタ:フェラーリが2020年の最大の敗者だったことは紛れもない事実。だからこそ、2021年は飛躍の年になると思う。どのサーキットへ行ってもマクラーレンやルノーと激しいバトルを演じるだろうが、ルクレールとサインツのコンビはモチベーションが高い。
クルタ:特にマクラーレンから移籍したサインツは、中団での戦いに慣れているだけでなく、フェラーリドライバーとしてレースするという新たなモチベーションもあるので、フェラーリにとっては良い刺激になるだろう。フェラーリがトップ3に返り咲いても私は驚かないよ。
ブルナー:正直言って2020年よりも悪くなることはもうないだろうね。ただフェラーリがマクラーレン、アストンマーティン、ルノーを上回ることもまた簡単ではない。フェラーリは3位に返り咲きたいと考えているだろうが、まだ多くの疑問があることも事実で現実的には5位、もしくは4位だろうと思う。 もちろんフェラーリはいくつかの点を改善してくるだろうから、それを復活と呼べるかもしれないけど、完全復活を成し遂げるには中団争いは激しく、もうしばらく時間がかかるだろう。
■2021年タイトル争いの行方。レッドブル・ホンダのタイトル獲得の可能性は?
尾張:ここまで、いろいろと2021年を占ってもらいましたが、残りあとわずかです。ずばりハミルトンが今年8度目のタイトルを獲る可能性は何%でしょう?
ブルナー:マシンが2020年と大きく変更できないことを考えれば、2021年のタイトル争いもおのずと2020年と同じような展開になると予想される。ただ気をつけなければならないのは、レッドブル・ホンダがメルセデスとのギャップを確実に詰めていることだ。したがって、2020年のような楽勝にはならないだろう。メルセデスがタイトルを獲得する可能性はずばり50%だと思う。
クルタ:2020年とレギュレーションがそれほど変わらないので、私はハミルトンが連覇する可能性は80%ぐらいあると思っている。 ただし我らがバルテリもバージョンアップして“ボッタスIII(スリー)”になって戦いに挑んでくると思うので、ハミルトンも2020年までのようには行かないだろう。それでもバルテリがチャンピオンになる可能性は10%というのが正直なところだな。
バスコンセロス:私は、2021年マシンは2020年にタイトルを獲得したレギュレーションに基づいて作られていることを考えれば、ハミルトンが勝つ可能性は90%だと思っている。さらにシーズンが長くなれば、ボッタスよりも優位に立つことは間違いなく、8回目のタイトルを獲得したいというモチベーション的にもボッタスを上回ると思っているから、連覇の可能性は高いだろう。
尾張:では最後に、レッドブル・ホンダがタイトルを獲る可能性はどれくらいでしょうか?
ブルナー:メルセデスと同様50%の確率だと思う。2021年はホンダにとってF1最終年。おそらく持てる力をすべて発揮し、積極的な戦いをしてくるはずだ。レッドブルも2020年に空力に関してさまざまなことを学び、フェルスタッペンも大きく成長した。 チャンスはある。
バスコンセロス:残念ながら、私はハミルトン以外がチャンピオンになる可能性は、残りの10%ぐらいだと考えている。しかも、これをレッドブル・ホンダはボッタスと共有しなければならない。 たしかにホンダは2020年よりも強力なパワーユニットを投入してくるだろうが、車体はメルセデスほどサーキットに対する順応性が高くない。
バスコンセロス:しかも、レッドブルの車体はフェルスタッペン用にデザインされているため、フェルスタッペンがうまく行かないサーキットではもう1台も苦労することになる。レッドブルのマシンは卵がたくさん入ったバスケットのようなもので、バスケットを落としてしまうとすべての卵が割れてしまうという危うさがあるんだ。過去4年間ハミルトンが手にすることができたような最高のマシンを手に入れるまで、フェルスタッペンはもう少し待たなければならないだろう。
クルタ:2020年よりは良い成績を残すと思っている。第1にフェルスタッペンにはそのポテンシャルがある。第2にホンダが確実に前進していること。そして、第3の要因としてはペレスが加入したことだ。これにより今年のフェルスタッペンは相当プッシュできるようになるはず。それでもチャンピオンになる可能性としてはやはり10%というのがいいところだと思う。
尾張:コロナ禍により、限られた時間と取材活動のなかで、予想するのは簡単ではなかったと思いますが、ご協力ありがとうございました。みなさんは私と同じように2020年は現場での取材ができず、2021年もまだどうなるか分からない状況だと思います、まずは、一日も早く、新型コロナが収束し、心の底からレースを楽しめる日が訪れることを願うばかりです。また会う日まで、みなさんも健康にはくれぐれもお気をつけください!
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ルイス・バスコンセロス(Luis Vasconcelos)
F1取材?500戦を超える重鎮ジャーナリストで、日本のレースにも精通しているポルトガル人。フォーミュラプレスの主宰も務めている。オートスポーツのほかにF1速報や東京中日スポーツにも寄稿している。
マティアス・ブルナー(Mathias Brunner)
モータースポーツサイト『Speedweek.com』のリポーターとして、主にF1を取材。510戦を現場取材してきた。スイスのチューリッヒ郊外在住のベテランジャーナリスト。500冊以上のレース関係書籍のコレクションが自慢。好きなグランプリは、3つのM(モナコ、モントリオール、モンツァ)
ヘイキ・クルタ(Heikki Kulta)
F1ジャーナリストのなかでも数少ないフィンランド人。ミカ・ハッキネンやキミ・ライコネン、近年ではバルテリ・ボッタスなどフィンランド人ドライバーをメインに取材している。なかでも『番記者』を務めるほど、ライコネンとは親交が深い。
尾張正博(Masahiro Owari)
F1速報誌「GPX」の編集長を務めたのち、2002年からフリーランスでF1全戦取材してきた日本人ジャーナリスト。F1速報やオートスポーツ、東京中日新聞などにも寄稿している。
※注釈:この対談は年末年始に個別に取材した内容を、ジャーナリストの了解を得て対談形式にしたものです。
(取材・まとめ Masahiro Owari)
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11/22(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
11/23(日) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
予選 | 結果 / レポート | |
11/24(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
1位 | マックス・フェルスタッペン | 403 |
2位 | ランド・ノリス | 340 |
3位 | シャルル・ルクレール | 319 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 268 |
5位 | カルロス・サインツ | 259 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 217 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 208 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 63 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 35 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 608 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 584 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 555 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 425 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 50 |
7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 49 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |