ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブル、アルファタウリの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル、アルファタウリの走りを批評します。今回は第1戦オーストリアの週末を甘口の視点でジャッジ。
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ホンダにとって、2020年の開幕戦オーストリアGPは2台そろってリタイアという残念な結果に終わった。じつはホンダにとって、開幕戦で2台そろってリタイアするというのは、2015年に復帰して以降、これが初めてだった。また、レッドブルにとっても、2台そろってのリタイアは2008年以来、12年ぶりのことだ。
しかし、トラブルに見舞われ、アクシデントに巻き込まれるまで、2台とも優勝を狙えるポジションにいたことも事実。開幕戦でホンダがいきなり優勝争いに加わったのは、2015年に復帰して以降、これもまた初めてだった。
その原動力となったのは、レッドブルが持ち込んだ最新スペックの空力パッケージと、ホンダ製パワーユニット(PU/エンジン)の最新スペック『スペック1.1』だった。
今回ホンダは3月にオーストラリアGP(新型コロナの影響により中止)へ持ち込んだ『スペック1』を、F1が休戦している間のファクトリー・シャットダウン以外の時間を利用して、ギリギリまで開発した最新仕様の『スペック1.1』をオーストリアGPに投入した。パワーユニット・マニュファクチャラーによっては、信頼性が確認できている従来仕様のままで開幕戦を戦ったところもある。
ただし、今年は新型コロナウイルスによる影響を考慮して、パワーユニットは開幕戦に投入したものがホモロゲーション(登録)され、今シーズンは基本的な仕様に関してはアップデートできない。
開幕戦でホンダは信頼面で課題を残す結果となったが、パフォーマンス面ではレース後、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が「今年のわれわれはエンジンの面でも強力になっている」とホンダの仕事ぶりを評価している。
まだトラブルの原因が明らかになっていないが、そのトラブルが設計の根本的なものではなく、いわゆるマイナートラブルだとしたら、スペック1.1には伸び代がある分だけ、シーズンが進むにつれて、さらに良い結果が期待できる。
このことはメルセデスPUも同じで、その最新仕様を搭載したランス・ストロール(レーシングポイント)は、パワーユニットに問題を発生させてリタイアした。彼らもまたギリギリの開発を行ってきた。
もし、ホンダがスペック1.1を投入していなければ、王者メルセデスとレースで優勝争いを展開することはなかったかもしれない。
「開幕戦は残念な結果になってしまったが、このマシンには非常に優れたポテンシャルがある」(ホーナー)
レースでは、攻めた結果のトラブルを責める者はいない。
(Masahiro Owari)