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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第1回前編】興行主としての責任は? 開催直前の中止発表に「ファンの方に申し訳ない」
2020年3月30日
2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。開幕戦オーストラリアGPは、新型コロナウイルスの影響を受けて走行開始の直前に中止が発表される事態となった。感染者が出ることも想定内のはずだった現場は一体どうなっていたのか。小松エンジニアが現場の事情をお届けします。
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2020年の開幕戦オーストラリアGPは、セッション開始直前に中止が発表され、世界中からメルボルンに来てくれたファンの方には申し訳ないことになってしまいました。メルボルンではウチのスタッフ4人が新型コロナウイルスの検査を受けて自己隔離を行いましたが、全員の検査結果が陰性であったことをまずはご報告します。
さて、現地での状況を振り返っていきたいと思います。そもそも新型コロナウイルスの検査については、当初はサーキットのメディカルスタッフの対応もはっきりしていなくて、具合の悪かったひとり目のスタッフを連れて行った時は、検査などは何もしなくていいと言われていました。
それが11日(水)の朝10時半ごろには、「発熱か咳のどちらかの症状が出ていれば検査をしなければならない」に変更されました。ですから、ちょっと前には検査の必要ないと言われてガレージに戻って作業をしていたスタッフも検査を受けに行き、そのまま結果が出るまでふたりのスタッフがホテルで自主隔離となりました。
また当初は、検査結果が出るのは「最悪の場合、5日後になる」と言われていました。5日後だったらグランプリも終わっているし、どうしてこんなに遅いのかと問い合わせたところ、今度は「24時間以内に結果を出す」という答えに変わったので、いかんせん行き当たりばったりな印象を受けました。
ちなみにこの時点で第2戦バーレーンGPの話も話題に上がっていたのですが、バーレーンではイタリア国内の事情を考慮して、F1関係者のイタリア人は空港に着いたらすぐにサーキットに移送され、すぐに検査を受けさせられることになっていて、7〜8時間で結果が出ると言われていました。
どうやらメルボルンでは随時検査を行うのではなく、一定の間隔で時間を区切って、その時間内に集まった人を検査していたので、結果が出るまでに時間がかかったようですが、それにしても想定していなかかったのかなと思ってしまいました。
チーム内では最新のガイドラインに沿って、具合の悪い人は申し出るようにということをはっきりと伝えていました。そこでまた具合の悪いスタッフがふたりいたので検査を受けさせに行ったのですが、17時を過ぎていたのでなんとメディカルセンターは対応出来ず。結局は翌日(12日)の朝10時に検査を受けることになり、その後は彼らもホテルで隔離。そしてやっと12日の夜10時くらいに結果が出て、ウチの4人は全員が陰性だとわかりました。
パドック内でもこういった情報を共有しようと、検査結果が出るたびにギュンター(シュタイナー/チーム代表)とマクラーレン(スタッフのひとりが検査結果を待っていました)のアンドレアス・ザイドル(マネージングディレクター)が連絡を取り合っていました。ウチのスタッフの検査結果が出た直後に、マクラーレンのスタッフが陽性あることが判明し、ザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)はすぐにオーストラリアGPから撤退すると他のチーム代表たちに伝えていました。
■深夜1時半に「走れるならば走りたい」と決断
メルボルンに行く前は『全チームが出なければチャンピオンシップはやらない』と言っていたので、これからどうするのかという話し合いが行われることになりました。
マクラーレン以外の全チームの代表やオーストラリアGP主催者(AGPC)などが集まりましたが、その話合いをしていたのが木曜日の深夜12時半。どうして何も事前に決まっていなかったのかと疑問ですが、ギュンターもそのミーティングへ行ったので、ひとまず僕はその結果を待っていました。
深夜1時半くらいにギュンターから電話があって、「これからどうするのか、意見が分かれている」と聞きました。僕としては100%正しい答えがあるとは思えないし、テレビを見ている人に言わせれば、パドック内で感染者が出ているのに走ると決めたら無責任かもしれません。
とはいえもうすでにオーストラリアに来てしまっているし、金曜日の朝ファンがサーキットに出向く前に中止をちゃんと伝えられるとも思えない。観客が大勢いる以上は走らないと申し訳ないと思ったので、走れるならば走りたいとギュンターには伝えました。
ただこの時点でフェラーリは走らないことを決めていて、フェラーリ側がパワーユニット関係のスタッフを寄越してくれるかどうかわからなかったので、その点はギュンターがマッティア・ビノット(フェラーリのチーム代表)と話をすると言っていました。
夜中の時点ではレース開催賛成派と反対派が半々だったようですが、結局メルセデスが意見を変えて反対派になったので、多数決のような形で走らないことが決まりました。
でも、何の公式発表もありませんでしたよね。僕はカーフュー(深夜の作業禁止時間)明けの朝9時にサーキットへ入りましたが、そこでギュンターから「ほぼ中止だ」ということを聞き、その後FP1が始まる2時間前にようやく中止が発表されました。
ちなみに、金曜日の朝たまたまパドックでホンダの田辺(豊治/テクニカルデイレクター)さんと話していたら、田辺さんも「ホンダは走れたら走る」と決めたと言っていたので、他にもはっきりと走る気持ちのあるチームがあってホッとしました。
以上が現地の状況です。僕は片付けをしながらチェイス・キャリー(F1のCEO)やAGPCの代表者などが出席した会見の様子を見ていましたけど、情けないです。「状況は流動的だ」なんてずっと繰り返して言っていましたが、『メルボルンで働いているくスタッフから一人の感染者が出る可能性』というのは何カ月も前からみんなが思っていたことです。それにも関わらず、何も起こらずに無事に済みますようにと願っていただけなの? と思ってしまいます。
■すべてが後手にまわり、昨年の日本GPと同じ状況に
2回目のバルセロナテストの時点でもうメルボルンへ行くべきではないとみんな考えていました。でも行くと決まったら、もちろんみんな行きます。とはいえ、パドックには大勢の人がいるし(すでに新型コロナウイルスが猛威をふるっていたイタリアからの人達も含め)、新型コロナウイルスに感染する人が出る可能性が高いというのは想定内のはずです。
それなのに何の策もなくて、どうして陽性の人が出てから議論を始めたのか、理解できません。結局はみんな自分で責任を取ってイベントを取りやめにしたくないから、他に責任をなすりつけているのだと思いますが、F1という世界的なスポーツとしてあまりにも誠意に欠けた対応に終始した感があります。
そもそもオーストラリアに行くというのが間違っていますが、行くと決めたなら何通りかの想定されるケースを吟味して、事前に対策を決めておくべきです。
その一方で、陽性者が出てから短時間で声明を出したマクラーレンは感染者が出たら撤退すると事前に決めていたのではないのかと思います。当たり前のことを普通にしていました。
金曜の朝もネットでは非公式ながらもいろいろと情報が出ているのに、F1自体は何も発表しないから、ほとんどの観客の人はゲートまで来て初めて中に入れないと聞いたのではないでしょうか。みんなゲートまで楽しみに歩いて行ったのに、突然ゲートで入れてもらえないことを知るのだと思うと……。本当に彼らは観客のことを何も考えていないんだなと思います。チケット代を返金すればいいってもんじゃないですからね。
今思えば、昨年の日本GPで台風に見舞われた時と同じですよね。同時期に開催していたラグビーW杯では、台風が直撃する数日前にきちんと試合取りやめを発表していたのに、F1は最後の最後まで何をするのか決めなかった。金曜日の朝の時点でも、FP3と予選の両方ができなかった場合はどうするのかというのを発表していませんでした。すべて後手に回っていたと思います。
好き嫌いは別として、バーニー・エクレストン(元F1最高経営責任者)がいた時はわけのわからないこともたくさんありましたが、彼はリーダーでしたし、昨年亡くなったチャーリー・ホワイティング(F1レースディレクター)もそうでした。ふたりとも世間的には必ずしも良い人には見えなかったかもしれないけれど、肝が据わっているし自分の責任で判断を下していました。
それが今は誰も責任を取らないし、そんな状況でよく世界的な興行ができるなと思います。とにかく、メルボルンに来たF1ファンの方々には申し訳ない思いでした。
(Ayao Komatsu)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 362 |
2位 | ランド・ノリス | 315 |
3位 | シャルル・ルクレール | 291 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 251 |
5位 | カルロス・サインツ | 240 |
6位 | ルイス・ハミルトン | 189 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 177 |
8位 | セルジオ・ペレス | 150 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 62 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 31 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 566 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 537 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 512 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 366 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 46 |
7位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 36 |
8位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 14 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |