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レーシングポイントを抑えランキング6位。チーム史上最高のシーズンに/トロロッソ・ホンダF1コラム

2019年12月10日

 2019年最終戦アブダビGPのトロロッソ・ホンダには、コンストラクターズランキング5位が掛かっていた。ルノーとは8ポイント差。しかし7位のレーシングポイントとは16点差で、逆に順位を落とす可能性もある。


 歴史的に見て決して得意とはいえないヤス・マリーナ・サーキットだが、トロロッソ・ホンダは最初から“決勝重視“でレースに挑んだ。暑いコンディションのレースではタイヤのデグラデーションに苦しむ傾向にあり、特に今回のように柔らかいコンパウンドの際にはその傾向が強かったからだ。


 金曜フリー走行からそれを想定した慎重なプログラム構成を採った。

2019年F1最終戦アブダビGP ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)
2019年F1最終戦アブダビGP ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)


 結果としてダニール・クビアトが9番手、ピエール・ガスリーが10番手につけ好調のように見えたが、ソフトタイヤが数周で大きくタレることを考えればQ3に進むのは利口とは言えなさそうだった。


「ダニーと2台で色々と比較データ取りをして、明日以降に向けて色んなことが見えてきた。今日(金曜フリー走行2回目)は10番手だったけど、ソフトタイヤのデグラデーションの大きさを考えるとこれは望ましいポジションじゃない。あとコンマ数秒を見つけて7番手を狙わなきゃいけないし、15番手・16番手まで落ちるのだってコンマ数秒しかないんだ」(ピエール・ガスリー)


 決勝重視のセッティングで臨んだFP3では10番手・12番手と好調だったものの、予選では路面温度が下がる中でグリップを引き出せずに12番手・14番手と順位を下げてQ2で敗退となってしまった。


「良かったのはQ2のアタック1回目だけで、それ以外は正直言ってマシンのグリップがとてもプアだった。なぜだか分らないけど、マシンがスライドしまくってしまったんだ。そのせいで本来の走りができなかった」(ダニール・クビアト)


 しかしこれは結果的にトロロッソ・ホンダにとっては良い展開を生むことになった。


 ガスリーが語っていた通り、Q3に進んで中古のソフトタイヤでスタートすれば戦略の幅はかなり限られてしまう。ミディアムやハードタイヤでスタートして1ストップ作戦を採るのに較べれば不利が大きくなる。


 そして何より、純粋な速さでは及ばないマクラーレンやルノーを上回るには、異なる戦略を用意するしかないのだ。


「今回のソフトタイヤのタレを考えれば、予選で10番手に入るくらいなら11番手や12番手の方が良い。いずれにしても今日はマクラーレンやルノーには敵わなかったし10番手以内に入ることは難しかったと思うけどね。Q3に進んで彼らと同じ戦略になれば逆転はかなり厳しいだろう。マクラーレンの方が僕らよりもかなり速いからね。でも今回はタイヤ選択が鍵を握ることになると思う。スタートタイヤが自由に選べるなら1ストップ作戦も視野に入るようになる。ギリギリだけど、その方がまだ可能性があるんだ」


 決勝に向けてどんな戦略を採るべきか?ソフトスタートで2ストップ作戦になるかもしれないQ3進出組に対して、ミディアムスタートの定石を採るか、ハードスタートで引っ張って最後にプッシュする戦略を採るか。


 ここでトロロッソ・ホンダが選んだのは、ランキング5位争いをするルノーではなく、ランキング6位争いをするレーシングポイントを見てレースをするということだった。


 レーシングポイントはトロロッソ・ホンダより1つ前の予選11番手・13番手。確実に彼らの前後でフィニッシュできるレースをすれば、ランキングを逆転されることはない。だからトロロッソ・ホンダは2台で大量得点を狙うのではなく、ガスリーにミディアム、クビアトにハードと戦略を分けて確実にどちらか1台はレーシングポイントと同等の結果になるようにコンサバティブなアプローチを採ったのだ。


 チーフエンジニアのジョナサン・エドルスはこう説明する。


「どちらの戦略もそれぞれに良いところと悪いところがあって、レーシングポイントは2台ともミディアムスタートの戦略で来るだろうと読んでいたから、我々としてはそれも想定した上であらゆるケースに対してカバーしておきたかったんだ。だから1台は彼らと同じ戦略、そしてもう1台は異なる戦略を採ることで様々な展開、つまりセーフティカーがレース序盤に出ても終盤に出ても対処できるようにしておいたというわけだ。(レーシングポイントに完敗して)コンストラクターズランキング6位を失うようなことがないようにしたかったんだ。我々はマクラーレンやルノーのことはあまり気にせず、どちらかといえばレーシングポイントだけを見てレースをしていたんだ」


 ガスリーがそのレーシングポイント勢とスタート直後のターン1で接触し、フロントウイングを失って大きく後退してしまったのは痛手だった。ノーズを留めるボルトが壊れており、交換に手間取ってしまいウイリアムズから80秒も後方でコースに戻ることになり、セーフティカーが出てギャップが縮まることもなく、ここからハードタイヤで走り切る戦略を採ったものの挽回はできなかった。


 しかしクビアトはハードタイヤを非常に上手く保たせ、40周目まで引っ張ってみせた。クビアト自身、キャリアベスト走りだというほどの好走だった。


「ハードタイヤで走った第1スティントはおそらく僕のキャリアでベストな走りだったと思う。明日なんてもうないっていうくらいに(余力を残さず)プッシュし続けたんだ。毎ラップ周りの誰よりも速かったし、マシンのフィーリングがすごく良かった。そしてレース戦略は僕らがまさに狙ったとおりに上手くいったんだ、最高の戦略だったと思うよ」


 序盤はキミ・ライコネン(アルファロメオ)に抑えられたもののフリーエアになってからは良いペースを維持し、ミディアムに履き替えた最終スティントもニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)を抜いて9位にポジションを上げた。その際にフロントウイングにダメージを負ってそれ以上の追撃がならなかったのは残念だったが、ここ数戦は不本意なレースが続いていたクビアトが最後にしっかりと好走で締めくくったのは来季に向けて良かった。


「ここ数戦はいつも何かを掴み損ねていたような感覚だったしとても良いレースでシーズンを終えたかった。それができて本当に良い気分だよ。僕らはレースに合わせて最高のセットアップを決めていた。それによって予選パフォーマンスは少し犠牲になってしまったかもしれないけど、それを今日のレースでひとつにまとめあげたんだ」


 これまで苦手としていた柔らかいコンパウンドのマネージメントは非常に上手く行き、2020年シーズンに向けた学びになった。


「非常にタイヤを上手く使えて保たせることができたというところで色々と学べたことがあったとチームのブリーフィングでも話していました。今までは後方で競っているとタイヤを壊してしまって抜けない、タイムが落ちていってしまうということがありましたが、今日は色々と学べることがあったし、色んなツールを使ってマネージメントしている中で、何が良かったのかというのは来年に向けていかせるという意味で非常にポジティブな最終戦になったということですね」(ホンダ・田辺豊治テクニカルディレクター)


 ガスリーは1周目の事故が無ければ7位か8位にはなれただろうとチームはいう。それが事実なら、ルノーを逆転してコンストラクターズランキング5位も有り得たわけだ。


 しかし今のトロロッソ・ホンダのマシンパッケージの実力からすれば、コンストラクターズランキング6位が妥当な結果だろうとエドルスはいう。


「現実的に考えると我々の実力としてはランキング6位が妥当な結果だっただろう。シーズンを通してルノーの方がマシンパフォーマンスは優っていたからね。サーキットによっては我々も好パフォーマンスを発揮できたけど、マクラーレンの方が安定して一歩先を行っていたし、ルノーも僅かながら我々を上回っていた。そういう意味ではランキング6位というのは我々のマシンパフォーマンスを反映したものだと言えるだろうね」


 しかしこのコラムでも再三触れてきたとおり、今季のトロロッソ・ホンダはセットアップや戦略などレース運営で大きく進歩を遂げた。さらにイタリアの本拠地ファエンツァだけでなくイギリスにあるファクトリー、ビスターの空力部門の改善にも着手し、風洞のオペレーションも刷新してそれがしっかりと効果を発揮してきた。


 チームとして着実に一歩成長したのが今年のトロロッソ・ホンダだった。それがこうしてしっかりと結果にも反映されたということだ。


 フランツ・トスト代表はチーム史上最高のシーズンだったと振り返ったが、それは結果だけでなく内容を含めてのことだ。


「トロロッソにとっては2度の表彰台を獲得し、これまでで最も成功に満ちたシーズンになった。コンストラクターズランキングでも5位と僅か数点差の6位だ。ドライバーたちは献身的で成熟したパフォーマンスを発揮し、空力部門のもたらしたアップグレードも全て上手く機能した。そして信じられないほど素晴らしい仕事をしたホンダにも大きく感謝したい」


 そして2020年シーズンはアルファタウリと名を変え、さらに強いチームへと成長を遂げるはずだ。


「来年はさらに強くなると自信が持てる。2020年が楽しみだよ」

2019年F1最終戦アブダビGP ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)
2019年F1最終戦アブダビGP ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)



(Mineoki Yoneya)


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