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松崎淳シニアエンジニア インタビュー:タイヤ戦略的にもギリギリだった2連戦「チェコの頑張りが本当に大きい」/F1アメリカGP

2019年11月8日

 毎レース接近した戦いを繰り広げる中団グループの中にあって、レーシングポイントがじりじりと本来の力を発揮しつつある。夏休み明けのベルギーGP以降は、シンガポールGPを除く7戦中6戦に入賞。特に直近の北米2連戦では、18戦メキシコGPでセルジオ・ペレスが中団勢ベストの7位、第19戦アメリカGPもピットレーンスタートから10位入賞を果たした。


 その結果チームはトロロッソ・ホンダを抜いて、選手権6位に浮上。タイヤ戦略が大きな鍵を握ったこの2連戦の戦いを、松崎淳シニアエンジニアが振り返った。

2019年F1第19戦アメリカGP セルジオ・ペレスとランス・ストロールのチームメイトバトル
2019年F1第19戦アメリカGP セルジオ・ペレスとランス・ストロールのチームメイトバトル


──メキシコ、アメリカの2連戦は、レーシングポイントにとってどんなレースでしたか。
松崎シニアエンジニア:
両方とも、チェコ(セルジオ・ペレス)が本当に頑張ってくれました。


──タイヤ戦略的にも、会心のレースでしたか?
松崎シニアエンジニア:
いえいえ、ギリギリでしたよ。


──アメリカはメキシコ以上に、タイヤに厳しいレースという事前予想でした。
松崎シニアエンジニア:
ほぼその印象のままでしたね。正直、どこまで行けるかわかりませんでした。でもピットレーンスタートから、何とか入賞までこぎ着けました。チェコの頑張りが、本当に大きかったですね。


 ランス(ストロール)も乗れていて、いい感じだった。でも1コーナーでぶつけられて、フロントウイングにダメージを負ったのが痛かった。それでリヤのダウンフォースが減ったせいもあると思いますが、バンプに乗って飛び出してしまった。1周目は2台とも、ほぼ最後尾でした。欲を言えば、キリがありません。


──メキシコではきっちり50周をハードで走り切って、中団勢ベストの7位入賞を果たしました。
松崎シニアエンジニア:ヒヤヒヤでした。でもあそこまで行ったら、走り切るしかない。タイヤ的には、まだまだ急激にグリップを失う状態ではなかったですが。


──いっぽうのアメリカは、メキシコとはまったく状況が違っていましたか?
松崎シニアエンジニア:
今回もベースラインは、そんなに違っていない。ただデグラデーションは、思ったより大きかったですね。


──初日フリー走行時に比べてということですか。
松崎シニアエンジニア:
ええ。あとは今年これまでの金曜日のデータを基に、日曜日のコンディションを想定するわけですけど、そのデータと比べてですね。最後は完全に性能が落ち切ってはいなかったんですが、後ろから来る速いクルマを抑え切れるほどではなかった。

■F1アメリカGPでのバンプの影響は?


2019年F1第19戦アメリカGP セルジオ・ペレス(レーシングポイント)、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
2019年F1第19戦アメリカGP セルジオ・ペレス(レーシングポイント)、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

──アメリカのレースは1回ストップと2回ストップ、結果的にどちらが正解だったのでしょう?
松崎シニアエンジニア:
スタートする位置にもよりますけど、普通のグリッドからだったら2回だったかもしれません。それはこれから、戦略担当エンジニアたちと分析してみます。


──路面温度の上昇が、戦略やタイヤの持ちにも影響しましたか?
松崎シニアエンジニア:
温度というよりも、グリップ変化ですね。路面温度は25〜26℃から、32℃に上がっただけですから、タイヤへの影響は大したことはありません。


──今年の路面は、いつも以上にバンプがひどかったです。メカニカルグリップ的に、特別な対応をせざるをえなかった?
松崎シニアエンジニア:
うちのチームでは、そこまでの余裕はとてもありませんでした(苦笑)。1周走って来て(状態を把握して)、あるもので調整するしかない。でもそれだけではやはり厳しくて、ランスがレース中に飛び出したりした。あれは、バンプが原因でした。


──このサーキットは3日間の路面コンディションの改善代が、それほど大きくないと聞いていました。しかしQ1では急激にラップタイムが伸びて、それに戸惑ったチームも少なくなかったようです。
松崎シニアエンジニア:
そうですか。うちとしては、ほぼ予想通りでしたよ。しっかり作動温度域に入れてあげれば、あとはドライバーがしっかりやるだけですから。とはいえ初日の2回のセッションは、かなり寒かったですね。


──そこから予選、レースと、どんどん暖かくなっていきました。
松崎シニアエンジニア:
ええ。でも先ほど言ったように、路面温度自体はそれほど急激に上がったわけではありません。

■タイヤのテストでも一歩先をいくメルセデス

──2020年タイヤは、どんな感触を持ちましたか?
松崎シニアエンジニア:
まだちゃんと、比較するまでは行きませんでした。クルマとドライバーのウォームアップに、使わせてもらった程度です。


──ここで少しぐらい走っても、有益なデータは取れないですか?
松崎シニアエンジニア:
パッと乗って、(現行タイヤと)すぐに差が出るくらいなら話は別ですが。アブダビでちゃんとしたタイヤテストをしないと、実際のところはわからないですね。


──メルセデスは2台が分担して、前後に気流センサーをつけて走っていました。
松崎シニアエンジニア:
もうタイトル決めてますからね。つまり強いチームは、いつも一歩先を行けるということですね。ここで取ったデータで、アブダビ用の準備ができる。一方でわれわれプライベーターは、そこまでの余裕はとてもない。彼らに追い付くのは、果てしなく遠い道のりです。


──資金的には楽になったとはいえ、マシン開発はなかなか順調には行っていないということでしょうか。やはり、空力ですか?
松崎シニアエンジニア:
全体的な問題ですね。今年の中団グループの戦いは、例年以上に厳しいですし。マクラーレンだけでなく、ルノーもトロロッソも本当に速い。厳しい戦いが、これからも続くと思います。



(Kunio Shibata)


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