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F1 Topic:「僕のクルマはピットインできなかった」というアルボン。問題となったパワーユニットの症状とは
2019年7月16日
「僕にとって、今日のレースはタイヤを管理しながら戦う難しいレースだった。セーフティカーが出たとき、ラッキーなドライバーもいたし、そうでないドライバーもいた。僕のクルマはピットインできなかった」
F1第10戦イギリスGP決勝レースのほとんどをトップ10内で進めていたアレキサンダー・アルボンは、そう言って事実上の母国グランプリで入賞できなかった悔しさを表現した。
なぜ、アルボンはピットインできなかったのか。トロロッソのテクニカルディレクター、ジョディ・エギントンはこう説明した。
「今日のレースは、もっとうまくやれたのではないかと思う。アレックスは素晴らしいドライブを見せてくれたが、レースを通して抱えた彼のマシンがトラブルを抱えていたため、それに対応しなければならなかった。そのためピットストップ戦略のオプションが制限されたんだ。タイヤを労って走行していたものの、彼のタイヤはレースが終わる2周手前で完全に終わってしまい、(ニコ)ヒュルケンベルグを抑えきれなかった」
チーム側も、なぜアルボンが2度目のピットインをしなかったのか、詳細は語らなかった。ただし、アルボンは少しだけ、その件について次のように触れた。
「クルマに触ることができない問題を抱えていて、周りのドライバーがピットインしても僕はステイアウトしなければならなかった。フラストレーションのたまるレースだったけど、そういうこともある」
この疑問について、口を開いたのがホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターだった。理由は、その原因がホンダ側にあったからだ。
「PU(パワーユニット)に高圧系に関連した問題が出て、警告灯が点灯していたため、(ピットインしても)エンジンを切らないと、クルマに触ることができない状況にあることをチームに伝えました」
ここでトロロッソの前に並べられた選択は、ピットインしたあと、エンジンを切ってからタイヤ交換を行い、再びエンジンを始動させてレースに復帰するプランAと、そのピットストップロスを捨ててコースにとどまり続けるプランBの2つがあった。
■ミディアムタイヤで40周を走ることになったアレクサンダー・アルボン
問題が発生したとき、すでにアルボンは1回目のピットストップを終えて、タイヤをソフトからミディアムに交換していた。つまり、2種類のコンパウンドを使用しなければならないという義務を済ませており、そのままチェッカーフラッグを目指せる立場にいた。
ただし、アルボンがタイヤ交換を済ませたのは、13周目。残り40周を走りきるにはミディアムは適していないコンパウンドでもあった。
果たして、チームが採った決断は、2回目のストップは得策ではないというものだった。その判断は、レース終盤までは機能していたが、残り10周あたりからアルボンのタイヤは性能が大きく落ち、8番手から12番手までポジションを落としてチェッカーフラッグを受けた。
高圧系のトラブルは、今年のバーレーンGPではダニエル・リカルド(ルノー)が、残り数周でトラブルが発生しリタイアしたとき、同じ問題が発生していたため、マシンを降りる際、コクピットからジャンプして着地した後、外したステアリングホイールを装着し直すことができず、結果的にセーフティーカーが導入され、そのままレースが終了する形となった。
ホンダに関して言えば、田辺TDが現在のポジションに就いた2018年からはこのトラブルは起きていなかった。ホンダがこの類のトラブルを発生させたのは、筆者の記憶によれば、2017年のマクラーレン・ホンダ時代のウインターテスト以来だと思う。
2回目のテストで、ストフェル・バンドーンのパワーユニットに絶縁不良が発生し、地絡(電気が大地に接触して電流が流れること)が疑われる症状が発生したことがあった。このとき、ホンダF1を統率していた長谷川祐介前総責任者は次のように語っていた。
「現在のF1マシンは回生システムを搭載して高圧電流が流れているため、プラスもマイナスも車から完全に浮かせています。それがどちらかでも地面に接触すると地絡となるわけですが、いまのF1でそういうことはおきることはまずない。ただ高圧端子がゴムなどの絶縁物質で覆われていても、地面に接触すると地絡状態になってしまいます」
「今回のトラブルも完全にショートしていたわけではなく、絶縁抵抗があるレベルを下回ったために、ウォーニングが出ていただけです。この類のトラブルはちょっとした絶縁不良でも起きるので、修復するのはそんなに難しいことではないんですが、どこが絶縁不良を起こしているかを探すことのほうが大変な作業になるので、パワーユニットごと交換することにしました」
約2年ぶりに起きた非常に稀なトラブル。次戦ドイツGPまでに対策が講じられることを願う。
(Masahiro Owari)
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