ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブル、トロロッソの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のレッドブル、トロロッソのコース内外の活躍を批評します。2019年F1第9戦オーストリアGPを甘口の視点でジャッジ。
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ホンダがF1第9戦オーストリアGPで、ついに復帰後、初優勝を果たした。
2014年にエンジンに関するレギュレーションが変更され、現在の複雑なパワーユニット(PU/エンジン)が導入されて以降、前戦フランスGPまで唯一、優勝経験がPUマニュファクチャラーはホンダだけだった。馬力だけをみれば、ホンダはいまだトップクラスとは言えない状況が続いている。
しかし、レースは馬力だけでは勝てないことは、今シーズン最も馬力があると言われているフェラーリがいまだ勝てないことでもわかる。馬力を生かすも殺すも車体(ダウンフォース)次第なのである。
さらに、いくら車体が良くても、あまりに非力なパワーユニットではさすがに勝つことはできない。つまり、レースというのは、車体とパワーユニットのパッケージとしての総合力が問われることになる。
さらにいえば、このパッケージの性能を引き出すドライバーの腕とチームのセットアップ能力、そしてタイヤの使い方やレース戦略、はたまたピットクルーのタイヤ交換作業なども含めたチームの総合力がレース結果を大きく左右する。
マクラーレン・ホンダ時代、「車体はグリッドで最強のうちのひとつ」と、マクラーレンは期待していたほどの成績が出せない理由を、非力なホンダPUのせいにするかのような発言を繰り返していた。もちろん、マクラーレン時代のホンダのPUはパワーも信頼性も不足していたことは事実だ。しかし、不振の責任をすべて転嫁されるほど、ホンダがひどくなかったことは、その後のホンダの活躍を見れば、わかるだろう。
今回のオーストリアGPのレース前に、ホンダはレッドブルの首脳陣とミーティングを行なった。その席でレッドブルの総帥デートリッヒ・マテシッツはこう言ったという。
「今年、ホンダは信頼性とパワーに関して、すごく努力している。本当にありがとう。ホンダとタッグを組めて良かった」
こうした信頼関係を築くことができていたからこそ、オーストリアGPの週末は、ホンダの山本雅史F1マネージングディレクターが「金曜日に田辺(豊治F1テクニカルディレクター)とも『ここは多少リスクを負ってでも、狙っていこう』と話し合っていた」と言うように、ホンダもパワーユニットのポテンシャルを最大限引き出すことにつながったのだと考える。
優勝会見で、フェルスタッペンは「何よりうれしいのは、今日の勝利で僕たちの中に存在していた、いくつかの疑問や不安が吹き飛んだことだ」と語った。
それは、ホンダにとっても同じだった。この1勝が、ホンダのスタッフに「自分たちにも勝てるポテンシャルがあるパワーユニットを開発できる」という自信を与えることになれば、この1勝は1勝以上の価値のある勝利となることだろう。
(Masahiro Owari)