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【F1ブラジルGP無線レビュー】「どうしてそれをもっと早く教えてくれないんだ」トラブルとも戦っていたハミルトン

2018年11月14日

 予選でブラジルGPのポールポジションを奪ったルイス・ハミルトンは、そのままレースをリードし順調に勝利への道をひた走っているかに見えた。しかしレッドブルのマックス・フェルスタッペンが驚異的なペースで追い上げ、4周目にはセバスチャン・ベッテルまで抜いて3位に上がってきた。


メルセデス(以下:MGP)「VER(フェルスタッペン)がP3、BOT(バルテリ・ボッタス)の後ろに来た。VET(ベッテル)はP5」


ハミルトン(以下:HAM)「VERのタイヤは?」


MGP「彼も君と同じSS(スーパーソフト)だ。デフINIT6を使え」


 メルセデスAMG勢はタイヤのグリップが低下してペースを抑えながらの走行。しかし9周目にはラバーが安定しグリップが戻ってくる。


HAM「タイヤはまた戻って来たみたいだ」


MGP「OK、状況を見てみよう」


 10周目、フェルスタッペンはボッタスまで抜いてついに2位に浮上。ハミルトンのペースは「ハハハ、全然遅いよ!」と余裕をみせる。しかしハミルトンも慌ててはいなかった、


MGP「後ろはVERになった。ギャップ2.2、ペースは14.3」


HAM「タイヤはOK。ペースを上げることもホールドアップすることもできそうだ」


MGP「リヤの摩耗によって温度が下がってきたようだ」


 19周目、メルセデスAMGはハミルトンをピットに呼び入れる。しかしハミルトンはミディアムタイヤのフィーリングが思わしくなく、ピットストップが早すぎたのではないかと苛立ちを見せる。


HAM「タイヤのフィーリングが良くない」


MGP「了解。とにかく温度をマネージメントしろ。VERは13.7」


HAM「ピットストップが早すぎだよ」


MGP「アンダーカットを阻止するためだ」


HAM「リードを失っていない? 彼はもうピットインした?」


MGP「まだだ。我々は彼に対してゲインしていっているよ。彼はまだ2.5秒ピットウインドウ内だ」


HAM「前のヤツらを引き離しているのかどうか、情報をくれ!」


MGP「VERは13.1、彼と同じペースで走れている」


HAM「OK、他の情報も教えてくれ。VERはピットウインドウ内なのか?」


MGP「0.7秒ウインドウ内だ」


HAM「どうしてそれをもっと早く教えてくれないんだ」


MGP「VERは13.6。このペースならOKだ。ストラットモード6にしろ」

■パワーユニットの出力低下に見舞われたハミルトン

 1セット目のタイヤをチェックした結果、摩耗量に問題はない。しかしレース中盤を迎えハミルトンはパワーユニットの出力低下を感じ始めた。


 シーズン終盤に来て年間3基でローテーションしているハミルトンのパワーユニットはマイレージが厳しくなり、さらには排気温度の上昇症状が発生していた。ブリックスワースのメルセデスAMG HPPと連携して対策が練られ、パワーユニットのリスクを下げるためのモードへの切り替えを余儀なくされた。


HAM「僕のエンジンはOK?」


MGP「状況は常にモニターしているよ。今のところは大丈夫だ」


HAM「パワーが落ちている」


MGP「OK、チェックするよ。PUの温度が上がっているが、自動的にケアされるから大丈夫だ」


HAM「雨が降ってくることを願うしかないよ」

フェルスタッペンの追撃を受けるハミルトン


 後方からは35周目までスーパーソフトで引っ張ってソフトタイヤに履き替えたフェルスタッペンが猛スピードで追い上げてきた。タイヤの差とパワーユニットの状況を考えれば、すでに勝負はあった。


 40周目のメインストレートでハミルトンは特に抵抗することもなくフェルスタッペンに首位を譲り渡した。


MGP「P2だ。PUをターンダウンしよう」


HAM「僕らにできることは何もないのか?」


MGP「やれるだけのことは全てやったよ、ルイス」


HAM「BOTもタイヤに苦しんでいる?」


MGP「苦しんでいない。PUを落としているんだ」


HAM「これで大丈夫?」


MGP「あぁそう思う」


 メルセデスAMGとハミルトンは2位キープの走りに切り替えていた。しかし44周目、フェルスタッペンが周回遅れのエステバン・オコンとまさかの接触で後退。期せずしてハミルトンは再び首位に戻った。

■勝利に向けハミルトンはパワーユニットの出力アップを提案も…

 なんとかこの勝利を掴み獲ることができないものか。ハミルトンは再度パワーユニットの出力アップを提案するが、チームはリスクを回避するためにこれを却下。そのくらいハミルトンのパワーユニットは切羽詰まった状態だったのだ。


HAM「PUのパワーを少し戻せない? こんなふうにターンダウンした状態で走るには先が長すぎる」


MGP「了解、しかし現段階ではPUを守らなければならない。何かできることがないかチェックしているところだ」


HAM「僕はこのポジションを失いたくない」


MGP「あぁ分かるよ、でも我々はPUを失いたくない」


 しかしフェルスタッペンはフロアに大きなダメージを負い、ペースが上げられない。ギャップはじわりじわりとしか縮まらず、結局ハミルトンはフェルスタッペンを1.469秒後方に従えてトップでチェッカー。今季10勝目を飾ると同時に、2018年のコンストラクターズタイトル獲得を決めた。


MGP「イエス! ダブルワールドチャンピオンだ! ドライバーズチャンピオンのルイス・ハミルトン、コンストラクターズチャンピオンのメルセデスAMGだ! PUを労るためにスローダウンせず通常のスピードで走って戻ってきてくれ」


HAM「イエス! どうだ、見たか! 本当に素晴らしい5年間だった。みんな、本当に素晴らしい仕事をしてくれたよ。みんなの努力のおかげだよ。このチームで走れることを本当に誇りに思うよ」

メルセデスは新PU規定が施行されて以来、5年連続でコンストラクターズチャンピオンとなった


 マシンが最速であるときには勝ち、マシンが最速でなくとも諦めることなく最良の結果を確実に掴み取り、勝利すら手繰り寄せる。ブラジルGPの勝利はフェルスタッペンの自滅により転がり込んだものだったが、これこそがまさにメルセデスAMGが最強のチームであり激戦の2018年シーズンの中でコンストラクターズタイトルを掴み獲った理由だった。



(Mineoki Yoneya)


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