トロロッソ・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のトロロッソ・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は2018年F1第7戦カナダGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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カナダGPのフリー走行3回目で、ピエール・ガスリーのパワーユニットがトラブルに見舞われた。
トラブルの箇所と原因は明らかにされていないが、直後の予選に向けてトロロッソ・ホンダは、ガスリーのPUをペナルティを回避するために、バーレーンGPからモナコGPまで走らせた旧スペックに交換した。
トラブルが起きたこと自体は、ホンダにとってまたクリアしなければならない課題がまたひとつ増える結果となった。しかし、このトラブルによって図らずも、カナダGPに投入された新スペックのICEの性能が高いことが判明した。
それは、予選で旧スペックを走らせたガスリーが、予選後に「PUを新スペックに載せ替えてほしい」と直訴することになったからだ。
「旧スペックで16番手からスタートするよりも、ペナルティを受けてでも新スペックで19番手からスタートしたほうが、ポイントを獲得するチャンスが増えるだろうと思った」(ガスリー)
もちろん、この交換には「カナダで交換しておけば、次のフランスGPでペナルティを受けることもない」というガスリーの思惑もあったことは確かだ。だが「19番手スタートからでも新スペックに交換したほうが入賞する可能性が高い」というガスリーの言葉に偽りがなかったことは、11番手までポジションアップした日曜日の走りが証明した。
レース後のガスリーは、ポイントを獲得していないドライバーとしては珍しく笑顔だった。
「ハースを抜いたし、バックストレートで今年初めてフォース・インディアをオーバーテイクしたよ」
ハースはフェラーリPUで、フォース・インディアはメルセデスPU。ストレートで速いこの2チームをオーバーテイクしたことで、ガスリーはホンダが投入した新スペックに、レース結果以上に今後の手応えを感じていたのである。
ホンダの新スペックに可能性を感じていたのは、ガスリーだけではない。2019年へ向けてホンダと交渉しているレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、レース後にこう言った。
「ホンダのパフォーマンスには非常に勇気付けられたよ」
過去3年間も含めて、ホンダがこれまで投入してきたPUの評価で、今回の新スペックが最も高いアップデートだった。
(Masahiro Owari)