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【F1新車分析】メルセデスW09:チャンピオンマシンの基本コンセプトは継続し、さらに最適化
2018年2月27日
F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。車高の一定化させるためのリヤサスペンションの工夫など気になる部分をピックアップ。
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(1)不動不変の基本コンセプト
昨年型W08はロングホイールベースと、ほぼ水平な車高が特徴だった。これは空力責任者マイク・エリオットの手になるもので、彼はロータス時代の2012、13年にも同コンセプトのマシンを送り出している。
W08のホイールベースは、フェラーリより14cmも長かった。その目的はふたつ。レーキ角を付けなくとも、ディフューザーの性能を目いっぱい発揮すること。そして空力デバイスをできるだけ多く加えるための、スペース確保だった。とはいえホイールベースを伸ばすと、特にシーズン序盤の重量増加は避けられない。そうするとライバルチームほどにはバラストが自由に付けられず、それが結果的にピレリタイヤをうまく持たせられないことにも繋がった。
それでもメルセデスは、今季のW09もキープコンセプトで行くと決断した。15ポール、12勝を挙げたマシンなのだから、当然の判断と言っていいだろう。ただしホイールベースをシーズン中に変えるのは非常に難しいのに対し、レーキに関してはその限りではない。実際メルセデスは昨年終盤、何度かトライしている。おそらく今季も状況次第では、再びレーキを試すと思われる。
一見しただけでは去年型に非常によく似たW09だが、たとえばサイドポッドはかなり絞り込まれている。マシン両脇を流れる気流を、さらに最適化する努力の一環である。
(2)フロントサスペンション
昨シーズン序盤のメルセデスは、予想外の苦戦を強いられた。彼らがアドバンテージを持っていたトリックサスペンションを禁止され、それによってマシン挙動が一気に不安定になってしまったからだった。空力性能を100%発揮するためには、車高変化ができるだけ少ない方がいい。
その状況は今年も変わらないが、フロントサスペンションを見る限りは、去年との差異はほとんど認められない。ジオメトリーは同じだし、アッパーアームの車体側取り付け位置も、去年同様モノコックよりわずかに高い(赤矢印)。
ホイール側のピボットが湾曲して接続されているのも、W08と変わっていない。すでに紹介したように昨年のトロロッソSTR12、そして今季では今のところレッドブルRB14、ザウバーC37が同じ手法を採用している。
(3)トリックサスペンションに替わる工夫
一方リヤサスペンションに関しては、フロント以上の変更が見て取れる。たとえばウィッシュボーンのホイール側への取り行け方は、昨年型とはかなり違う(青矢印)。
取り付け部分の突起は、かなり大きいように見える。さらに昨年型はアーム側の固定フックにアッパーアームが垂直に接続されるよう、末端を湾曲させていたのに対し、W09ではアームは真っすぐなままに、むしろ固定フック自体が車体側に傾斜している。
このジオメトリー変更の意図はおそらく、加減速時のサスペンションの収縮伸長をこれまでと違うやり方で制御したかったのではないか。トリックサスペンション禁止でいっそう難しくなった車高の一定化への、メルセデスとしての回答と思われる。
(4)サイドポッドはあえていじらず
サイドポッドのデザイン自体は、大きく変わっていない。去年のフェラーリが先鞭をつけ、今季のウイリアムズやレッドブルが追随したサイドポッドを高い位置に引き上げる手法を、メルセデスは採用しなかった。そのため上側のサイドインパクトバーは、相変わらず空気取り入れ口上端にある。形状がやや変更されたことは、赤く塗りつぶした部分の比較で明らかだ。
一方コクピット上部のエアインテークは、これまでの3分割から4分割に複雑化した。真ん中がエンジン冷却、両側はERS冷却用ラジエターへと新鮮な空気を取り入れる。他のニューマシン同様、エアインテークの形状はやや角張っているのは、ハロによる乱流の影響を極力抑えるためだ。
(5)暫定的な空力処理
W09の細長いノーズは、今季の新車では今のところ唯一の存在となりそうだ。今回発表されたターニングベインやバージボードなどの空力パーツは、マシン下部へいかに多くの空気を流すかに腐心した結果に見える。とはいえこれらはあくまで暫定的なデザインで、バルセロナテストを経て開幕戦までには大きく変更されるはずである。
バージボード下の丸みを帯びたデフレクターの形状は、昨年型フェラーリの影響を大きく受けたもの。昨年型のメルセデス独自のアイデアを捨てて、ライバルのデザインに追随した事実は非常に興味深い。
(6)控えめなミニウイング
モンキーウイングとTウイングの禁止を受け、メルセデスも他チーム同様にさまざまな工夫を凝らしている。たとえばウイリアムズがミニTウイングを投入したのに対し、メルセデスはかなり幅の狭いミニウイングで対処している。取り付け位置も、極力後方だ。とはいえこのパーツも、今後どんどん形状進化して行くはずである。
(7)弱点を強化し、長所を伸ばす
昨年型W08はエキゾーストが2本のウェストゲートと密着していたのに対し、W09ではカーボン製の筒で分離させている。
メルセデス製パワーユニットの信頼性の高さは、メルセデスのみならずフォース・インディアやウイリアムズなどのカスタマーにとっても、非常に大きな武器である。年間3基という極めて大きなハードルも、彼らだけはそれを逆にアドバンテージにできるかもしれない。
車体に限っていえば、メルセデスW09の勝利のカギは、去年いくつかのレースで苦しんだ気紛れな挙動が、いかに改善されたかにかかっている。
この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています
(Translation:Kunio Shibata)
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