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40年前に日本を沸かせたコジマKE007&長谷見が鈴鹿サーキットに降臨

2017年11月18日

 どのピットガレージを覗いても、感動で心が揺さぶられる今週末の鈴鹿サーキット。「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2017」は、往年のマシンが展示されるだけではなく、実走して心地よい快音も提供してくれる、世界規模でも大きな注目を集めるイベントだ。そして、今年集結した20台以上のレジェンドF1の中でも、ひときわファンの目を引き付けるマシンが存在する。


 コジマKE007・フォード。今から40年前に行われたF1で、ヨーロッパのレギュラー組が大慌てするほどのスピードを見せつけた純国産マシンだ。


 コジマKE007は、国内でレーシングカーコンストラクターとして活躍していたコジマエンジニアリングが、1976年に開催された『F1世界選手権イン・ジャパン』向けに製作したマシン。長谷見昌弘氏のドライビングにより、ポールポジション獲得も夢ではない速さを見せつけた。

コジマKE007
コジマKE007


「富士スピードウェイは何千周も走ったコースですから、攻略のキモとなる部分は我々には見えていたんです」と長谷見氏。


「クルマを設計した小野(昌郎)さんにも、『奇をてらったことはせず、スタンダードな富士仕様を作ってください』とお願いしていました。しかも当時はヨーロッパのトップ連中が使用するエンジン(フォード・コスワースDFV)も手に入りましたからね。なので、自分たちにとっては普通のことで、衝撃的でもなんでもないんです」


 しかもコジマ陣営はさらなる武器も手にしていた。


「いい意味でひとつだけ誤算だったのはダンロップタイヤ(日本ダンロップ)。あれはすごかった! 自分たちが想定したよりも保ちがよかったので、予選も決勝もさらにワンランクずつ柔らかいタイヤが使えた。予選用のタイヤが決勝で使えることが分かったので、予選2回目(金曜日午後の予選)にはさらに柔らかいタイヤを持ち込めたんです」


 最高速を重視した富士に特化したマシン、一線級のエンジン、そして恐ろしくグリップするタイヤ。各要素がより複雑化する決勝での実力は未知数だったが、長谷見氏のドライビングにより、ポールポジションを獲得できるだけの速さをこの純国産マシンが有していたことは間違いない。


 しかし、その強烈なグリップ力を備えたタイヤが影響したのか、日本の期待を一身に背負ったコジマKE007は2回目の予選で大クラッシュを喫してしまう。


「タイヤが良すぎて、当初想定していた以上の入力がサスペンションに悪さをしたのでしょうね。マシン自体の剛性感などには全く問題はありませんでしたから」


 当時の富士スピードウェイのコーナーで、最もスピードが乗る最終コーナーでのアクシデント。長谷見自身には奇跡的に怪我はなかったが、コジマKE007のダメージはモノコックにまでおよび、翌々日の決勝までには修復が不可能だと思われた。


 ところが、ここからまた日本のコンストラクターたちはその底力を世界に見せつける。富士スピードウェイ脇の通称『大御神レース村」から各ガレージの面々が集い、無償で修復作業をサポート。ほぼ造り変えが必要だったコジマKE007を日曜日の朝にはコースに送り出したのだ。

鈴鹿サーキットを走るコジマKE007
鈴鹿サーキットを走るコジマKE007


「朝、走り出したらラック・アンド・ピニオン(ステアリング機構の根幹部分)が渋くなっていて、切ったステアリングを全て自分で戻さないといけない状態。しかも雨の中だったからまともに運転することすら難しかった。完調では無いマシンの中で、そこが一番つらかったかな」と長谷見氏。


 それでも「まっすぐにすら走らない状態だったけど、協力してくれたみんなのことを思うとね。」と決勝レースを走り切り、11位で完走したのだった。


 今回、残念ながら長谷見氏が操るKE007の姿を見ることはできないが、40年も前にF1で共に上位を目指して戦ったコンビが、同じ場所でファンに対してモーターレーシングの素晴らしさを改めて伝えてくれている。


 明日の天気は「晴れ」という予報なので、ぜひ鈴鹿サーキットを訪れて、各車のサウンドとともに、ひとりと一台の素敵なコレボレーションにも思いをはせてみてほしい。

コジマKE007
コジマKE007



(AUTOSPORTweb)


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