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【F1マレーシアGP無線レビュー】ガスリー、デビュー戦に手応え「日本GPではもっと上手くやれる」

2017年10月3日

 マレーシアGPで急きょF1デビューを飾ることになったピエール・ガスリーは、高温多湿でタフなコンディションにもかかわらず完走という最低限の目標を果たし、F1で戦う能力があることを証明してみせた。 


ガスリー(以下、GAS)「リヤがすごく不安定だ。スタビリティを良くしないとコーナーの入口で攻めて入っていけない。スタビリティを良くするだけでかなりパフォーマンスを上げることができると思う」


 フリー走行ではマシンのフィーリングに満足し切れていなかったガスリーだったが、予選に向けたセットアップの調整が上手く決まり、予選では僚友カルロス・サインツJr.と0.156秒しか違わないタイムを刻んでみせた。


GAS「クルマは良かったしマシンバランスはこれ以上なく満足。リヤのスタビリティも良くなったし自信を持って走れた。ウォームアップのしかたでグリップもさっきより良かった」


 Q1の後には無線でそう報告したが、Q2では15位。これが今のトロロッソの限界だった。
 決勝ではスタート直後のターン1はコンサバティブに行ったというが、ターン4でロマン・グロージャンとバトルを演じ出口で彼を押し出すようなかたちになった。


グロージャン(以下、GRO)「このトロロッソがあちこち動き回りやがって!XXX! このへんの若いヤツらはレースのしかたを勉強する必要がある!」


 グロージャンは不満をぶちまけたが、スチュワードがガスリーにペナルティを科すことはなかった。その後もグロージャンを抑えて15位を守りながら、7位ランス・ストロールを先頭とするトレインの中で走る。


 フリー走行から問題になっていたリヤの不安定さを抑えるために、リヤタイヤのマネージメントが重要だった。レースエンジニアからその指示が飛ぶ。


トロロッソ(以下、STR)「グッジョブ、グッジョブ。リヤのスリップマネージメントに集中しろ」


 8周目にはマシンとタイヤへのダメージを懸念して縁石の使い方に関する指示も受けた。しかしマシンのフィーリングはまだまだ上々だった。


STR「ターン8の出口の縁石は避ける必要がある。アグレッシブに使い過ぎている。クルマはどう?」


GAS「今のところリヤは安定しているよ」


 12周目にピットインしたガスリーは初めてのF1でのピットストップもそつなくこなし、23周目にはまだピットインしていないザウバーのパスカル・ウェーレインをオーバーテイクした。

F1マレーシアGP ピエール・ガスリー

 全開率がそれなりに高くセーフティカーも入らないセパンでは、どのメーカーのパワーユニットも燃費がキツくなる。集団の中で前のペースに付き合わされているガスリーも、リフト&コーストで燃費セーブをしながら走っていた。


STR「グッジョブ、ピエール。燃費セーブに集中しろ」


 さらにじわじわと前方のケビン・マグヌッセンとフェルナンド・アロンソのバトルに近付き、32周目にアロンソがマグヌッセンをパスすると、ガスリーはその背後に迫った。


 エンジニアからは燃費セーブをやめてマグヌッセンを抜けと指示が飛んだ。


STR「リフトオフをやめてマグヌッセンにアタックしろ。リフトオフなしでマキシマムアタックだ」


 一方で29周目にサインツがパワーユニットの電気系トラブルでリタイアしており、ガスリーのマシンにも不安がないわけではなかった。MGU-Kの制御に関するものと思われるセッティング変更の指示もあった。


STR「MF(マルチファンクション)B、Kパワー4」


 依然としてマグヌッセンが攻略できないままレースは終盤に差し掛かったが、3位リカルドが後方に追い付いてきた瞬間はオーバーテイクのチャンスだった。4位セバスチャン・ベッテルと争うリカルドを邪魔しないようにという意味も含めながら、レースエンジニアがガスリーに無線で伝えた。


STR「もうすぐ後ろにリカルドが来てブルーフラッグを振られる。マグヌッセンをオーバーテイクする絶好のチャンスだ、プッシュし続けろ」


 しかしマグヌッセン攻略は難しく、レース序盤でピットインをしたガスリーのリヤタイヤもデグラデーションが進み始めていた。50周目、ガスリーはリヤのグリップ低下を訴え、エンジニアはなんとか奮い立たせるように状況を伝える。


GAS「リヤに苦しんでいる」


STR「他のドライバーはウチ以上に苦しんでいる。君は良くやっているよ、プッシュし続けろ」


 後方からは33周目に2度目のピットインをしてガスリーより20周もフレッシュなスーパーソフトタイヤを履いたグロージャンが追い上げてくる。グロージャンは「信じられない、左フロントが終わってしまった!」と言いながらも54周目のターン1〜2でガスリーをパス。結局ガスリーは14位でチェッカードフラッグを受けることになった。


 シートが不完全で身体が動き回り腰に痛みを抱えながらの1時間半だったが、レース後のガスリーは晴れ晴れとした表情を見せ、いつまでも尽きない報道陣からの質問に笑顔で応えていた。


「ドリンクシステムも完璧に動いてくれなくて口じゃなくて顔に掛かってしまうような状態だったし、すごくタフなレースだった」


 デビュー戦としては満足。しかしまだまだ進歩の余地はある。1週間後の日本“復帰戦”ではもっと上手くやってみせるとガスリーは笑顔で言った。

F1マレーシアGP ダニール・クビアトに代わりF1デビューを果たしたピエール・ガスリー

「全力は尽くしたしできる限りのプッシュはしたよ。タイヤマネージメントにはもう少し経験が必要だと思ったし、ブルーフラッグも上手く生かせなかった。でもそれは練習を重ねれば上手くなるよ、間違いなくね。これからレース内容とデータを見直すよ。来週の日本GPではもっと上手くやれるようにするためにね!」



(Mineoki Yoneya)


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