松下信治のF1テスト参加が決まりましたが、これはF1のテスト規制に関連したインシーズンテストの若手起用義務に基づいたもの。では、どのような規定になっているのでしょうか?
今年はバーレーンとハンガリーの2グランプリの直後に同地で2日間ずつ開催されているインシーズンテストですが、2017年規定の場合、F1に参戦する各チームは年間4日間行なわれるインシーズンテストのうち、少なくとも2日間は“若手ドライバー”を起用しなければならない決まりになっています。“若手ドライバー”とはF1参戦経験が2戦以下のドライバーのことを指します。
以前のF1では無制限にテストが行なわれており、テスト専門のスタッフと車体を用意してグランプリとグランプリの間には必ずと言って良いほどテストを行なっていましたが、2008年からは年間テスト走行距離は3万km、2009年からは年間1万5000kmに規制され、基本的にシーズン中のテストは禁止されました。例外は合計100km以下のフィルミング用走行(最大2日間)と、15km以下のデモ走行イベント(最大2日間)、ピレリによるタイヤテストですが、いずれもデモ走行用タイヤやプロトタイプタイヤが用意されるため本格的なテストはできません。
この規制が設けられて以降、若手ドライバーたちにとってもF1をテストドライブする機会が激減してしまったことを受けて、FIAは若手に走行機会を与えるためのテストを設定。2009年にはシーズン閉幕後に行なわれていましたが、2014年からはシーズン中に2日間のテストが4回、2015年以降は2日間を2回ずつ開催しています。
若手ドライバーにとって貴重なドライブのチャンスであり、これを足がかりにしてFP-1出走の資格を得たり、その先のテストドライバー就任やシート獲得に繋げたりという機会になります。
それと同時に、中団以下のチームにとっては1日のテストドライブに対してドライバーから支払われる持ち込み資金を得るという収入源としても重要な役割を果たしています。また、貴重な本格テスト走行の機会でもあるため、上位チームはレギュラードライバーと若手ドライバーを交互に走らせて開発テストに活用します。年齢的には若手と言えないながらも日頃シミュレーターの走行などを担当しているF1出走経験の少ないチーム所属のテストドライバーが起用されるのはこのためです。
若手ドライバーにとっては走行のチャンス、資金潤沢でないチームにとっては収入のチャンス、上位チームにとっては開発のチャンスと、それぞれにとってWIN-WIN-WINの関係になっているというわけです。