久しぶりのポールポジション獲得にもほとんど笑みを見せなかった、いつもどおりのキミ・ライコネン。しかし日曜のレース後、彼の固い表情にははっきりとフラストレーションが表れた。
「1-2位はチームにとって素晴らしい結果。でも、僕自身にとって素晴らしい結末とは言えない」
狭い公国のコースで首位から好発進、順調に周回を重ねていたにもかかわらず、ピット作戦で2位に転落してしまったのだから喜べないのも当然。不機嫌な表情は、ライコネンがどれほどモナコの勝利に懸けていたか示すものでもあった。
ウルトラソフト+50℃を超える路面温度。モナコGPの週末はフェラーリが得意とするコンディションで進んだ。対照的に、深い悩みを抱えてしまったのはメルセデスで、木曜朝の涼しいコンディションでのみ、ルイス・ハミルトンが好調だったことを考えると、彼らの不調が高い路面温度と無関係でないことが分かる。
「FP1からFP2にかけて行ったセットアップ変更で、僕らは間違った方向に進んでしまった」と、バルテリ・ボッタスが言った。しかし引き返すようなかたちでセットアップを修正したFP3でも、木曜朝のようなフィーリングは戻ってこなかった──―。
ウルトラソフトが投入される舗装とコース形状。そこに高温が加わると困難を抱えてしまうメルセデスの性格は、まだ修正し切れていない。前後のタイヤを同時に作動させることがとても難しいのだ。
とりわけ、コーナー入り口でリヤをスライドさせるハミルトンのスタイルでは、リヤタイヤの表面がオーバーヒートし、出口でもトラクションがかかりにくくなる。その症状を抑えようとすると、今度はフロントタイヤが冷えてしまう。
メルセデスとは逆に、フェラーリは暑いコンディションほど速くなる。マシン自体が暑さに強いうえ、今年のタイヤをうまく使いこなすことによって、長年抱えてきた“ウォームアップできない”悩みを解消した。そして、昨年までとはまったく異なるF1マシンを駆って、ベッテル以上に滑らかに公国のコースを走り抜けたのがライコネンだった。