「今日のレースは、ドライバーに尽きる」
アメリカGPを5位と9位で終えた長谷川祐介総責任者は、今シーズン4回目となるダブル入賞を果たした最大の要因をそう語った。
この日、マクラーレン・ホンダの2人のチャンピオンが作った最初の見せ場が、スタートとその後のオープニングラップだった。12場からスタートしたフェルナンド・アロンソは、1コーナーでバルテリ・ボッタスとニコ・ヒュルケンベルグの接触を上手に回避して9番手に浮上。
一方、19番手からのスタートとなったジェンソン・バトンは、1コーナーの混乱をすり抜けただけでなく、11コーナーで再び起きた混乱にも巻き込まれることなく、1周目のコントロールラインをなんと8つもポジションを上げて11番手で通過していった。
1回目のピットストップで1ストップ勢の後ろに回ってしまうという不運に見舞われた2人だが、この日のマクラーレン・ホンダはストレートで速かったこともあり、2人のチャンピオンは、コース上で果敢にオーバーテイクして、実力でポイントを取りに行った。
こうして、2人は20周目から2台そろってポイント圏内を走行。しかし、見せ場はこれだけでは終わらなかった。レース終盤、5位の座を賭けてアロンソはサインツJr.、フェリペ・マッサと激しいバトルを展開するのである。
当初、チームはタイヤのデグラデーションを考えると、チェッカーフラッグまでタイヤが持たない可能性があると考え、アロンソに対して「あまりプッシュしないほうがいいのではないか」という意見が出ていた。
しかし、最終的に「ドライバーに任せよう」という結論に至った。その決定を下したのが、現場監督的な存在であるアンドレア・ステラだった。ステラはフェラーリ時代にアロンソのレースエンジニアを務めていたこともあり、アロンソのことをチームでだれよりも理解している人物だ。
「アロンソへは、残りの周回数だけ伝えていました」という長谷川総責任者。
果たして、ステラの予想は的中。アロンソはタイヤをマネージメントしながら、前を走る2台を追い詰め、パスしていった。
こうしてつかんだ5位と9位。これは今シーズン第6戦モナコGP以来のベストリザルトである。ただし、長谷川総責任者は緊張感を保ったままだった。なぜなら、アメリカGPの結果は、ドライバーの頑張りに因るところが大きく、鈴鹿で失速した理由がまだ解明し切れていないからだ。
「精神的には、チームに勢いを取り戻すことができて良かったと思っていますが、技術的な課題は残っています。ただアメリカGPでその問題をひきずらなかったことを考えると、いま言えることは『鈴鹿だけが悪かった』ということです」
(Text : Masahiro Owari)