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今宮純F1アメリカGPの見どころ:“高密度”の金曜。F1クライマックス・シリーズ開幕

2016年10月22日

 クライマックス・シリーズ4戦、アメリカGPから“開幕”。ここまで33点リードのロズベルグには1勝分以上のアドバンテージがある。これはノーポイントのゼロ・レースをひとつやってもまだ“8点差”がある心のゆとりになる。それを理解しているから、「2位でいいなんて考えてもいない、いままでのように勝ちしか考えない」と言いきる。今季、落ち着いた勝負師の面構えに変わりつつあるニコ、本当に父親ケケさんに似てきた。


 密度のある金曜だった。FP1ハミルトン先攻、これは7戦ぶりのこと。7月末ハンガリーGPのあとずっと初めから後れをとっていた。ちなみに今季FP1トップ発進GPは6回で4勝という高い勝率だ。が夏以降このセッションで出遅れが目立ち未勝利行進中、その流れをひとまず断ち切った意味は小さくない。


 しかし午後FP2でロズベルグがやり返してトップ。彼はこのセッションで今季7回最速になっていて3勝につなげている。“FP1先手必勝”パターンを阻止されたものの「金曜PP」を守り抜いた。この意味もまた小さくない。というのもFP1から2の間に気温5度、路面温度19度も上昇、たえず強風が吹くコース上は風向きが激変、路面ラバー・コーティングが一層進むコンディションのなか、しっかり合わせ込んでいったからだ。一方ハミルトンは最近の悪傾向、ブレーキング設定に悩みを訴えて2位をリカルドに許している。


 こうした流れを深読みすると二人は『五分五分』か。というのも、このコースの肝である9コーナーが連続するセクター3において、FP1ハミルトン32秒741をFP2最速ロズベルグは32秒792で破れなかった。ラップタイムだけでなく、セクタータイムそれぞれの“100分の秒差”攻防に密度の深みを感じる。


 この第18戦からロズベルグはとっておきの5基目PU、ICE/TC/MGU−H/MGU−Kを入れる。ほかにもメルセデス勢マッサとボッタス、ヒュルケンベルグとペレス、ウェーレインもだ。ルノー勢リカルド、フェルスタッペンも同様のローテーション、残り4戦CSシリーズいよいよフレッシュパワー投入で佳境に進む。予選PPタイムアップは必至だろう。


 見どころいっぱいの“プチ選手権攻防”も濃密すぎる。金曜レッドブル対フェラーリは前者やや優勢、タイム推移よりマシン挙動に表れた。フェラーリは風の影響にナーバスで限界域がピーキー、二人とも跳ねる馬を調教中。紅牛のほうは二人のセットアップ方向を分け、リカルドは好みの低車高から進め、フェルスタッペンはリアをソフト寄りに(フロアのスパークの飛び方に注意)。


 こうして大量データを収集し、2台をすり合わせていくアプローチを巧く機能させているのが後半のレッドブル。それが現在50点リードにつながっている。だから劣勢フェラーリ側はどうしても“一か八か的”なタイヤチョイス、レース戦略オペレーションに動かざるをえない。母国メディアからそれを批判攻撃されるのに耐えるアリバベーネ代表、ベッテル、ライコネン……同情したくなる。


 フォースインディア対ウイリアムズ、両者の勝敗因ははっきりしている。予選ポジションで後塵を浴び続ける古豪は集団の中に埋まり、金曜単独ロングラン・データはまずまずでもタイヤを痛め、想定ペースに乗せられない。フォースインディア勢は上位チームに後れをとっても、中間勢力を後方に従えるポジションをキープ、前に空間スペースができるから想定ロングラン・ペ―スを維持できる。


 それを二人とも理解し無駄な争いは避け、自分たちの仕事に励む。どちらもフレッシュPUでの予選一撃が勝負の分かれ目、なお14年ドライ予選ではマッサ4位、ボッタス5位からダブル上位入賞、ライバルを退けた。


 鈴鹿で「大敗のマクラーレン」は金曜を見る限り、カーバランスは健康状態に回復。とくにセクター3の安定性からそう判断できた。一方「奇跡のハース」はホームGP初日をエアロパーツ不具合(振動のせいか)に見舞われ、それに貴重な時間を奪われ初コースを習熟できず……。“残業規定”を使ってもなんとか修復し、急増しているアメリカンF1サポーターに意地を見せねば。彼らにとってここが18戦目の『デビューレース』なのだから。



(Text:Jun Imamiya)


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