「センター1と2で、まだリードされていたので、正直、今回はQ3進出を諦めていた」と語った長谷川祐介総責任者。リードされていた相手は、トップ10内にいたウイリアムズ勢とフォース・インディア勢の4台。Q2の1回目のアタックを終えた段階でのQ3進出をかけた戦いは以下のような状況だった。
7位 フェリペ・マッサ 1分34秒422
8位 セルジオ・ペレス 1分34秒556
9位 バルテリ・ボッタス 1分34秒577
10位 ニコ・ヒュルケンベルグ 1分34秒786
11位 ジェンソン・バトン 1分34秒842
このような状況の中で、迎えたQ2最後のアタック。しかし、バトンはセクター2を通過した時点で、Q2を突破するには十分な速さはなかった。
ところが、セクター3でバトンは驚異の走りを披露する。区間タイム38.307秒はトップ3チームの6台に次ぐ、セクター3での7番手のタイムだった。1分34秒431を叩き出したバトンは、大逆転でマッサに次ぐ8位でQ3進出を決めた。
なぜ、バトンはセクター3でウイリアムズ、フォース・インディアをしのぐ区間タイムをマークすることができたのだろうか。それは最後のアタックに出て行くときのアウトラップに秘密があった。7位のマッサから11位のバトンまでの5台の中で、Q2の最後のアタックに最初に出て行ったのは、バトンだった。
しかし、バトンはセクター1を通過したところで、背後から迫ってきたボッタスに進路を譲った。さらにアタックラップでボッタスに引っかからないよう、ボッタスよりゆっくりとしたアウトラップを刻んでいた。長谷川総責任者は「この工夫によって、ソフトの温度が上がりすぎず、セクター3でも十分なパフォーマンスを披露できたのではないか」と分析する。
セパン・インターナショナル・サーキットは高温であるため、いわゆるタイヤの「熱ダレ」が激しいサーキットである。予選は午後5時からスタートしたため、路面温度はフリー走行時の50℃台から10℃以上も下がったものの、それでも39℃あった。
もうひとつ、バトンがタイヤのパフォーマンスを温存した理由は、サーキットのレイアウトにある。セパンは全部で15のコーナーがあるが、そのうちセクター1は3つしかなく、セクター2と3がそれぞれ6つずつある。