ところで、ハミルトンとベッテルの、インターミディエイトタイヤへの交換タイミングは、まさに絶妙でした。前の周では早すぎたし、次の周では遅かった。その上、彼らがピットインした43周目、ライバルたちも含めてセクター2まではペースは落ちておらず、むしろ前の周より速いくらいです。しかしおそらく、彼らがセクター3走行中に雨の量が増したのでしょう。ベッテルは「チャペルの立ち上がりで雨が強くなっているのに気付いた」と語っています。チャペルとは、ちょうどセクター2が終わり、セクター3に入る箇所。データでもそれが確認でき、ロズベルグは前の周より3秒、マッサは5秒、ボッタスは6秒もセクター3の通過タイムが落ちていました。
ハミルトンは「雨がもっと降ると分かった」と話し、ロズベルグは「ルイスは判断を誤ったと思い、喜んだ」と言っています。そのくらい、微妙な判断が求められる状況だったのでしょう。しかし瞬時に判断し、ピットインする……。ハミルトンとベッテルが、“さすが複数回のチャンピオン経験者”という判断力を見せつけた結果だと言えると思います。
前回のオーストリアGPで、抜群の集中力を見せて勝利を手にしたロズベルグ。今回のハミルトンも、それに勝るとも劣らない高い集中力で、前を行くマシンを捉え、コースのコンディションを見極め、勝利に繋げました。初日、ハミルトンのマシンはセッティングを大きく外してしまったため、「途方に暮れた」という発言もありました。それでも気持ちを切らさず、ポールポジション→勝利に繋げた精神力は素晴らしいものでした。一方ロズベルグは、スタートで4番手に落ちたものの2番手までリカバリー。失うポイントを最小限にとどめたのは、チャンピオン争いに向けて大きかったと言えるでしょう。
ところで、心配なのはフェラーリです。フェラーリは予選でウイリアムズに先行されてしまったばかりか、決勝でもまったくついていくことができませんでした。さらに、上位に引き離されてしまっただけでなく、レッドブルやフォース・インディアに詰め寄られてしまっている印象があります。今回の表彰台は、終盤の雨に救われただけのもの。ドライでのペースを取り戻さなければ、ウイリアムズにランキングで逆転されてしまう可能性もあります。
メルセデスAMGの優位は揺るぎませんが、その後方の勢力図が大きく変わった感もあるイギリスGP。次のレースは2週間後、前半戦の締めくくりとなる、ハンガリーGPです。超低速のハンガロリンクは、今回のシルバーストン・サーキットとは、コース特性が大きく異なります。さて、勢力図はどうなるのでしょうか?