リカルドには疑問も残ったはずだが、新たなチームメイトの勝利は素直に祝福
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同じように3ストップ作戦で失敗しても、ベッテルの場合は「すべての可能性にトライしたかった」と、ドライバーも納得したうえでの作戦であったことが、レッドブルとは対照的だ。「なんとしても前に出たかったし、あの時点でトップを走っていたダニエルがターゲットだった」「最終的には2ストップのほうが、ずっと優れた作戦であったことにびっくりした」と、自分の言葉で説明した。
ソフトを履けばフェラーリのペースはレッドブルを上回った。しかしミディアムを履くと1周のペースは、ほぼ同じ。しかもセクター3ではレッドブルのほうが速く「キミがマックスを攻略できなかったのも同じ理由だと思う」とベッテルは説明した。リカルドにとって不幸だったのは、ミディアムを履いたベッテルの最終スティントはペースが上がらず、そのベッテルに抑えられた結果、2ストップ作戦のフェルスタッペンに自由なペースコントロールを許してしまったことだった。
「ダニエルとは1回、ものすごく接近した。もし僕が対応しなければ僕らはクラッシュしただろう」と、ベッテルが「ピンポン発言」の件を説明する。
「あの時点では興奮していたし、文句も言ったよ。でも、彼とはこれまでに何度も戦ってきたし、いつも楽しんできた。最終的に、これがレースだと思うし、彼が一度きりのチャンスに賭けたこともわかってる──僕は手前のコーナーの出口で失敗していたから」
ベッテルにとっては、久しぶりに無傷で走れたレース。予選で苦労したあと、6位スタートから、すべてにトライして表彰台ゴールを果たしたのだから悪くない。メルセデスがゼロポイントに終わったことも……悪くない。
「ターン4のあとは、僕ら全員に『勝ちに行こう』という高い希望が生まれた。僕に関しては、あとから考えれば最悪の作戦を選んでしまったけど、そういう話はもう関係ないよね。優勝したのはマックスだ。今日は彼を祝福したい」
最近は不平不満が目立ったベッテルの心にも、爽やかな風が吹いた。初優勝は、やっぱり特別。迎える先輩たちの心もリフレッシュする。
(今宮雅子/Text:Masako Imamiya)