「ルノー対ホンダ」ワークス対決は伸びしろが鍵に
ドイツ・メルセデスとイタリア・フェラーリが「1部リーグ」で争い、現時点でルノーとホンダは「2部リーグ」に位置する。昨年12月にロータスをワークスチームとしたルノーは「3年計画でトップを目指す」と、現実的な目標を掲げる。2年目のホンダはF1現場のトップが変わり「今年はQ3進出を目指したい」と、これまでよりも控えめに発言。
だが公式コメントの裏には、もう少し高い目標があるはずだ。ルノーは開発の焦点をエンジン本体に向けてイルモア・エンジニアリングと連携、さらにターボ・コンプレッサーに着手する。NA時代からルノーはドライバビリティ重視、今年は著しい改善があったことをユーザーチームであるレッドブルが確認している。レッドブルの「コーナリングマシン」RB12の強みを活かせるコースでは、TAGホイヤーの名を冠したルノー製パワーユニットが躍進する可能性はある。ワークスチームはチューニング開発に専念、中盤までに人材スタッフ体制を再整備、2017年の新規定に向けてリソースを集中する動きになる。
ホンダは第3期F1経験者の長谷川氏を筆頭に、無限ホンダ時代からモータースポーツ部門にいた中村氏で固め、新体制は大きく変わった。具体的な変化は最終テストに現れた。昨年はドライバーあたり年間4基までのパワーユニットを12基まで投入したホンダ。今季は信頼性を最優先テーマにして取り組み、昨年の欠点を見直すところからスタートした。ダイナモ室のパワー数値より、まずはコース上の信頼性。それが確保されなければ、ドライバーからの信頼を得られない。ふたりとも体験を通じて肌で知っているからこそ、まず信頼性の追求を徹底した。フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトン、マクラーレン側に「2年目の改革」をアピールできたはずだ。
今季のパワーユニットRA616Hは前体制下で完成したもの。新体制によって、いかにモディファイしていくか。2016年はパワーユニット開発規制が緩和され、開発に使えるトークン数は32と増やされ、凍結箇所も減る。いつ、どこに、どんなタマを入れるか、現場で戦ってきた新リーダーによる新たな挑戦は始まったばかり。中盤まで一歩ずつ、下がることなく前に進むと信じている。
(今宮 純/Text : Jun Imamiya)