ベッテルとは対照的に、レッドブルのふたりにとっては波乱のレースになった。スタート直後に大きなフラットスポットを作ってしまったクビアトは、厳しいバイブレーションに緊急ピットインも考えた。なんとかステイアウトしたものの、第2スティントで履いたミディアムでも完璧なバランスは叶わなかった。リズムをつかめたのは、第3スティントでソフトを履いてからのことだ。
「この週末ずっとダニエルのほうが速かったし、僕が前にいてもメルセデスのストレートスピードを考えると仕掛けることは難しかったと思う。だからダニエルが前に出て勝負したのは正解だった。最終的には、まわりで接触が起こって僕はここにいるけれど……スタート直後には、レースはもうおしまいだと思った。前半はフィーリングも良くなかった。でも、僕は今日、何が起こっても決してあきらめてはならないということを学んだ。“ネバー・ギブアップ”って言う人はいるけれど、それが何を意味するかはわかってないんじゃないかと思ってたし、僕自身も本当はどういう意味なのか今日まで知らなかった。すごく教訓になる1日だったよ。チームは厳しいシーズンを戦いながら、全員がハードワークを続けている。この結果は彼らにふさわしいものだし、僕は“いつかトップに返り咲く”という自分たちの思いを理解することができた」
振り返れば、昨年F1にデビューして以来、パワーユニットのトラブルやペナルティに苦労するばかりだった。頑張っても、しばしば結果はゼロになった。レッドブルに“昇格”してからも信頼性不足の悩みは消えず、走れていないのに「実はそんなに速くないんじゃ」と陰口を叩かれた。
初めての表彰台はラッキーに映っても、クビアトがアンラッキーで失ってきた結果は、それよりずっとずっと大きい。それでも迷うことなく、彼は言った。
「この結果は、誰よりもまずジュールと彼の家族のものだ」