ところで、ボッタスより1周早くピットインしたロズベルグは、なぜボッタスの前に出ることができなかったのでしょうか? これは、アウトラップのペースをマッサに抑えられたからだと推測できます。前述したとおり、ロズベルグのアウトラップは1分58秒台。新品タイヤのメリットを活かせていなかったと言えます。そのために、ボッタスの前に立つことができなかったわけです。
ピットストップ終了後、ハミルトン、マッサ、ボッタス、ロズベルグの順でレースは進行していき、そして35周目頃から雨が降り出すこととなります。これが、今回の勝負を決した、最大のポイントとなりました。
35周目に雨は降り出したものの、それほど強くならず、各車はしばらくドライタイヤでの走行を続けます。しかし、ウイリアムズのペースはガクリと落ち、ロズベルグはマッサとボッタスを軽々とオーバーテイクし、難なく2番手へと浮上します。ウイリアムズのマシンは昨年から、ウエットコンディションを極端に嫌うという傾向があり、今年もその特性は引き継いでしまっているようです。FW37はダウンフォースが少ないと言われていて、車体をマシンに押し付ける力が小さい。それが、ウエットコンディションの際には顕著に現れるのでしょう。
そして43周目、先頭を行くハミルトンがいち早くピットインしてインターミディエイトタイヤに交換することを選択。ロズベルグ、マッサ、ボッタスはステイアウトします。彼らも翌周にインターミディエイトタイヤを装着しますが、コースに復帰した際の順位はハミルトン、ロズベルグ、セバスチャン・ベッテル、マッサ、ボッタスの順に変わってしまっていました。38周目にボッタスの18秒も後方にいたベッテルが、いきなり3番手に上がっていたのです。
ベッテルはハミルトンと同じ43周目にピットインしています。このピットインした43周目から45周目までのベッテルのラップタイムの合計は、5分47秒5でした。これはハミルトンの5分43秒5やロズベルグの5分48秒9とほぼ同じと言っていいでしょう。しかし、マッサは6分2秒3、ボッタスにいたっては6分14秒5も43〜45周目の3周目にかかっていました。つまりウイリアムズの2台は、ベッテルから15〜27秒も遅かったということ。これで一気に逆転となったのです。ウイリアムズはピットインのタイミングが遅れたのもさることながら、それだけウエットコンディションを苦手としているということが、よく分かる一例です。