とりわけ、リカルドとの攻防は中国GPのハイライトシーン。
「ターン4から上手く加速した僕は、ダニエルがターン6に向かってインのラインを守っていることを確認し、それならアウトから、ブレーキをぎりぎりまで遅らせて攻略しようと決心していた。彼がロックアップしなかったのは幸い。もしそうだったら逃げなくちゃって、ミラーでレッドブルの位置を確認していた。出口では汚れた路面でホイールスピンして僕らはサイド・バイ・サイドになったけど、彼は本当に寄せてきたし、僕も押し返そうとした──。でも、楽しいバトルだったよ。
メルボルンでも見られたとおり、今年のマシンではオーバーテイクが難しい。だからドライバーは強く主張することが必須だし、それが本来のあるべき姿だと思う。フラップを寝かせただけで何もしないで抜けるなんて……」オーバーテイクじゃない。
ベッテル vs リカルドの攻防がF1クラスの技術、闘争心とリスペクトの最高のバランスで実現したものである一方、16番グリッドからスタートして1周で7番手までポジションアップしたフェルスタッペンは、タイヤを通して路面を感じ取る天才的な野性の持ち主。広大なサーキットで、湿ったパッチが残った状態で、見事に進むべき道を見極めていった。しかも、インターミディエイトを保たせるために、ウエットパッチを選ぶことも忘れずに。
「1ラップで9台は、悪くないよね? 僕が気をつけたのは、インターミディエイトからドライの交換を早まらないことだった」
完全なドライコンディションではまだメルセデス、フェラーリに追いつけないレッドブル。フェルスタッペンの勝因は“序盤だけのインターミディエイト”というチャンスを最大限に使い切ったことにある。
「フェラーリだけじゃなくて、他にも速くなるチームがあるはずだから、戦う相手がもっと増えるともっと楽しい」と、勝者ハミルトンは言った。圧倒的なメルセデスで走ってきたからこそ口にできる言葉は、決してリップサービスではない。
レースを楽しめること、それが何よりも大切。表彰台の3人の笑顔を見れば、ファンの期待も明るく膨らむ。バーレーンGPがさらに楽しみになる。
(Text:Masako Imamiya)