ハミルトンは31周目にピットインしてウエットからウルトラソフトに交換。それを見たリカルドも32周目にピットへ入った。

　しかし、その直前にチームがソフトからスーパーソフトへと選択を変えたがために、まだタイヤが用意できておらず、リカルドは13.6秒もの静止時間を過ごす羽目になった。

　前に立ち塞がったハミルトンは、ウルトラソフトを最後まで保たせるためにペースを抑えて走る。しかし、モナコでは抜けない。37周目のヌーベルシケインでインを窺ったが、ブレーキングを遅らせたハミルトンが、わずかにシケインをカットしながら防御。

「XXXX！　ハミルトンがカットしたぞ！」

　リカルドは、すかさず抗議したが、これにはスチュワードの審議の結果、おとがめなしという裁定が下った。

「こっちのほうが速いぞ、すべてをまとめて、やっつけろ！」

XPB Images

　レースエンジニアのサイモン・レニーが発破をかけるが、狭いモナコではラップタイムが4秒速くても抜くことはできない。

　1ストップ作戦といい、ウルトラソフトといい、メルセデスとハミルトンは「抜けないモナコ」を最大限に味方につけたギャンブルを仕掛け、勝利したのだ。

「いまはレースのことは語りたくないよ。2戦連続だよ、2戦連続でやられたんだ。最悪だよ。速さはあったのにね」

XPB Images

　リカルドは目も当てられないほど、がっくりと肩を落とした。

「僕らはメルセデスじゃない。勝つチャンスなんて、そうそうあるもんじゃないんだ」

　初優勝の地カナダで「彼の順番」がやってくることを期待したい。

（米家峰起／Text：Mineoki Yoneya）

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