これに対して、異を唱えたのがメルセデスAMGのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)だ。
「1つのカテゴリーにふたつの異なるスペックのエンジンが共存することはあり得ない」。
フェラーリやメルセデスといったパワーユニットマニュワクチャラーが反対するのは理解できるが、興味深いのはザウバーのモニシャ・カルテンボーン代表もクライアントエンジン案に反対の意思を表明していることだ。
「技術的にいかに平等性を実現できるかに関しては大きな疑問がある。車重や燃料流量、燃料搭載量だけでなく、空力面でも現在のレギュレーションとかなり異なる仕様になりかねないからだ」
というのも、クライアントエンジンのエキゾースト配置は現在のパワーユニットのエキゾーストとは異なってかなり自由になり、それが空力的なアドバンテージにつながるのではないかと疑念を抱く者が少なくないからだ。
しかし、慢性的な財政不足状態が続くザウバーにとって、このクライアントエンジンが導入されれば、財政的に安定するはずだが、なぜ反対しているのだろうか。それはザウバーがフェラーリとパワーユニット供給に関して、長期的な契約があるためだ。フォース・インディアのボブ・ファーンリー 副代表も、もしクライアントエンジンが導入されても、それを使用することはないという。
「われわれにはメルセデスと2019年まで契約があるから、クライアントエンジンを使うことはないだろう」
おそらく、この状況はメルセデスとフェラーリからパワーユニットを供給されているほかのチームも同じだろう。そうなると、クライアントエンジンに賛同するのはブラジルGP終了時点でまだ2016年のパワーユニットが決定していないレッドブルとトロロッソぐらいで、依然として反対するチームが多数を占める中、次回開催が予定されている11月24日のストラテジーグループ会議を迎えることとなる。